いつまでも、あなたは私の心の中にいる

月橋りら

第1話

「好きなんです、付き合ってください」


そう言われた私の目の前を、桜の花びらが通り過ぎて散っていく。

高校2年生の初日、私は、同じ学校の如月くんから告白された。


何の接点もないのに、急にこう言われた時は驚いた。

だけど、まあ付き合うくらいならーー。


「はい。お願いします」


そう答えた時の、彼の笑みは今でも忘れない。



如月碧。

同い年の彼とは、大学生となった今でも関係が続いている。


「…そういえば、今度どこ行く?」

「うーん。あ、そうだ、久しぶりに水族館行かない?」

「水族館…って、最初のデートで行った場所じゃん……」

「ふふ」


如月碧ことあおくんは、少し照れ屋だ。

だけど今はそれがすごく可愛く見えるほど、私も彼に惚れている。


思えば、告白された時からこの時まで、もしかするとあおくんより私の方が惚れているのかもしれない。


「ねえあおくん」

「ん?」

「好きだよ」


そう、何百回も、何千回も、何万回も、伝えてきた、「好きだよ」ーー。

何度も何度も彼に言ってきた。


そしてこれを良かったと思える日が来てしまうとは、この時の私には想像もつかない。



「ねえ、あおくん。私、〇〇会社の就職試験を受けてみようと思うの」

「うん、良いんじゃない?由良ならきっとできるよ」

「ありがとう、頑張る!」


あおくんは優秀だ。

そして、それに釣り合うように、私も頑張りたかった。



「あおくん、聞いて!私、受かったよ!」

「え、すごいじゃん!おめでとう、流石由良だね」


この何気ない日常が、私にとって最高の幸せだった。

あおくんもいて、きっと私自身も喜んで。


春は一緒にお花見をして、夏は一緒に海に行ったり花火を見たりして。

秋は紅葉の綺麗な場所に旅行に行って、冬は「寒いね」ってくっつきあって暖まったり、雪で遊んだり。


また次の年は、仕事で忙しい反面、あおくんとの時間も大事にした。


全てが幸せだったーー。



「本当に由良はあおくんが好きだよねぇ」

「か、香奈ちゃんっ!あまり大声で言わないで」


香奈ちゃんは高校時代からの友人で、同じ会社に就職することができた。

というのも、私には仲の良い恋人がいるとバラしたのも、彼女なんだけど。


「なによ、もうみんなに知れ渡ってることよ?」

「それがいけないの……っ」


香奈ちゃんによると、「入社当初から由良が可愛すぎて噂になっちゃって、男たちが目をハートにしてたから、由良を守ったのよ」と言うけど。

かえって良くない結果に………。


先輩方や同僚は私のスマホを度々覗き見しては、


「彼氏さんかっこいいわねぇ」


と言い、ついでに「仲良しね」と煽ってくることもある。


「まあいいじゃない。幸せでしょ」


香奈ちゃんが言う。

それは、私もしみじみと感じていることだった。


もう彼のいない生活なんて考えられないくらいに、私は彼に沼りすぎている。

惚れてしまった弱みというようにーー。




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