モテ体質の俺がエロゲのモブに転生したら、案の定ヒロイン全員オトしてしまった件
高海クロ
プロローグ
二十二時。会社から家までの通い慣れた通勤路を、二人分の飲み物が入ったコンビニ袋をぶら下げて歩く俺、
クソ、あのボケナス課長め。頭カチ割って脳みそソーダ漬けにしてやろうかマジで。
ま、彼のお気に入りの女子社員──俺の三年先輩で、俺が新入社員だった頃の教育係だった──が最近やけに俺に優しいから、それが気に食わないんだろう。
その先輩は、今俺の家で夕食の準備をして待ってくれている。
「じゃ、ご飯作って待ってるね! 大丈夫、鍵は持ってるから!」と言ってルンルンで帰って行ったけど、はて、いつ合鍵を渡したかな。
さてそんなことを考えてぼうっと歩いていたからなんだろう。歩行者信号は真っ赤に光っていて、俺はそれに気が付かず横断歩道に突っ込んでいた。
ふと横を見た時にはもう目の前に原付が迫っていて、俺は弾き飛ばされるように交差点に倒れ込んだ。
痛え、腰も痛えし、倒れた拍子にぶつけたらしい頭はなお痛い。原付の運転手のおじいちゃんがとんでもなく慌てているのが視界の隅に映った。
直感で理解した。──ああ、これはもうダメかもわからんね。この前買ったエロゲ、まだワンルートもクリアしてないなのにぁ。あな口惜しや。
薄れゆく意識の中で俺は考えた。
普通こういう時って大型のトラックやバスが相場じゃないの? なんで原付──。
*****
「──はっ!?」
次に目を覚ますと、そこは見知らぬ天井──には違いなかったが、どうやら病院というわけではなさそうだった。
頭や腰を触るが、怪我はない。それどころか、痛くもない──ていうか。
「なんか細くないか?」
俺は周りの人間に恵まれており、心優しい知り合いが多かった。件の先輩社員以外にも、俺の家には入れ替わり立ち代わりご飯やら家事をしにきてくれる女性がいて、高校からの友達、今年の新入社員、取引先の受付嬢──。ありがたいことにはありがたいのだが、まあ太る太る。太りにくい体質ですなんて思っていたのは二十前半までの話で、アラサーに片足突っ込んだ
が、今はどうだ。細くてそれなりに筋肉質。まるで高校生の頃のようだ──と、そこまで考えてあることに気がついた。
視線を九十度右に向けて姿見に映る自分をみる。鏡の中の自分はどこからどうみても二十六歳のくたびれた営業マンなどではなく、人畜無害そうな、良く言えば優しそうな、男子高校生そのものだった。
そして、俺はコイツを知っている。
先週買ったばかりで、時間がなくてまだ一人も攻略できていなかったエロゲ、『
つまりこういうことらしい。
俺はあの日原付に
うん、非常にシンプルでいいね。わかりやすい。
生前? 前世? まあどちらでもいいが、二次元コンテンツに深く触れていたことでこの状況もすんなり理解することはできる。受け入れられるかはまあ別問題だが、なってしまったものは仕方ないと割り切るほかないだろう。
それにしても、どうせ転生するなら剣と魔法のファンタジー世界が良かったんだがなあ。俺もギガフレイムとか使ってみたかった。
なんでエロゲなんだろうな。ゲームならゲームで、普通は俺がものすごくやりこんで世界ランカーくらいまで上り詰めたゲームに転生して、前世の知識とテクニックで無双しますってのがお決まりじゃないの?
── この前買ったエロゲ、まだワンルートもクリアしてないなのにぁ。
いや嘘でしょ? え、マジで?
あれが唯一の心残り判定されて、その無念を晴らすために転生させてくれたってこと? じゃあせめて主人公にしてほしいんだけど?
などとゴネていても仕方がない。なにげなく手元のスマホを見ると、六月九日月曜日、夜中の一時すぎの表示。なるほど、俺が死んだ日が六月六日金曜日だったから、時間軸はそこまでズレてはいないらしい。
てことは、今朝は学校に行くわけか。
不思議なもので、転生したと理解した瞬間、この世界で彼が暮らしてきた記憶やらなにやらが俺の中に流れ込んできて、常識外のことをしてしまったり道に迷ったり親の顔がわからなかったりということにはならなさそうだった。
「ま、この世界で生きていくしかないか」
作中で主要キャラをはじめ俺たちが通う
などと、この時俺は本気でそう考えていた。
それもそうだ。この先起こる出来事など、俺には知る由もなかったのだから。
──────
本日17時に第一話投稿します!
プロローグで興味持っていただけましたら、是非よろしくお願いします。
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