異世界五郎を打つロリババア
「駄目じゃこれ……」
入店して2時間。
儂は新台のアニメスロット『
「6号機はこれじゃから好かぬ。いくらコイン持ちが良くても当たらなければ同じじゃろうが」
異世界五郎はうんともすんとも言わぬ。
自慢のちーとぱわーとやらはどうしたのじゃ。
やかましい音だけ鳴り響かせておきながら、展開は年寄りの小便のようにキレが悪い。一応当たりこそしたが、雀の涙程度の出玉じゃ。
「早くも3万が吸い込まれおったか……」
言わずもがな儂が打っておるのは20円スロット。いわゆる20スロじゃ。
その名の通りメダルが1枚20円する。スロットを1げぇむ回すのに3枚のメダルが必要じゃから、1回転で60円かかることになる。
2回転させれば120円。それだけで飲み物が買えてしまうのじゃ。
もっとも、パチ屋に来るとそういった金銭感覚は早々に崩壊する。
普段はこんびにで数百円の物を買うのにも躊躇する儂じゃが、パチ屋で使用する数千円なんぞは挨拶程度と捉えておる。
これは全国の20スロを打つスロッターの共通認識と言ってもよいじゃろう。
「新台の癖に設定を入れておらぬのか」
パチスロには1~6の設定があり、その数字が大きいほどメダルの投入数に対する払い出し枚数の割合である機械割が高くなる。つまり高設定ほど打ち続ければ勝てる可能性が高まるということじゃ。
新台じゃからと店が設定を入れてくれたのも今は昔。店とて新台の購入費用を客から回収せねばならぬのじゃ。
「いや、よもや設定が入っていてこれなのかえ……?」
当然ながら高設定でも負けることはある。殊に最近の台はけしからん。
高設定確定の演出が出ておきながら糞てぇぶるで負けることもしばしばじゃ。台に遊ばれておるような気がしてならん。
儂にはこの異世界五郎が貯金箱にしか見えんようになった。
「ここらが潮時じゃな……」
儂は小当りで出した200枚足らずのメダルを持って離席した。
勝算のない勝負は避けねばならん。
6号機は駄目じゃな。やはり5号機の方が良い。もっとも常連の弦なんぞは「4号機時代は夢があった」と言っておった気がする。どうも過去というのは美化されるものらしい。
儂が離席すると、即座に若い小僧が席を確保しおった。
ひひひ、阿呆めが。せいぜいその貯金箱に貢ぐがよいわ。
儂は自販機で買った飲み物を片手にしばし経過を観察した。
じゃが……。
「スキル発動! 待たせたなお前ら!」
「なっ!?」
小僧が着席してレバーを押した途端、異世界五郎のリールが逆回転しおった。
それが期待値2000枚と言われるフリーズ演出であることを悟った儂は、自販機に蹴りを入れてその場を後にした。
「ええい、あそこでフリーズとはのぅ……」
雑誌の解析はまだ出揃ってはおらぬが、あれは1/60000ぐらいの確率じゃ。もっともフリーズの確率自体に設定差はなく、儂が昨日GOAT揃いを引いたように完全な運じゃ。じゃから儂の見立ては間違ってはおらぬ。あの異世界五郎は低設定の貯金箱じゃ。そうに違いない。
ひひひ、調子に乗るでないぞ?
調子に乗って打ち続ければおぬしは終わりじゃ。
「さて……」
負けっぱなしで帰るのは性に合わぬ。せめて投資分ぐらいは回収せんとな。
儂はいわゆるAタイプと呼ばれておるアイムシャコラーという機種を打つために移動した。
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