天下統一

@morimotomorimoto

第1話 始まりの日

秋の訪れを告げる清々しい空の下、穏やかな陽射しと爽やかな風が交わり、黄金色の稲穂が光り輝いていた。

湊斗は島根での出張を終え、期待に胸を膨らませながら出雲大社へと向かっていた。


出雲大社には、日本国の神である大国主大神が鎮座している。この神に素敵な女性との出会いを祈願しようと密かに心に決めていた。

26歳の湊斗はまだ恋愛経験がなく、これまで一度も彼女ができたことがない。合コンでは盛り上げ役として重宝されるものの、肝心の恋愛になると「友達としてなら…」という言葉ばかりが返ってくる。それゆえ、この日、縁結びの神に直接願いを伝えることへの期待感が彼の心を満たしていた。


入口にある大きな鳥居をくぐると、夕日が大地を紅く染め上げる美しい光景が広がった。静まりかえった参道には湊斗一人しかおらず、砂利を踏みしめる音だけが静寂を破っていく。周囲は高い大木に囲まれ、神秘的な雰囲気が漂っていた。


歩を進めるうち、不安が湧き上がる。周囲には人影が見えず、静寂が彼に奇妙な不安感を与えていた。


「これが太古から続く聖地なのか…」

湊斗は小声で呟いた。その言葉には感動と畏敬の念が込められていた。古代の神秘が渦巻き、その圧倒的な雰囲気に心を奪われていた。


しかし、その瞬間、空模様が一変した。


陰が差し込み、空気が重くなる。胸が高鳴り、背筋に冷たいものが走った。直感が何かを警告していた。


突如、空が裂けるような雷鳴が轟く。まるでこの世の終わりを告げるかのような音と衝撃が目の前に降り注いだ。雷の閃光が四方に飛び散り、電流の音が耳をつんざく。


「危な…っ!」

言葉を発する間もなく、二発目の雷が彼の頭上に落ちた。


湊斗の髪は逆立ち、その中心に雷が吸い込まれていく。そして耳をつんざくキーーンという音が響き、他のすべての音がかき消された。


意識が遠のく中、彼は耳元で低い声を聞いた。


「選ばれし者よ、運命は今ここから始まる」


目を開けると、そこは穏やかな光が湖面を照らす美しい場所だった。湖の静寂が彼を包み、その周囲は神聖な森で囲まれていた。息を呑むほどの景色に呆然とする湊斗の視線の先には、湖の中央に立つ一人の女性がいた。


長い黒髪を美しい髪飾りで整えた彼女は、自然と調和する神秘そのものだった。その目が静かに彼を見つめる。


「選ばれし者たちよ、お前たちだけが日本を救える」

澄んだ声が湊斗の頭に直接響いた。その声から、彼女が日本の国造りの神、大国主大神であることを直感する。


突然、彼の頭の中に恐ろしい映像が流れ込む。

ビルが立ち並ぶ東京、美しい日本の街並み。そこに無数のミサイルが降り注ぎ、すべてが炎に包まれる。九州、北海道、本土までもが次々と海に沈む。


心の奥底から言葉にならない悲しみが込み上げた。


「日本はメルドニア国によって滅ぼされた」

大国主の声が厳かに告げる。「お前たちをあの時間線、選択の時に送る。どうか日本を統一し、メルドニアに打ち勝つ強い国を築いて欲しい」

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