いつまでも、あなたは私の心の中にいる
月橋りら
第1話
「好きなんです、付き合ってください」
そう言われた私の目の前を、桜の花びらが通り過ぎて散っていく。
高校2年生の初日、私は、同じ学校の如月くんから告白された。
何の接点もないのに、急にこう言われた時は驚いた。
だけど、まあ付き合うくらいならーー。
「はい。お願いします」
そう答えた時の、彼の笑みは今でも忘れない。
◇
如月碧。
同い年の彼とは、大学生となった今でも関係が続いている。
「…そういえば、今度どこ行く?」
「うーん。あ、そうだ、久しぶりに水族館行かない?」
「水族館…って、最初のデートで行った場所じゃん……」
「ふふ」
如月碧ことあおくんは、少し照れ屋だ。
だけど今はそれがすごく可愛く見えるほど、私も彼に惚れている。
思えば、告白された時からこの時まで、もしかするとあおくんより私の方が惚れているのかもしれない。
「ねえあおくん」
「ん?」
「好きだよ」
そう、何百回も、何千回も、何万回も、伝えてきた、「好きだよ」ーー。
何度も何度も彼に言ってきた。
そしてこれを良かったと思える日が来てしまうとは、この時の私には想像もつかない。
◇
「ねえ、あおくん。私、〇〇会社の就職試験を受けてみようと思うの」
「うん、良いんじゃない?由良ならきっとできるよ」
「ありがとう、頑張る!」
あおくんは優秀だ。
そして、それに釣り合うように、私も頑張りたかった。
◇
「あおくん、聞いて!私、受かったよ!」
「え、すごいじゃん!おめでとう、流石由良だね」
この何気ない日常が、私にとって最高の幸せだった。
あおくんもいて、きっと私自身も喜んで。
春は一緒にお花見をして、夏は一緒に海に行ったり花火を見たりして。
秋は紅葉の綺麗な場所に旅行に行って、冬は「寒いね」ってくっつきあって暖まったり、雪で遊んだり。
また次の年は、仕事で忙しい反面、あおくんとの時間も大事にした。
全てが幸せだったーー。
◇
「本当に由良はあおくんが好きだよねぇ」
「か、香奈ちゃんっ!あまり大声で言わないで」
香奈ちゃんは高校時代からの友人で、同じ会社に就職することができた。
というのも、私には仲の良い恋人がいるとバラしたのも、彼女なんだけど。
「なによ、もうみんなに知れ渡ってることよ?」
「それがいけないの……っ」
香奈ちゃんによると、「入社当初から由良が可愛すぎて噂になっちゃって、男たちが目をハートにしてたから、由良を守ったのよ」と言うけど。
かえって良くない結果に………。
先輩方や同僚は私のスマホを度々覗き見しては、
「彼氏さんかっこいいわねぇ」
と言い、ついでに「仲良しね」と煽ってくることもある。
「まあいいじゃない。幸せでしょ」
香奈ちゃんが言う。
それは、私もしみじみと感じていることだった。
もう彼のいない生活なんて考えられないくらいに、私は彼に沼りすぎている。
惚れてしまった弱みというようにーー。
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