チート幼女・無双
太郎さんのおじいさんを治療した晩の夕餉の時にお爺さんが私に聞きした。
「娘よ。何でも病気の年寄りを治したと婆さまから聞いたがそれは誠か?」
「病気のお爺さん居た。苦しそう。だから治した」
「どうやって治したのじゃ?」
「ちち様どこか痛いところある?」
「痛いところ? 痛いところはないが、最近目が霞むんじゃが」
「それたぶん老眼。病気じゃない」
「病気じゃないと治せぬのか?」
「分からない。やみくもに治せない、と思う。ちち様の髪、全部抜けるかやってみる?」
「待て待て待て待て。それこそ病気でも何でもない」
「嫌な事に効くと思う。何か思い浮かべて」
「そうか、それじゃ……。
何か思い出しただけで腹が立ってきた!」
光の玉を出して、精神安定剤的な効果を思い浮かべながら『治れー治れー治れー』と心の中で唱えて、お爺さんの頭にくっ付けました。するとお爺さんの頭がぴかっと光り、暫くして消えました。
「おぉ! なんか心が安らかになった。効果はてきめんじゃ」
やはりお爺さんは
しかし喜んでいるお爺さんの様子を見てみるとハラりハラりと髪の毛が落ちて行っているような気がします。
いけない! 直前の会話のせいで邪念が入ったみたいです。慌てて髪の毛ふさふさのお爺さんを思い浮かべながら光の玉をぶつけました。すると抜け毛が止まり、元のお爺さんよりすこしふさふさになった感じになりました。
「おぉ、心が躍るようじゃ」
……やはり向いてませんね。
その夜、私は自分自身に光の玉を当てて、肌の日焼けと、この世界に来てから荒んでいた心を鎮静して、ぐっすりと眠りにつきました。
◇◇◇◇◇
翌日は姫検地四日目。たぶん最終日です。
秋田様はご用事があるとのことで本日も欠席です。この時期のご用事って
家人の源蔵さんも傘持ちのお姉さんも護衛の三人も一緒です。
ただし今日はお爺さんが同行してくれることになりました。
「ちち様、一緒。うれしい」
気のせい……ではなく、私達を受け入れる皆さんが皆土下座でお出迎えしています。
「ちち様、皆ちち様に土下座?」
「いやいや、このようなことは初めてじゃ。そこの者、何故土下座をしておるのだ?」
「ははぁ、天女様をお迎えするに上がり失礼のなきよう、皆で申し合わせた結果、この様にお出迎えすることに相成りました」
天女?私が?
「確かに娘は天女の如き神々しさと美しさを持っておる。しかし娘は奥ゆかしくもある。仰々しい出迎えは逆効果になるぞ」
「ひ、ひえっ、それは失礼つかまわりましたでございます」
それ
「ちち様、調査始める」
気にしていても仕方がありません。こうゆう時はとっとと始めてしまうに限ります。今日の目標は全部終わる事です。
現代には有名な金言があるのです。
『気にしたら負け』だと。
調査そのものは順調に進みました。同行したお爺さんも知っていたことと現実に乖離に少し驚いてました。ついでに放置された田畑を調べて、新しく田畑を与えるのに足りるかどうかも調べました。全体の人口はさほど変わっていないので、多分足りるはずです。
しかし予想外だったのは、流民がいた事です。村のはずれの荒れ果てた休耕田で作物を作っている一団がいたのです。自警団の人達もそのことを知っていて、お爺さんに相談したのですが、取り合ってくれなかった様です。
「まさかそのような大事になっているとは思わなんだ」
というのがお爺さんの弁。
「ちち様、めっ!」
例外を作ってしまうと、税の体制が崩壊する可能性もあります。ここはきっちりと話をつけるべきでしょう。
「皆の者、やっておしまい!」
……なんて荒事はしたくはありません。
先ずはお爺さんと護衛の三人が一団の住む家へと向かいました。私と源蔵さんと傘持ちのお姉さんは何が起こるか分かりませんので、離れた場所で控えております。
お爺さんたちが家の前で話し始めて暫くすると、相手がヒートアップして大声になってきます。雰囲気がキナ臭くなってきましたので、私は光の玉を3つ出して備えました。横にいる源蔵さんと傘持ちのお姉さんの二人は驚いていましたが、非常時なのでスルーします。
いきなり相手の男がお爺さんに殴り掛かり、お爺さんが吹っ飛ばされました。それが戦闘開始の
私は光の玉の一つにお爺さんの殴られたケガが治るイメージを思い浮かべて、お爺さんに飛ばしました。
見事命中! コントロールには自信があります。だって毎日毎日竹に向かって光を放っていますから。お爺さんは即座にケガが治ったらしく、走ってこちらへ向かっていました。
私は光の玉を十個浮かべて、戦闘の様子を見ます。
自警団の団員さんが鎌のようなもので切られたのが見えたので、光の玉を飛ばします。
もう一人の団員さんが羽交い絞めされてボコボコに殴られているので、殴られた数だけの光の玉を連続で飛ばします。
さすがに団長さんは剣を使って切り伏せていきますが、多勢に無勢です。ケガをするたびに光の玉を飛ばします。
それを十分くらい続けたところで、相手の一団の数が一人また一人と数を減らしていき、残り一人となりました。一番最初にお爺さんを殴った人です。
そしてここぞとばかり、人事部の部長さんの頭をイメージしてその男にぶつけました。
人・体・実・験です!
自警団の人たちは何故敵にヒールをするのか? と一瞬驚いてましたが、見る見るうちに髪の毛が抜け、頭が青白くピッカリになる様子を見て、ドン引きしておりました。男の方も予想しない結末に呆然と立ち尽くし、戦意を喪失したみたいです。
これで勝負ありですね。
私は倒れている一団へテトテトテトと向かっていき(もちろん止めようとするお爺さんも一緒に)、全員に大声で語り掛けました。
「このまま死ぬか、生きて罪償うか?」
一団は突然の幼女の乱入に言葉がない様子です。
「生きたいなら助ける。そして償う。死にたいならほっとく」
一団の中で一番傷の深そうな男が
「た……たすけてくれ。何でもする。助けて」と息も絶え絶えに答えました。
「分かった。助ける」
光の玉を浮かべて、刀で切られた体の組織が再生するイメージを載せて、ぶつけました。
眩しく男が光を放った後、男は傷が塞がり全快しました。しかし顔色はあまり良くないみたいです。
失った血が戻っていないからだと思います。それを見た他の者たちも嘆願して来ました。
「助けてくれ」
「もう逆らわない」
「お願いします」
私としても目の前で人が殺されるのは嫌なので、最初から助けるつもりでした。翻意すればまた同じことの繰り返しです。
しかし次はありません。たぶん血が足らないでしょう。
光の玉を浮かべてケガをしている全員にぶつけました。殴られたケガは放置で、刀や鉈で切られて命に係わる大ケガ限定のヒールです。
全員が治ったところで、一団は皆私に土下座をしてきました。
この世界の人は土下座が好きなのかしら?
パンツは見せないよ。履いてないし。
「「「「「「「「「申し訳ございませんでした」」」」」」」」」
平身低頭。皆さん自分のした罪を償う気持ちになってくれたみたいです。
ただ一人を除いて。ピッカリになって呆然とした男が私に言ってきました。
「頼む。元に戻してくれ。この仕打ちはあんまりだ」
「だめ。ちち様を殴った。ちち様は
男は相当なショックだったらしく、両ひざをついて屈服しました。
「おじさん達、ちち様守ってくれてありがと」
「勿体ないお言葉です。姫様の助力がなかったら我々の方がやられておりました。
我々こそ姫様に助けて頂き感謝の念に絶えません」
団長さんは非常に礼儀正しい侍っぽい方の様です。
「助けるの当然。無事で良かった」
「ははっ!」
「ちち様、後、お願い。おじさん達、血が足りない。食事必要」
「お、おう。分かった。そのものを引っ立てい!」
なんか時代劇っぽいですね。私は八時十八分頃にお風呂に入る役?
視聴率が落ちたらごめんなさい。
【天の声】アウト~ッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます