DIE2話 弓矢の女その2
般若の女は工事中のビルから、宝藤(ほうとう)ジュニアを狙撃するようだ。向かいのビルの屋上から、阿晴(あばれ)社長は双眼鏡で彼女の様子を見ていた。
「もう一度、彼女の名前と経歴を言ってくれ」
「はい。彼女は矢邊亞弓(やべ・あゆみ)、4年前から暗殺を初めて計33人葬ってきたそうです」
「その数字が多いか少ないか分からんが、捕まったら死刑確定だな……」
「何でも、殺しの証拠を残さないと」
「ふーむ」
現場の亞弓は弓の弦を布で大事そうに吹いていた。だが、肝心の矢が1本も見当たらない。
「矢なしで、どうやって殺すつもりだ? まさか、あの弦を投げつけて殺すんじゃないだろうな」
「いや、あの弦が当たったとしても、せいぜいだんこぶが出来るぐらいですよ」
「そうだよな。有りえないわな」
社長と秘書は彼女の殺害の手段が何か、懸命に考えていた。2人が頭を働かせていると、耳をつんざく車のエンジン音とけたたましいヒップホップ音楽が聞こえてきた。
「来たぞ!」
オープンカーを爆走させる宝藤ジュニアがやってきた。彼はこれから殺されると知らずに、荒い運転をしている。
「彼女は何し、あっ!?」
亞弓が窓ごしから弓を引いて、狙いを定めている。彼女の手は半透明な矢をつかんでいた。
「何だ、あの矢は!?」
「わ、分かりません!」
彼女が半透明な矢を放つと、真っすぐに宝藤ジュニアの首筋を貫く。彼が意識を失うと、その車はトラックに激突して大破、大炎上した。
「高速で走る車の運転手を射抜くとは……。あの女、思っている以上に凄腕だな」
「これで、社長を狙う殺し屋もおしまいですね!」
「ああ。殺し屋を消したら、次は池保も頼んでみようか。フフフ」
社長は落とし穴の近くで待つ少年のように、ほくそ笑んだ。
(続く)
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