第10話  幼馴染の妹襲来


「やっほー! こー兄! 久しぶり!会いたかったよー!」



 昨日突然、あおいが今日家に来るという連絡が来た。


 しばらくすると、あおいがエントランスから晃輔たちの部屋に連絡が入った。

 あおいがエントランスを抜けて、数分すると玄関に設置されているインターホンが鳴った。


 あおいが来たのだと思い、晃輔が玄関を空けると、あおいが晃輔に向かっていきなりダイブしてきた。



「うぐっ……」


「久しぶりだねー!」



 晃輔に抱きついてきたあおいは、晃輔に向かって満面の笑顔で告げる。



「ひ、久しぶりだな……」



 晃輔は、いきなりダイブしてきたあおいに、顔を引きつらせながらそう答える。



「だよねー。せっかく、同じ高校入ったのに全然会えないんだもん……」



 そう言って、あおいは上目遣いでこっちを見つめてくる。

 流石、ななの妹だけあって美少女だ。同級生がこれをやられたらイチコロなのではないかと思う。



 あおいはななの一つ下の妹で、同じ高校に入学している。

 昔から何かと懐かれていたのは記憶にあるが、まさか、今も尚、こうして抱き着かれるとは思わなかった。


 そもそも、一つしか学年が違わないのだから、もう十分身体は大人なわけで、同じ様に、中身も成長してほしい。



「こら! あおい!」



 ななが晃輔の後ろで、すごい顔をして晃輔とあおいを見ている。



「あ! お姉ちゃん! やっほー!」



 あおいはななを見つけると、晃輔の時と同じ様に、思いっきりななに抱き着いた。


 あおいに抱き着かれたななは、抱き着かれたその反動で倒れそうになったが、ギリギリで持ち堪える。



「ちょっと! あおい!」


「なに?」



 ななの結構強めといえる呼びかけに、あおいは全く物怖じせず答える。



「何? じゃないわよ! 少し、落ち着きなさい!」


「? すごく落ち着いてるよ?」



 そう言って、あおいは満面の笑顔のまま首をこてんと傾げる。



「…………」



 瞬間、あおいに抱き着かれたままのななは、そのままの状態で、あおいを見つめたまま停止してしまう。



「どこが?」



 あおいの、ななに対するそれに晃輔は思わず素でツッコんでしまう。



「えー! 酷いなー! 落ち着いてるよ!」



 そう言って、あおいはまるで抗議をするように顔ふくらましている。



「だから、どこがだよ……」



 晃輔は、呆れながらあおいにそう告げる。ななに抱き着きながら言っても、説得力がないと思う。



「それよりさぁー、荷物とか今日来るんでしょ?」



 あおいは突然話を急転換させ、晃輔とななにそう尋ねる。



「そうよ」



 まるで、金縛りにあったように停止していたななは、いつの間にか復活し、あおいの質問に即答する。


 順応が早いな、とななとあおい……二人のやり取りを見ていた晃輔は、思わずそう思ってしまった。



「じゃあ、それまでゲームしよ!」



 あおいが 突然そんなことを言うものだから、晃輔たちは困惑してしまう。




「家にはゲームなんてないぞ」



 まだ、テレビなどはこの家に無い。そういうのも含めて、今日届く予定のはずだ。



「違うよ! これだよ!」



 そう言ってあおいが鞄から取り出したのは、懐かしのトランプだった。



「久々にみんな会ったんだし! みんなで遊ぼっ!」



 そう言いながら、あおいはてくてくとリビングに向かい、トランプの準備を始めた。




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