“縁結び女” ~ 迎春 ~

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

「大晦日に、お悩みですか?」

「あ、はい。よく悩んでるってわかりましたね」

「だって、大晦日の夜に公園のベンチに座って頭を抱えているから」

「ああ、そうですね。わかりやすいですよね」

「片想いでお悩みですか?」

「はい、そうなんです。よくわかりますね」

「仕事柄、こういうことには敏感なんです」

「仕事?」

「私は“縁を結ぶ女”なんです」

「縁結びですか?」

「そうなんです。あなたと片想いの相手とのご縁を結びましょうか?」

「あの、お幾らでしょうか?」

「お代はいただきません」

「じゃあ、是非お願いします」

「でるえなかいがねー! はい、結びました」

「ありがとうございます。これで楽しいお正月を過ごせたらラッキーですね」

「あら、一緒にカウントダウンを楽しんだらどうですか?」

「え?」

「豊歳久(ぶさいく)さーん!」

「あ、姫子ちゃん」

「あなたが好きだから来ちゃった」

「ありがとう、僕も大好きだよ」

「カウントダウンは一緒に!」

「うん、一緒に!」

「それでは、良いお年を……」

「はい、ありがとうございました。良いお年を!」



「ただいまー!」

「帰りなさい! お疲れ様。ご飯にする? お風呂にする? それとも、ぼ・く?」

「ぼ・く」

「もう、結子(ゆうこ)さんったら絶倫なんだからぁ」

「あら、あなたも嫌じゃないでしょ?」

「勿論」


「「……3、2、1、ハッピーニューイヤー!」」

「あけましておめでとう、結子さん」

「おめでとう、あなた。いつも家事をやってくれてありがとうね」

「いやぁ、結子さんが稼いでくれるから今の僕があるんだよ」

「いいのよ、あなたはイケメンだから。“色男、金と力は無かりけり”って言うものね! 気にしなくていいわよ。あなたは家にいて私を癒やしてくれたらいいの」

「結子さんがこれでいいならいいんだけど」

「ねえ、お正月と言えば『お年玉』よね。お年玉、あげようか?」

「僕はいいよ。僕が結子さんにあげないといけないんだよ。何もあげられなくて、ごめんね」

「あら、あなたからは最高のお年玉をもらったわよ」

「え! 何?」



「赤ちゃんができたの!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

“縁結び女” ~ 迎春 ~ 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画