大人気イラストレーターと打ち合わせ
「どうしてこうなった……」
僕は今とあるカフェに来ている。
きっかけは天野さんからの電話だった。
『【アマツアツメ】先生が会いたがっています』
「えぇ!?」
『キャラデザについて詳しく説明を聞きたいとのことでした』
「それならメールでお伝えできますけど??」
『直接会った方が早いと……』
「了解しました。場所はどちらにします?」
『出版社近くに、お洒落なカフェがあります。そちらでどうでしょう?【アマツ】先生もよく行っているそうですよ』
「わかりました。今からそちらに向かいます」
『感謝します。【アマツ】先生には私の方から伝えておきます』
とのことだ。
「うぅ、緊張してきたなぁ」
予定では11時に待ち合わせ場所であるカフェに集合となっている。
僕の格好はおかしくないよね……?
安定のパーカーとジーパンである。
けど、今回は白のパーカーだ。
清潔感がありそうって理由なんだけど。
Twitterのダイレクトメッセージで、【アマツアツメ】先生にメッセージを送る。
電車の中でもちょこちょこやり取りをしていた。
「カフェに着きました」
っと。
『お越し下さりありがとうございます。私は奥の席に座っています』
と先生からメッセージが届いた。
うわぁ緊張するなぁ。
意を決して僕はカフェの中に入った。
カフェの中は冷房が効いていて、とても涼しい。
えっと……奥の席はっと。
??
ちょこんと中学生位の銀色の髪の少女が座っていた。
席を間違えたかな?
と思ったけど、少女の座る席が入口から1番離れている。
「もしかして、【アマツアツメ】先生ですか?」
僕の方から話しかけてみた。
ビクッと肩を震わせて、少女が僕を見た。
「ひゃい!?そ、そそそうです!」
どうやら彼女が【アマツアツメ】先生だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「前の席失礼します」
「ど、どどど、どうぞ」
「めちゃくちゃ緊張してますね」
「うみゅぅ……」
顔を赤面させて頷く。
「えっと……」
しばしの沈黙。
その間に、僕は改めて先生の姿をよく見る。
銀色の髪に、透き通るような白い肌。
そして青い神秘的な目。
「綺麗な髪色ですね」
「ひぃ!?」
どうしよう、先生の目が犯罪者を見る目になってる気がする。
「えっと……父も母もフィンランド人なんです。でも私は日本で生まれて、育ちました……」
あぁ、フィンランド人か。
サンタクロースの国だね。
「そうなんだ。すごいですね」
「あの、、敬語じゃなくて、大丈夫 、です。」
「……わかった。これで良い?」
コクコクと頷く。
でも、話が続かないなぁ。どうしよう。
と思っていたら、ピコンッとメッセージが届く。
『先生の作品、とっても大好きです!今回は引き受けていただきありがとうございます!』
「ありがとう。僕も立候補してたって聞いて驚いたんだ」
『3年前からずっとずっとファンでしたから!いつかイラストを担当したいと思ってました!!』
3年前っていったら、僕が『ミッション』を連載している時だ。
中学生になってから投稿をしていたから、結構なファン歴になる。
『一時期は死亡説も出ていたので、ご存命で何よりです』
やっぱり『死亡説』出てたんだ。
「生きてました」
『3日前に新作を投稿されて、生きているって分かって本当に嬉しかったんです!!『ミッション』が完結してからの2年間は食事も喉を通りませんでした』
そんな大袈裟な。
「ちなみに先生は何歳ですか?」
『女の子に歳を聞くのはマナー違反ですよ』
恥ずかしそうにニコッと笑っている先生。
可愛い。
「ごめんなさい」
『冗談です。今年で15歳です!中学3年生です』
中3!?
とても小柄だから中1かと思った。
「中3でイラストレーターでVTuberなんて……すごいね」
「Minua kiitettiin」
おぅ……フィンランド語。
「Opettaja on myös hämmästyttävä! Näytät lukion oppilaalta, mutta voit tehdä hienoa työtä!」
『先生も凄いです!高校生なのに神作品を生み出すなんて!!』
フィンランド語で立て続けに喋る【アマツ】先生。
「Kiitos」『ありがとう』
と返すと、目を見開いて驚いた。
そして、シュパパッとスマホを操作する。
タイピングはやっ!
『先生、フィンランド語が分かるんですか??』
「ええっと、日常会話ぐらいなら。父さんの仕事の関係で覚えさせられたって言うのが正しいかな?」
父さんの仕事は翻訳家だ。
様々な国を飛び回っては、年に数回日本に帰ってきたときに、訪れた国の言語しか話さなくなる。
ああ思い出すな。
タイから帰ってきた時とか、中国とかから帰ってきた時。
本当に何を言ってるのかが分からなかったなぁ。
海外の言語で喋っては日本語訳を話してくれていた。
海外の本とかもお土産に買ってくれたから、それを読んだりして勉強していた。
「難しい言葉とかは分からないけど、単語単語は分かるから、今のも褒めてくれたってことしか理解できなかったんだけど……」
『凄すぎます!!神作品も書けて多言語を理解してるなんて、イケメンです!!』
またフィンランド語が炸裂する。
今度は早口過ぎて何を言ったのかが分からなかった。
「【アマツアツメ】先生は……「ルミ」へ?」
「ルミ……って呼んでください。私の……名前」
「ルミちゃん……でいいかな?」
「はぅ!」
胸を抑えて赤面するルミちゃん。
ルミって、確かフィンランド語で『雪』だったような。いい名前だなぁ。
足をバタバタさせている。
ちょっと店員さんがこっちを見てくる……。
しょうがない、なにか頼もう。
「すいません、注文を良いですか」
そういえば何も頼んでなかったな。
「エスプレッソ・コンパナを。ルミちゃんは?」
「え、、えと、私も……同じのを」
「かしこまりました。少々お待ちください」
『良かったんですか?』
「もちろん、年下のルミちゃんに奢らせるなんて男として恥ずかしいからね」
『心もイケメン!!』
嬉しそうで良かった。
天雷くんのアドバイスが生かされたよ。
『教訓1.女子に奢らせるな。死にたいのか??』
こんな教訓使われることないと思っていたけど、覚えておいてよかった。
「お待たせしました」
運ばれてきたコーヒーを1口飲む。
エスプレッソ・コンパナは、エスプレッソにホイップクリームを乗せた甘いコーヒーだ。
「おいしい……」
良かった。ルミちゃんも気に入ってくれたみたいだ。
ーーーーーーーー
コーヒーを飲んで一息つくと、僕らは店を出ることにした。
長居するのもダメかなと思ったからだ。
僕らが向かったのは日陰がある公園だった。
そこの屋根付きのベンチに対面で座る。
「これが……主人公の『ハルキ』です」
おぉ!!まさに僕が想像してた『ハルキ』そのものだ。
「すっごいよルミちゃん!」
「えへへ」
「僕の想像してた『ハルキ』だよ!!」
『ずっと描いてましたから。2年前から』
Twitterのダイレクトメッセージに送られてくる。
ごめんさすがにそれはルミちゃんに悪い……。
ちゃんと運営からのメールとか見れば良かった。
「これは……期待できるよ。ありがとう」
『はい!私の魂を賭けて死ぬ気で完成させます』
「そこまで気を張らなくても大丈夫だから!!」
この子なら安心してイラストを任せれそうだな。
良かった。
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