告白されたけど振られたので趣味に打ち込んでみた

薄明

困惑した夜と変化

『ごめん、やっぱり好きじゃなかったみたい』


高校2年の夏。僕こと桜井サクライ晴人ハルトはLIME上で勝手に告白されて、勝手に振られた。


相手は、同じく2年の柊ひいらぎまゆ。

男子に人気の美少女だ。


一応、保育園の時に一緒だったようだけど、小・中学校では別々だったから、僕は覚えていなかった。


さて、告白された経緯を2行で説明すると、夏休みに入ったある日にコミュニケーションアプリのLIMEライムで僕は彼女に告白された。


しかし、その1週間後に前述の通りの文章が送られてきた。


「え…?」


『ごめん。自分で考えたけど、やっぱり晴人くんは付き合うってほどでもない』


「そんな、僕は柊さんのことを好きだったのに!」


『晴人くんは多分友達としての好きだと思うよ。まぁ、罰ゲームだったと思って諦めてよ。これからも友達としてよろしくね』


との返信だった。


「はは、笑えないよ……」


『ごめんね、最初は好きだと思っていたよ?でも、晴人くんは私に釣り合うかな?って考えてみたら、やっぱり無理かなって』


「そんな理由で……僕の返事は?」


『そんな理由ってそれを晴人くんが言っていいの!?私が何人も告白されてるのを知ってるよね!!』


ああ、知っているよ。僕の親友も振られてたからね。


よく知ってるよ。


そんな柊さんが僕のことを好きだって言ってくれたことはとても嬉しかったんだよ。


『あ、それで3年の三上先輩から告白されてOKしちゃった』


「ぇえ!?」


『そういうことだから、きっぱり諦めてよ。それに、私が晴人くんに告白したこともなかったことにしてよ。バレたら色々と面倒くさいし。じゃあね』


「ちょ、ちょっと!」


いくらメッセージを送っても、返信どころか既読すらもつくことはなかった。


「は、はは。やっぱり僕みたいなやつに彼女なんてできるわけがないんだ……」


スマートフォンを放り出して、僕は項垂れる。


「はぁ、こんなことになるなら告白なんてしないで欲しかったのに」


柊さんの性格上、次に会った時でも普通に話しかけてくると思う。


でも僕は……?

話せるわけが無い。だって、好きじゃないと言われたから。


「今は夏休みだから、しばらく会わなくていいことだけが幸いだよ」


僕は部活動にも入ってないし、外で遊ぶ予定も今のところないから、外に出歩くなんてしない。


「こういう時は、趣味に打ち込んだ方がいいよね」


親友が言っていた。


『いいか晴人。振られたら別の彼女を探すか、好きなことに打ち込む方が、早く忘れられるんだぜ』


付き合うなんてないと思っていたけど、今は親友に感謝してる。


今度アイスでも奢ろうかな。


「じゃあ、今日は久しぶりに小説とか音楽とか投稿してみようかな。時間はいっぱいあるんだし」


僕はやりたいことはいっぱいあったから、夏休み中は、趣味に打ち込むことに決めた。


ストックしていた小説をネットの【小説家になっちゃお!】通称【なっちゃお】に投稿しよう。


「こうなったらやけだ!このままストックを増やしていこう」


僕は、時間も忘れて趣味に打ち込んだ。


~~~

「ふぅ、やっぱり趣味に打ち込んだ方が楽しいな」


最初は柊さんのことが気になって落ち込んではいたけど、いざ趣味に打ち込んだら、忘れていた。


元々、創作が好きだった僕は、中学生の頃から小説を書いたり、音楽を作ったりしていた。


自己満足ってことで、なっちゃおには小説を投稿していたけど、完結してからは高校受験とかで忙しかったこともあって、しばらくサイトすらも開かなかった。


でも今回、久しぶりに開いて、アカウントが残っていた事に安心した。


「よし、1日1話ずつの1ヶ月分は投稿できた!」


予約投稿とかを済ませて、一息着いた。


「もう夜の2時だ。早かったなぁ」


眠くなったし、今日は休もう。

明日は久しぶりに音楽を作ってみようかな。


僕が眠る頃には、柊さんのことなんて頭の隅にもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る