チート舞をご披露・・・(2)

 来客18人を感動スタンディングオベーションさせた幼女の舞の謎解きです。


 うふふふ、皆さん。まんまと私の仕組んだ罠にまんまと引っ掛かりましたわね。

 萬田先生が帰られた後、私はずっと一人で舞の自主トレをやっていたのですが、単に舞を練習していた訳では御座いません。光の玉を操って、私の舞をせせら笑う不届者おきゃくに頭ピッカリの光の玉を当てるイメージトレーニングをやっていました。しかし落ち着いて考えてみたら、光の玉の出所が私である事がバレると、性格の良い悪役令姫フレひめを目指す私としましてはあまり都合がよろしくありません。


【天の声】バレるバレない以前に、性格の良い姫はそんな事しないぞ。


 そこでバレないための策を色々と考えたのです。

 光の玉の色や強さを変えられないか……と。


【天の声】うぉいっ!!


 ***** ここから回想シーン *****


 私が出す光の玉の基本色は眩しい黄金色こがねいろです。つまり、やや黄色味掛かったキラキラした光です。しかし光の強さと頭ピッカリの効果とは関連性が薄い様な気がするのです。弱々しい光の玉で同じ効果が得られるのなら、バレないくらい弱い光の玉でやってみましょう。


 では早速実験です。まず光の玉を出します。

 ……ぽわっ。

 そして現代の私のお部屋にあったLEDシーリングライトを思い浮かべて、リモコンの『弱』のボタンを押すイメージで光度調整します。

 ……スススス。

 成功! 光が弱くなりました。


 じゃあ、『強』のボタンを押すイメージで。

 ……スススス。

 成功! 光が強くなりました。


 では次に色を変えてみましょう。私のお部屋にあったLEDのシーリングライトは色温度調整も可能なタイプで、蛍光灯の様な光から電球色まで自由に色を変える事ができました。それと同じ様に光の玉を蛍光灯色と同じ色にしてみます。

 ……………………スススス。

 成功! 光が青白くなりました。

 強弱と違って少しイメージが難しいみたいです。


 では次は電球色。

 ………スススス。

 成功!光が黄色くなりました。コツを掴んだみたいで、今度は簡単に出来ました。


 じゃあ、オレンジ色。

 ………スススス。

 成功! 光がトンネルの照明と同じ色なりました。

 最近はあまり見なくなりましたが、以前のトンネルは皆こんな色でした。


 ではクリスマスツリーを思い浮かべて、色がクルクルと変わるLEDライトを思い浮かべてみます。

 ………あ、失敗。

 クリスマスでの嫌な思い出を思い浮かべてしまいました。

 やり直しです。


 オレンジ色の光の玉に精神鎮静の効果を乗せて、自分自身に当てました。

 チューン!

 ……あぁ、落ち着きました。


 !!!


 これよ、これ!!

 精神を落ち着かせる効果の光の玉をバレない色にして当ててしまえば良いのだわ!

 光の出所がバレなくて、やった事すらもバレないし。あわよくば光の玉のヒーリング効果を舞の感想と勘違いさせてしまいましょう!


【天の声】全然性格が良くない悪役令姫はらぐろひめだろ!?


 理科の授業で、光には『人の目に見える光』と『人の目に見えない光』があると習いました。

 見える光は、赤、白、黄色、…緑、…燈色、……青、あと何でしたっけ?

 そして見えない光は、紫外線と赤外線だったはずです。健康器具や美容関係でも聞き覚えあります。

 なんとなく紫外線は女性おとめの敵っぽい感じがするので、赤外線に挑戦しましょう。岩盤浴や電気ストーブが大量の赤外線を発生していると聞いた事があります。

 きっと暖かい光なのでしょう。


 赤外というから赤っぽい光なんでしょうか?

 とりあえず赤い光の玉に挑戦します。


 ……スススス。

 成功! 光が赤くなりました。

 慣れてきたせいか比較的簡単です。

 では電気ストーブを思い浮かべて、黒いヒーターから発せられる熱線だけをイメージします。


 …

 ……

 ………

 …………スススス。


 あれ? 消えてしまいました。

 でも光の玉のあった所に手を近づけると、ほんのり温かみを感じます。たぶん成功したのかも知れませんが、自分ですらどこに光の玉があるのかが分からないのは不便ですね。


 もしこれが本格的しょうわの野球漫画だったら、夢の様ドリームな消える光玉まきゅうを放り投げる女性ピッチャーとして華々しいデビューを飾るのかも知れませんが、そんなものを私は目指していません。


【天の声】元ネタがごちゃ混ぜだぞ。


 光の玉が見えないのなら、光の出所を特定しましょう。

 例えば指先?

 しかし舞を踊っている最中は扇子を持っているので手が塞がっております。

 だったら扇子の先っぽがいいかも知れません。


 まずは赤い光の玉で練習します。

 舞を舞いながら扇子の先端に赤い光の玉を光らせます。なんかレーザーポインターみたいですね。


 そして扇子が客席に向く瞬間に精神鎮静の効果を乗せて……、

 打つべし! チューン!

 打つべし! チューン!

 打つべし! チューン!


 うん、何となくコツが掴めてきた様な気がします。

 気のせいか気分がスッキリします。

 明日はきっと何かありそう♪


 あとは赤外線の光の玉で狙い撃てるよう、ひたすら練習です。

 こうして私は舞を舞いながら、精神鎮静の効果を載せた見えない光の玉をナチュラルかつスムーズに連射出来るレベルまで上達したのでした。


【天の声】上達するべきなのは舞の方じゃないのか?


 ****** 回想シーン終わり *****


 練習の成果はご覧の通り、トゲトゲした感情やギスギスした雰囲気ばのくうきが綺麗さっぱり消えてしまいました。そしてその爽快感いいきもちと舞の感想とをごちゃ混ぜにする事で、皆さんは舞そのものが爽快な気持ちにさせたという勘違いを全員に引き起こさせた訳です。

 その結果があの大絶賛スタンディングオベーションになったという訳ですね。(ぶい)


 特に酔っ払いのオジサンと子供達ガキンチョには念入りに何発も撃ちました。

 逆にお爺さんとお婆さんには撃っていません。そんな事をしなくても私の舞を喜んでくれると思ったから。

 こうして来客の皆さんは、私の舞を誤解かんちがいして、気分よくお帰りになられました。


 しかし実際にやってみた感触としましては、この技は相手の負の感情を打ち消すのには効果的ですが、鬱陶しいであろう求婚者達しつこいれんちゅうに使ったとしても、同じ効果が得られなさそうに思いました。

 光の玉で恋愛感情を霧散させる事はムリな様な気がします。

 でもヒートアップした感情を落ち着かせる事で、「なんだ、ジミ顔の喪女じゃないか」と目を覚まさせるのには有効かも知れません。


 うん、自分で言ってて凹むわー。

 自分自身に精神鎮静の光の玉を当てました。


 チューン!

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