双極の風

ほんわか

第1話「運命の出会い」

月明かりも届かない、深い森の中。そこは、影が濃く渦巻き、不気味な気配が漂う場所だった。黒いマントを纏った青年、ハヤテは森の中を黙々と歩いていた。彼の背後には黒い霧が揺れ、まるで生きているかのようにうごめいている。


「この気配……また虚影獣か。」


ハヤテはため息をつき、立ち止まった。彼の前方で、不自然に木々が揺れ始める。そして闇の中から姿を現したのは、黒い霧で形作られた巨大な獣だった。赤く輝く双眸が不気味にハヤテを睨みつけている。


「鬱陶しいな……とっとと片付けるか。」


ハヤテは手を前に突き出し、影を操って漆黒の槍を生成した。虚影獣が咆哮しながら飛びかかってくる。


その瞬間――眩い光が森を包んだ。


「はっ!」


誰かの叫び声と共に、虚影獣の身体が白い光に貫かれる。眩しい光の中から、一人の青年が現れた。金髪に穏やかな表情、そして手には光で作られた剣を握っている。


「危ないところだったね。君、大丈夫?」


彼はハヤテに向かって微笑みかけた。しかし、ハヤテは彼を睨みつける。


「……誰だ、お前?」


「僕の名前はカズマ。この辺りで虚影獣が暴れてるって聞いて、退治しに来たんだ。」


カズマの穏やかな声が、森の冷たい空気に溶け込む。しかし、ハヤテは警戒を解かない。


「余計なことをするな。この森のことは俺が守っている。」


「それなら、力を合わせればもっと早く解決できるんじゃないかな?」


「……ふざけるな。俺は一人で十分だ。」


ハヤテは影の槍を構えたまま虚影獣に向き直る。だが、虚影獣はその隙を突くように動き始め、巨大な触手をカズマに向けて放った。


「危ない!」


ハヤテが叫ぶより早く、カズマは光の盾を生成し、触手を受け止める。


「ありがとう。でも、これくらいなら大丈夫だよ。」


カズマが軽く微笑みながら光の剣を振り、虚影獣の触手を切り落とす。その行動に、ハヤテは思わず目を細めた。


「……お前、ただの光使いじゃないな。」


「それはお互い様だよ。君だって、普通の人間じゃないだろう?」


カズマは虚影獣に向き直り、剣を構える。ハヤテも影の槍を強く握りしめた。


「いいだろう。一時的に協力してやる。」


「それで十分さ!」



---


虚影獣との戦い


二人は息の合った攻撃で虚影獣を追い詰めていった。カズマの光が虚影獣の闇を封じ、ハヤテの影がそれを的確に攻撃する。


虚影獣は最後の咆哮を上げ、黒い霧となって消え去った。森に静寂が戻る。


「ふぅ……なんとか倒せたね。」


カズマが剣を消しながら息をつく。しかし、ハヤテはカズマに冷たい視線を向けたままだ。


「今回だけだ。次は手を貸さない。」


「君がそう言うなら仕方ないね。でも……君の力、すごく頼りになるよ。」


カズマの笑顔が妙に暖かく、ハヤテは少し戸惑ったような表情を浮かべる。


「……勝手にしろ。」


そう言い残して、ハヤテは闇に溶け込むように姿を消した。



---


新たな影


その夜、森のさらに奥深くで、新たな虚影獣が目覚めようとしていた。その姿は先ほどのものとは比べ物にならないほど巨大で、闇の力を大きく吸収していた。


そしてその影は、ハヤテとカズマの前に再び現れることになる――。

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