罪が二人を別つまで～兄妹の禁じられた関係・瑠央と姫奈は如何にして父親殺害を企んだのか～

プロローグ

　男の怒鳴り声が部屋に響き渡っている。部屋の中には、裸の若い男女――それも中学、高校生くらい――がおり、もう一人、服を着た中年ほどの体格のいい男性がいた。

　怒鳴っているのはその中年男性だ。裸の若い男は床に倒れ、頬を押さえている。どうやら、中年男性から殴られたらしいことがうかがい知れた。

　もう一人、少女は裸のまま、タオルケットで体を隠した格好で、少し離れた位置に佇んでいた。表情は悲痛に覆われており、現在の状況が危機的である様を証明していた。

　中年男性はひどく憤慨しているようだ。床に倒れている少年に罵声を浴びせながら、少年をさらに殴打する。何度か続いたところで、少女が止めに入るが、無駄であった。縋り付いた腕を振りほどかれ、少女は床に倒れる。その少女にも、中年男性は罵声を浴びせた。

　部屋にはベッドが置かれてあり、シーツや枕などが乱れている。つい今しがた、ベッドの上で行われていた『行為』が何であるのかはっきりと理解できる状況であった。

　中年男性は、裸の二人に、何かしら大きく宣言する。死刑を宣告するような、きっぱりとした口調。

　二人の若い男女は、絶望に包まれた表情を浮かべた。部屋の異常な雰囲気と相まって、この先に待ち受ける大きな悲劇を予感させるのに、充分な要素を纏っていた。