生きる閃光
その時だった。突如、地響きが立ち、村長の家は轟音に包まれた。無論、その正体は明らかだ。
「霊獣か……行くぞ、ヒロト」
「お前が仕切るな、新入り」
「はいよ」
緊急事態に瀕してもなお、リリカたちの不仲は健在だ。二人は家を飛び出し、巨大なスズメバチのような霊獣を目の当たりにした。
「はい先手必勝ぅ」
そう呟いたリリカは手元にロケットランチャーを生み出し、迷わず発砲した。霊獣はその砲撃をかわし、毒針からエネルギー弾を連射する。リリカは咄嗟の判断で太刀を生み出し、その刀身で攻撃を受け止めた。指定した標的に着弾しなかったロケット弾は、そのまま地面をすり抜けて地中へと消えていく。続いて、ヒロトが霊獣に殴りかかる。
「そこだ!」
彼の拳が、勢いよく爆発する。しかしその眼前に、霊獣の姿はない。彼は瞬時に振り向き、そして標的の姿を目の当たりにした。すぐ目の前には、眩く光るエネルギーの球体がいくつも迫っている。
「まずい……!」
ヒロトは再び爆発を起こし、今度は敵の弾丸を打ち消した。霊獣は依然として、辺りを俊敏に飛び回っている。いつもは強気なリリカも、この時ばかりは焦りを感じていた。
「なんてスピードだ、コイツは骨が要りそうだな」
それでも彼女は諦めない。その手に機関銃を生成し、彼女は標的を目掛けて乱射する。しかし相変わらず俊敏な霊獣は、全ての銃弾を華麗にかわしていくのだ。ヒロトも爆炎をまとった体術を駆使するが、やはり相手は軽々と回避していく。この二人の力を束ねてもなお、この強敵にはまるで歯が立たないようだ。
その上、霊獣も防戦一方ではない。
猛攻により体力を消耗している二人の身に、光る無数の弾丸が襲い掛かる。その攻撃に対応しきれず、リリカたちは全身に被弾してしまう。肩で息をしながら重い傷を負っている彼女たちは、まさしく絶体絶命の危機にある。
「ここは一旦、撤退すべきか?」
「あぁ、愚かな意地を張って死ぬことは決して高潔じゃない」
「同感だ。退くべきところは、退くぞ!」
この二人とて、度を越えた命知らずではない。二人には、退くべき場面がわかっている。この時、リリカたちはゴンゾウと村長に対する弁明を考えていた。
その直後である。
突如、彼女たちの目の前に人影が飛び出し、その周囲に大剣の残像を映し出した。霊獣は必死に逃げ回ろうとするが、乱入してきた人影の無駄のない動きに翻弄されている。霊獣の身には、凄まじい勢いで切り傷が刻まれていく。その光景に、リリカとヒロトは息を呑んだ。
「なんだアイツは……まるで生きる閃光だ」
「只者ではないだろうな。あの動き……相当手慣れている」
「一体、何者なんだ……」
目の前で繰り広げられる戦闘に、二人は思わず釘付けだ。やがてその人影は動きを止め、標的に背を向ける。直後、霊獣は勢いよく爆発し、そして消滅した。
たった今強敵を倒したのは、頭にカチューシャを着けたブロンドの美少女だ。息一つ切らしていない彼女の出で立ちに、リリカたちは度肝を抜かれる。
「アンタ、やるじゃねぇか! 一体、何者だ?」
リリカは訊ねた。彼女に続き、ヒロトも問う。
「この依頼は俺たちが受注したはずだ。お前、フリーの霊媒師か?」
元々勝ち筋が無かったとはいえ、手柄を取られたことを面白く思う彼ではない。二人に見つめられ、少女は少し萎縮する。
「あの、あまり見つめないでください。えっと、その、緊張しますから……」
先程の勇姿とは打って変わって、彼女は弱気だった。その意外性に、リリカは笑みを零す。
「アンタのおかげで助かったよ。それで、アンタは?」
「僕は
「そうか。アンタの戦い、凄かったぜ」
一先ず、霊獣はカムイの手によって倒された。これで一件落着だ。
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