第2話

彼女の産まれは、このマルクレン国。18年前にこの世に生を受けたが、母親の身体が弱かったことと、家計が苦しくなったことが重なり孤児院へ預けられた。6歳で今のビアーノに引き取られたのだが、そこで初めて世間に出たことで違和感を感じた。『なんか違う』ということに。


 もっと近代的な社会で、もっと自分は年齢が上で、気ままな生活をしていた、ような気がした。

 ここでは馬車がメインの移動手段だけど、馬を使わない鉄の塊や、二輪の物体に股がって走るものも知っていて、それが『自動車』『バイク』と名前まであることも知っている。


 年齢が上がるにつれ、だんだんと夢だったのだろうかと思うようになってきたが、どうしても忘れられない、何度も思い出す映像がある。


 その車やバイクが行き交う道路に、突然現れた銀髪の少年。彼を助けようとして無鉄砲に飛び出した自分。


 いつもそこでハッと目が覚める。忘れてはいけない気がする。その違和感を抱えながら、気付けばもう18歳となっていた。

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