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 それからまた数日が経って、三と書かれた動画がアップされた。

 名前はいまだにランダム英数字だし、投稿者の紹介文はないし、投稿動画の紹介文もない。ここまでくればわざとなんだな、と分かってくる。もしかしたらそこそこ有名なクリエイターがやっているのかもしれない、と、コメント欄は謎の盛り上がり方をした。

 前回は男が消えたところで終わったから、今回はその続きではないか。そう期待をして、動画を再生する。

 黒い画面にノイズが走る。どうやらまた森の中のようだ。今回は男の真後ろから撮影はしておらず、少しカメラが引いていて、森の中の開けた空間だとわかる。画像は暗く加工されているから、昼か夜かは分からない。

 男は手に何かを持っている。それを、持ち上げて、振り下ろした。持ち上げて、振り下ろす。持ち上げて、振り下ろす。

 BGMはないから、男が何かを殴打している音がノイズに交じって聞き取れる。それは硬質な何かだ。人のような柔らかい生き物を殴打しているのではないようだ。もっと、硬い。石のようではない。金属のようでもない。

 ならば男が殴打しているのは、木か。

 しかし男の向こうには男よりも大きな木は生えていない。いや、男の立っている空間の向こう側には、男の背丈よりも高い木は生えている。しかし、男が殴打しているあたりには、無い、はずだ。

 男は数回殴打した後、上から下へと手を振り降ろすのをやめて、横に殴ように振りぬいた。右から、左へ。右手に持った何かを、右に大きく開いて振る。ちょうど男の体に隠れるような位置に何かあるらしく、右手はその辺りで止まる。

 片手で殴打するのを数回繰り返し、その後は両手で持って殴打した。一回、二回、三回。

 ひときわ大きなノイズが走り、動画はそこでぶつりと切れた。男が何を殴打していたのか、それが分かる前に動画は終了した。

 コメント欄はそこそこ盛り上がった。何を殴打しているのか、考察大会が開かれたのだ。

 少なくともこの時点では、視聴者はこれが、フィクションであると認識していた。

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