【BL 】Knight's Oath 〜真実の愛〜

kappa

第1話 桜の花びら

真っ青な空が広がっていた。


雲ひとつない空に、彩り鮮やかな花が美しく咲き誇っている。


そんな中で私は、大好きな人の結婚式を見ていた。


今日は、グランダール皇太子「ダリアウス」とアヌベート帝国皇子「サーニャ」の結婚式だ。


私は、前日までダリアウス・グランダールの専属護衛騎士をしていた。


立派になったダリアウス。


寂しくはあるけど、サーニャ様とお幸せに…!


泣きそうになるけれど、でも大好きな人の幸せそうな笑顔を見ていたらそんな気持ちも消えていった。


ダリアウス。


あなたの事をずっと…。


ずっと…好きでした…。


いえ……愛していたのでしょう…


ダリアウス。


あなたがこっちを振り向いて笑う姿も。


ダリアウス。


あなたが私にちょっといずらして笑う顔も。


全部。


全部。


愛しくて…。


でも…この思いは…一生伝える事はない。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


5年前。


アルバート・グレイスウィンド 15歳


茶髪の正式な騎士服に、腰には騎士剣。

頭には、草が絡まっている。

先程頭に大量の草が落ちてきたのだから当然の事だろう。

そして、誰かを探している。

その誰かは、私の主人。

グランダール王国皇太子のダリアウス・グランダールだ。

この5年で、私はすっかりダリアウス皇子のお気に入りになった。

しかし、そのお気に入りが今は仇になっている。

ダリアウス皇子は、イタズラ好きでよく私を困らせる。

今日も、きっと……と、思っていたら案の定だった!

しかも!今日は、大切な日。

5年に一回の、グランダール帝国とアヌベート帝国の友好条約締結日だ!

そんな大切な日に、こんないたずらをしてもいいものか!? ……まぁ……よくされてますがね…………。

だから私は、ダリアウス皇子を探さなければいけないのだが……。

アルバート「あのクソガキ‼︎なめやがって!!」

と、思わず口が悪くなる。

しかし、これは仕方ない事だろう!

5年も仕えてればこうなるわ!

アルバートは、血相をかえてあっちこっちと走ってダリアウスを探した。

1人の少女がいた。

その少女は、白いドレスにベールをつけていた。

そして、手にはブーケが……。

アルバート「サーニャ様!」


サーニャ・アヌベート 13歳


彼女は、アヌベート帝国の第一皇女だ。

そして……私の主人の婚約者だ。


サーニャ「あら?またダリアウス様をお探し?」

アルバート「はい……。どこに行ったのでしょうか……」

と、頭を抱える。

するとサーニャ様は、クスクスと笑い始めた。

アルバート「な……なにか……?」

サーニャ「困ったお方ですわねぇ。ダリアウス様」

アルバート「本当に……困った方です……」

そう言うとサーニャ様は、またクスクスと笑った。

そんな時だ。

木がガサガサと揺れた。

アルバートは、サーニャ様に〝下がりなさい〟と言って後ろへ下げた。

すると、そこからダリアウス皇子が飛び出してきた。

アルバート「ダリアウス殿下!?」

ダリアウス「遅いぞ、アルバート」


声を発した少年。

そうそれが私の主人。

ダリアウス・グランダール 13歳

銀髪に整った顔のいかにも王子様の服装だ。


アルバートは、ダリアウスの言葉に内心イラッとしたが主人なので叱る訳には行かなかった。

アルバート「探しましたよ(クソガキ)」

ダリアウス「ん?」

アルバート「あ、いえ!なんでもございません!」

サーニャは、そんな二人のやり取りを見ていてクスクスと笑った。

ダリアウス「サーニャも来ていたのか」

サーニャ「はい。大切な日ですから」

アルバート「殿下、そろそろお時間ですから」

ダリアウス「そうだな。仕方ない」

サーニャ「また、後でお会いしましょう。殿下」

と、言ってダリアウスは歩き出した。

アルバートもそれに続いて歩くが途中、風が吹いた時、ピンク色の花びらが舞ってきてあまりにも綺麗だから。

アルバートは思わず立ち止まってしまった。それを見たダリアウスは足を止め、アルバートをみた。


桜のピンクは、綺麗で美しくて、この世の物とは思えない。

ダリアウスは、アルバートの所まで行き桜の木を一緒に見た。


ダリアウス「お前は、この桜の木が気に入っているな」

と、小さく笑って言う。

アルバートは、桜の木をみた。

アルバート「和平、平和の象徴ですから」

ダリアウス「確かに、そうだな」

アルバートは、桜の木から視線を外してダリアウスをみる。

そして、小さく笑った。

ダリアウスは、アルバートのその笑顔が、好きだった。

少なくとも、宮廷の中でもあんなに愛おしそうにみる者はいなくはない。


ベルが鳴る。


アルバート「‼︎あ‼︎殿下‼︎お時間です!早くしてください‼︎」

ダリアウス「えー。」

アルバート「早く!」


そんな二人が戯れるのを、サーニャは笑いながらみていた。

心の中は不安になっている。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

私の主人はイタズラ好きで、


でもそんなところも許してしまう、素晴らしいお方なのですよ。


私は、これだけで、幸せだったんですよ。


この話は、ダリアウス。


あなたと出会い、あなたと過ごし。

あなたと共に、歩んだ私の物語なのです。



続く

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