■083,『ユナ+魔法の才能に目覚めてみた』

「お母さん、見て!」

 ユナの手の中で、小さな光が踊っていた。


「まあ……」

 エルメスは息を飲む。

 まだ5歳のユナが、魔法を使っていたのだ。


「パパ! リュウお兄ちゃん! 見てー!」

 家族が集まってくる。

「すごいじゃないか」

 アラタは感動的な表情を浮かべる。


「あちしにも見せて!」

 スノーが尾を振って近寄る。

「スノーお姉ちゃん、ほら」

 光の粒が、スノーの周りを舞い始めた。


 それは人間の魔法でもなく、

 エルフの魔法でもない。

 ユナだけの、特別な魔法だった。


「お絵描きの魔法みたい」

 リュウが言う。

 確かに、ユナの魔法は

 まるで空気に絵を描くよう。


 日が経つにつれ、

 ユナの魔法は成長していった。

 花を咲かせたり、

 小さな生き物を癒したり。


「ユナ様の魔法は特別です」

 街の魔法使いが言う。

「人間とエルフ、両方の血を引くからこそ、

 このような魔法が使えるのでしょう」


「私の魔法、変じゃない?」

 ある日、ユナが不安そうに尋ねた。

「とんでもないわ」

 エルメスが優しく抱きしめる。


「ユナの魔法は、ユナそのものなんだ」

 アラタも加わる。

「人間とエルフ、両方の良いところを

 持っているからこそ、できる魔法なんだよ」


「お姉ちゃんの魔法、きれい!」

 孤児院を訪れた時、

 子供たちがユナの魔法に目を輝かせた。

「本当に美しい」

 シスターも感動的な表情。


「リュウお兄ちゃんの授業、

 私も手伝っていい?」

「もちろん!」

 リュウは妹の申し出を喜んで受け入れた。


 授業中、ユナの魔法で

 説明が立体的に浮かび上がる。

 子供たちは、より理解しやすそうだった。


「ユナ、素晴らしい才能ね」

 エルメスは娘を誇らしげに見つめる。

「お母さんみたいになりたいな」

「私みたいに?」

「うん。エルフと人間を、

 つないであげられる人に」


 エルメスは涙ぐむ。

 そっとユナを抱きしめた。

「ユナはもう、立派につないでくれてるわ」


「あちしも、ユナの魔法大好き!」

 スノーが寄り添う。

「だって、みんなを笑顔にするもの」


 夜、家族で月を見上げる。

 ユナの魔法で、星々が綺麗な模様を描く。

「パパ、私の魔法、

 もっといろんな人の役に立つかな?」


「ああ、きっとそうなるよ」

 アラタは確信を持って答えた。

「ユナの魔法は、

 人とエルフの架け橋になる。

 そして、もっとたくさんの人を

 幸せにしていくはずだ」


 ユナは笑顔で頷く。

 これから先も、この家族と一緒に。

 自分にしかできない魔法で、

 世界をもっと優しくしていこう。


 そう誓った、満月の夜だった。


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