外れジョブの【商人】の悪役貴族に転生したが、何か【交渉】スキルがチートだったので、何か無双する。
あおき りゅうま
第1話 転生開始。 ~全てを見ている神でも、ミスる時はミスる~
———聞きなさい。あなたの行いを私は全て見ていました。私は神です。
「はい。突然なんですか? 何も見えないんですが……あれ? 俺会社にいてそれでどうなったったんですか?」
———あなたは死にました。ですが最後に善行を行ったのであなたの理想の世界に転生させてあげます。
「それよりも納期が明日までのプロジェクトがあったんですが……」
———あなたは死にました。
「マジかよ。問答無用で押し通された。死んだから諦めろってことですか……?」
———あなたは平凡な人生を送ってきましたが、最後の最後で英雄的行動をしました。そう、トラックに轢かれかけた子供を助けたのです。
「マジですか。俺の最後の記憶、三徹で会社に泊まり込んで、疲れ果てて床で寝てる記憶なんですが……そこから俺は外に出て、トラックに轢かれかけた子供を助けたんですか?」
———はい。
「疲れ果ててて、できないと思うんですが……」
———できました。50メートル走8秒ばりの速度で助けました。
「マジかよ。火事場の馬鹿力凄いな、俺。学生時代は50メートル走10秒切れなかったのに……」
———なのであなたがずっと昔から遊んでいたゲーム世界『ファイナルクエスト7』の世界に転生させてあげます。あなたが一番思い入れのある
「マジですか。ありがとうございます」
———それも一番面白いところからスタートです。
「マジですか。ありがとうございます。正直『ファイナルクエスト7』は友達から借りてやったきりなんで、どんなストーリーかよく覚えてないんですけど。とりあえずありがとうございます」
———それでは転生先では頑張ってください。鈴木幸人さん。
「田中です」
———頑張ってください。鈴木幸人さん。
「俺の名前、田中です。あのずっと思ってたんですが。あなた人違いしてませんか?」
———頑張ってください。鈴木幸人さん。
「神様、あなた人違いをしてま———、
◆
目が醒めると土の匂いがした。
「ハ……ッ⁉ ここは……?」
そこは廃村のような場所だった。
壊され朽ち棄てられた木でできた住居が並ぶ家々。放置されて雑木林になっている農場。十字架がべっきり折れている教会……。
「あぁ、マジで転生してんのか。ゲームをリアルにしたような雰囲気の場所だ。で、俺は誰よ?」
近くに流れていた川に顔を映して見るとターバンをかぶり、髭を付けた中年の男だった。
「マジで誰?」
普通のおっさんじゃん。なんかアラビアンナイトとかに出てきそうな……。
「……あぁ⁉」
顔を見て、ようやく思い出した。
『ファイナルクエスト7』であったあるイベント。
ラスボスを倒すには七色の宝玉を集めなければいけないのだが、その一つの【琥珀の宝玉】の入手方法にこのおっさんは関わっている。
「こいつ! 廃村を復興させるために置いていかれる旅の仲間の商人じゃねぇか!」
このおっさんは、勇者の仲間の一人だ。名前は勝手にプレイヤーが決められる。ということはほとんど名無しも同然だ。
「こいつが滅んだ村を商人として発展させるはいいけど、途中で悪徳商人化して、なんやかんやで貴族の位を貰って領主になって暴君化してしまう悪落ちキャラ! それからなんやかんやでボスになったはいいものの、普通に勇者にしばかれて牢屋にぶち込まれる
そして復興した村の宝物倉に【琥珀の宝玉】があってその入手経路として必要な
最終的には「どこで間違ったのか、出る時までに考えておきます……」と言って結局クリアし終わっても牢屋に居続ける
「マジかよお先真っ暗じゃねぇか! 鈴木幸人のクソ野郎! お前が変なキャラに思い入れをしてたせいで人違いで俺が苦労することに! 鈴木幸人のドエム野郎! つーかお前マジで誰だよ鈴木幸人!」
人違いで全く外れの世界に異世界転生させられた。
その上———、
【ユキト 職業・商人 Lv10 攻撃力20 防御力25 魔力20 速度10 幸運1】
空中に「ポーズ、ステータス」と言ってみたら目の前に光の文字でこのキャラクターのステータス画面が都合よく浮かび上がってきた。
流石ゲーム世界、都合がいい。
「この数字、クソ低いよな……確かこの廃村に来た時点で俺のプレイ時はLv50は越えてた」
つまり、この【商人】のキャラクターは捨てられたのだ。
弱いから。
「いわゆる追放系とも言えるかもしれねぇな……」
パーティーから外された時点からスタートだから勇者一行がどんなキャラか知らんけど。
それに『ファイナルクエスト7』は自由度の高い古き良きRPGだから、プレイヤーキャラ喋らんから、そもそも今俺がいる世界で人格を持って存在しているかすら知らんけど。
「でもとにかく生きていくしかねぇな……」
ステータスを指で触って横にスライドさせると、別の画面が表示される。
「便利ぃ~。この画面スクロールができる~。ここは【スキル】の欄か……【銭投げ】・【値切り】・【荷物持ち】……使いにくいか使えねぇスキルしかねぇ……」
そうだ———【商人】は〝外れ職業〟。
大魔法を操る【賢者】。攻撃力とクリティカル率が高い【剣士】。そんなキャラクターが優遇される剣と魔法のRPG世界で、〝バトルで所持金を投げることでしか役に立たず、持てる道具のキャパシティを増やせることが一番の使い道〟な【商人】のジョブのキャラクターは圧倒的な外れキャラ。
だから、廃村復興イベントなんて作られて、一応ゲーム中での役目を与えられているのだ。
「こんな外れジョブで、魔王軍が全土を支配してて、モンスターが蔓延っているRPG世界でどうやって生きていけば……お?」
スキル画面の中で一つ、目を引くものがあった。
「【交渉】……スキル……」
【交渉】———エサを与えられた魔物が、仲間になる確率を上げるスキル。
『ファイナルクエスト7』はモンスターを仲間にできる。
モンスター収集要素があるゲームなのだが、クリアのために必須ではない。あくまで時代の需要に合わせたおまけ要素だ。そのおまけ要素でちょっと役に立つ程度のスキル。それが【交渉】スキル。
これも本来であれば外れだ。
外れ、なんだけど……。
「俺もしかしたら———この世界で俺無双できるかも」
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