第8話  はじめての夜


「はぁ……」



 なながお風呂に入った事を確認した晃輔は、思わずため息をついた。


 晃輔はなながお風呂に入っている間に、食べ終わった食器を洗い、今日買ったものの整理をしていた。


 今日は買ったものが多いため、整理には時間が掛かりそうだった。



 取り敢えず、ななの私用のものには手を出せないので、放置しておく。


 ななの分のものはできるだけ見ないように、触れないように気を付けながら、自分の分と共用のものを取り出し、適当に分けていく。



 晃輔が仕分けの作業をしている途中で、お風呂の方から水しぶきがあがるような、そんな音が聞こえたので、心配になって声をかけたが、どうやらななには聞こえてないみたいだった。




 晃輔の作業が終わり、しばらくすると、なながお風呂からあがってきた。


 寝室に向かおうとしたら、上がってきたななとエンカウントしてしまった。



「っ……!」



 風呂上がりとわかるように、袖や開いたえりぐりから覗く肌は、全体的に火照ったように内側からほんのりと色付いている。


 それに、とても可愛いパジャマを着ていたのもあり幼馴染の風呂上がりの姿にはとても破壊力があった。


 思わず、頬が内側から熱くなってしまうほどに。



「お風呂どーぞー」


「おぅ……サンキュ」



 晃輔の頬の紅潮には気づいてないのか、ななはそう告げるとリビングに向かっていった。



「はぁ……早く入ろう」



 晃輔のお風呂は短い方いため、すぐに上がって来れる。

 問題はここからだ、と晃輔は思う。



 何が問題なのかというと、それはベット……寝室の問題である。


 嶺の仕業か両家の意向なのかはわからないが、寝室のベットが、何故か、ダブルベッドなのである。



 このベットで二人で寝ろ、という意味なのだろうか。


 そもそも、このマンション本当に備え付けのベッドなのか。


 母親たちが予め買って置いたのではないか。



 両家の親の性格を考えれば有り得そうだなと思った。


 最悪、今度問いただしてみればいい。



「はぁ、どうしよ……」


「どうしたの?」



 寝室に入ってきたななが、不思議そうな顔をして晃輔に聞いてくる。



「いや、ベッドの問題。これ、二人で寝ろってことでしょ」


「そうね。これしかないんだから。諦めなさい。それとも、私と一緒に寝るのは嫌?」



 晃輔は、思わずドキッとしてしまう。

 ななは、子犬みたいな上目遣いでこっちを見てくる。


 これはこれで学校の時とのギャップが凄い。



「えーと、嫌じゃあないんだけどさ……ななはいいのか?」


「別にいいって言ってるじゃない」


「そうじゃなくて、ほら、俺たち高校生の男女だし、俺がもし狼になったらどうすんだよ。ってそういう話なんだけど……」



 晃輔は自分の顔に手をやると、自分の顔が赤くなってきてるのがわかった。


 ちらりとななの方を盗み見ると、ななも顔が真っ赤にさせて晃輔を見ていた。



「と、とにかく! そういうわけだから、どうしよって思ってる!」


「……もう! 寝るしかないでしょ! まだ二十二時過ぎだけど、私は疲れたから寝るから!」


「えぇ……超強引……まだ、問題なにも解決してないんだけど」


「もう、諦めなさい……あんたが私を襲わなきゃいいだけなんだし。ただし、万が一のことを考えて、お互い距離を空けること! いいわね!?」


「おぅ……」



 ななは耳まで真っ赤にして叫んでいる。

 ななも相当恥ずかしいのだろう。



 小さい頃は一緒に寝たことがあったから、大丈夫だって、そういうわけではない。


 今はお互い成長してるし、付き合ってもいない高校生の男女が同じベッドに寝るのは色々と問題がある気がする。



 結局、晃輔たちは今日の買い物でお互い疲れたからという最もらしい理由とななのわがままで、今日はもう寝ることになったのだった。


 晃輔が時計を見ると、まだ二十二時半を過ぎぐらいだった。



「おやすみなさい」


「おやすみ……」



 すぐ隣に、普段無いはずの温もりがある。


 これは、絶対眠れるはずがないな、そう思った晃輔だった。


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