【童話】お餅を膨らむまで焼く理由

班白扇

お餅をふくらむまで焼く理由

 あるところに、だいたい神様みたいなおじいさんとおばあさんがいて、お餅を焼いていた。おばあさんが、


「さぁ、おじいさんや。そこの円形のお餅を焼こう」


と言うと、おじいさんの手に取られた円形のお餅が大声を上げて、


「ぼくは円形じゃない! 球形だ!」


と言った。ところが「球形」というのはあまりに堅い言葉づかいだったので、おばあさんはこの円形のお餅をさとして、


「『丸い』でどうだい。そうしたら『球形』の意味もあるだろう?」


と言い、結局円形のお餅は「丸い」お餅と呼ばれるようになった。


 この話を、四角形のお餅がそばで聴いていた。そこで四角形のお餅はおじいさんに「四角形」と呼ばれた時、こう言った。


「俺のかどは四つじゃなくて八つあるんだぞ! このジジイ!」


ただのお餅からジジイと呼ばれたおじいさんは怒って、四角形のお餅を丸いお餅と一緒に七輪に載せた。四角形のお餅は、


「炭火なんて、全然へっちゃらだい!」


としばらく言っていたが、七輪はどんどん熱くなり、お餅もどんどん熱くなってくる。そしてまず、隣で焼かれていた丸いお餅がぷっくりと膨らんだ。それを見た四角形のお餅はすっかり怖くなった。


「乱暴なことを言ってごめんなさい! だから俺をここから下ろして!」


しかしおじいさんは大変怒っていたので四角形のお餅をそのままにし、そしてついに、四角形のお餅も割れてぷっくりと膨らんでしまった。その様子を見て、おじいさんは満足げに頷いた。


「ふん。これでもはや四角でもないじゃろう」


 こういうわけで、お餅はぷっくり膨らむまで焼くようになったのである。

 めでたしめでたし(?)。

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【童話】お餅を膨らむまで焼く理由 班白扇 @Hakusen_Harumaki

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