勇者ラブラ伝説~私って実はちょっと凄いんだよ?~
黒羽冥
第1話シーン1目覚め。
意識が確かなものになってくる。
辺りはとても静かだ。
音一つなく静寂した世界。
なんだろう?
私って誰なんだろう?
そして、ここってどこなのかな?
私はスーッと目を開けていく。
目覚めては、みたけれど……。
すると…そこは瓦礫まみれの荒廃した街の中。
数名の精霊族そしてヒューマン族も私の様子を見ていたんだ。
私は、ゆっくりと身体を起こしていく。
「「おおっ!?」」
「「勇者様だ!!」」
「「勇者様が起きられたぞ!?」」
私の耳に届いたのは、目覚めた事に驚く人々の興奮と歓喜の声だった。
◇
◇
◇
この世界はファンタジーの世界。
神によって創世されたこの世界には神の力の加護をうけた『精霊族』知能を誇る『ヒューマン族』そして絶大な魔力を持つ『魔族』が現れ暮らし始めた。
平和な時が流れた。
そう誰もが感じていた。
その時…『魔族』の中から特別な力を持つ『魔王』が誕生した。
その名は魔王ゼルドリス。
しかしこの魔王が生まれ成長する事により…魔族達に変化が起こりはじめる。
力の世界イコール魔族の世界。
力こそが真理の世界で力を持つ魔族が他の人間族と精霊族を支配しようとしていた。
そして魔王を筆頭に…この世界に影を落とし始める。
◇
◇
◇
「いかんぞ……これは世界の危機的状況だ。」
そう声をあげたのは精霊族であるドワーフ族の王の声だった。
「しかしドワーフ王…『ドワフロス』よ……魔族……魔界から現れた魔王ゼルドリスという男…歴代の魔王の中でも特異な力を持ち…その力をどんどん大きくしているとの話を聞いている…これは我々にとって由々しき事態だ。」
そう言ったのはヒューマン族の王代表『ロイズ』だった。
対して口を開くエルフの女王『エルフィーナ』。
「ふむ……元々は我々同様に、この世界を三種族で統治する事になっていたハズなのに……実はこの間……我々のエルフの森に魔物が現れたのです……それがなんと、元々いなかった魔物が現れたのです……」
「なんだと!?それはどの様な魔物だったのだ?」
エルフィーナに問い返すドワフロス。
「ゴブリン………私達エルフにとっては天敵とも呼べる魔物……ですから私達エルフ族は昔から敵対し…そしてその駆除も長きに渡り繰り広げてきました……ですが、彼らの力は明らかに飛躍していたのです。」
「なにっ!?強力に成長してるという事か?それならば奴らが単体で成長してるのではないのか?」
そんな言葉も確かに誰かがいった。
すると。
「魔王………………」
「「魔王だと………………やはり。」」
「動き出したか……ヤツめ……三種族間のバランスをとってきた世界をその手に纏めようというのか。」
「ドワーフ王よ…………」
ドワフロスは苦悶の表情を浮かべる。
「魔王ゼルドリス……お前の好き勝手にはさせん………皆の者…我々はヒューマン族と手を取り魔族の猛攻からこの地を守ろうぞ!!???」
そこへヒューマン族の王『ロイズ』もまた立ち上がる。
「我々ヒューマン族の兵よ……武器をとり魔族を迎え撃つ………魔族の勝手を許すな!!」
◇
◇
◇
こうして魔族への対抗としてヒューマン族そして精霊族は互いに手を取り魔王ゼルドリス率いる魔族への侵略を許すなの名のもとに聖戦を開始した。
だが……結果は。
◇
◇
◇
「て……撤退………………撤退だ。」
そう言ったのはドワフロスの声。
その地にはいくもの屍の山ができていた。
兵士達は魔族の膨大な魔力…そして魔物達との激しい戦いに疲弊し……敗走した。
「ぐぬう………これまでか。」
魔王の足元に転がるヒューマン族の王『ロイズ』の声。
『クククッ…こうなる事は分かりきっていたハズだがなあ………クククッ…これで我々魔族がこの世界を支配するに相応しいと思った事だろう?』
「なっ!?貴様…………………魔王……ゼルドリス。」
『ロイズ』はこうして意識を手放したのだ。
この戦いで、こともあろうに魔族はヒューマン族……そして精霊族の主力を敗り………。
世界の支配権が決まってしまったのだった。
この日からこの地には暗雲が立ち込め……そして魔物が沸き起こり……荒れた海、そして荒廃した世界へとその星は姿を変えられてしまったんだ。
◇
◇
◇
ここは地下世界……。
怪しげな二人の魔導師が何かを行おうとしている。
「これは……………この反応は!?」
「ああ……この反応こそが我々が長きに渡り、ずっと追い求めてきた反応だ。」
地下世界の廃道をずっと最奥に進んだ先には とある神殿がその姿を構えていた。
神殿内部のとある一室の魔導室。
足元には巨大な魔法陣が描かれていた。
魔法陣からは魔力が溢れ、今にも何かが…飛び出してきてもおかしくは無い。
二人の魔導師は言葉を告げる。
『このヒューマン族の愛とそして勇気ある魂よ……今こそこの地に力となれ。』
『我が種族の遥かなる時を重ねた魂よ……この地に至りて…その力を示せ。』
二人の魔導師は互いの力を重ねていく。
やがてそれは天空への光となり放たれる。
『『勇者…………………召喚…………………。』』
◇
◇
◇
こうして二種族の魔導師は今ここに勇者を召喚させる為の儀式を行なう。
その瞬間。
ドオオオオオーーーーーーーーーーーーーンっという爆風が洞窟内に巻き起こる。
激しい衝撃に洞窟内部が崩れていく。
「いかん!?何事だ?まさか魔王か?くっ!?まさか……勇者召喚は失敗か!?」
「くっ!?我々の最後の希望が!?」
魔導師達が慌てふためく。
ガラガラと崩れていく洞窟内の神殿。
そして。
これが歴史の転換の序章だったんだ。
◇
◇
◇
お読みくださりありがとうございました。
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