フィルムとぐるぐる 2025~

N.river

私にふさわしいホテル ー2025.1.1.

監督:堤幸彦



「怒りの正しい使い方」


創作意欲を保ち続けるに、エネルギー源のひとつとして「怒り」があることは間違いない。ゆえに、人前で怒り慣れていない、もしかすると若すぎて正々堂々、怒れない若い作家は立ち消えていった。

だがまっすぐ正しく燃料にかえることができたなら無敵。そこにある清々しさと、創作を発露させる生命力をふんだんに感じ取れた作品だった。


「あまちゃん」も見ておらず、のんさん初体験。

七変化が真似ではなく真に七変化で、どれがスの状態の登場人物か混乱してくるほど。

エネルギーの塊のような主人公を不足なく、それ以上のエネルギーで演じきっており

最後まで目が離せなかった。


ライバル作家の滝藤さんも憎めそうで憎めない、清々しい敵役でヨシ。

一番印象に残ったのは、万引き転売ヤー(たぶん)を捕まえた時に、主人公が吐きつけるセリフ。まさしくその通りと、大笑いした。



ときおり芝居をしている人について、どこまでが意識的でどこからが無意識なのか。作為的なものは全体のどのくらいなのかを想像してしまう。

鑑賞する方はのめり込むほど演技を事実、真実と錯覚してみてしまうわけだが、そうさせるためにどこまで誇張したり、見えるように歪に演出を加えたりしているのだろうと我に返る。


そして一番恐れるのは、この演技のこここが気になるなぁと違和感を抱えた時、それが演者の不手際なのではなく、わざとそう思わせるように演じていた場合で、疑うことなくぼやく姿をしめしめ、とどこかでほくそ笑んでいるのではないか、ということだ。


本作の主人公は演劇部出身のモノカキだ。

嘘の天才と言っても過言でなく、だから科全体的に大仰な芝居と、嘘くさい、わざとらしさが滲みまくる。

だがふいにナチュラルな演技に戻ることもあり、あ、これは本音に違いない、と思わされたりした。

それはモノカキのちょっと夢見がちが言動を大仰にするあの雰囲気を的確に表しているのでは、ともとることができると気づいた時、なり切り加減の完璧さに引いてしまったのだった。


はたしてのん、どこまでが計算なんだ。


そしてキャラクターを描写する時、そこまで考えてきたろうか。思わされもしたのだった。

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