陽キャ女子と趣味を教え合う師弟カップルになった

あおぞら@書籍9月3日発売

第1話 あたしと付き合わん?

「———ねぇ、あたしと付き合わん?」


 放課後の教室。

 正しく最高のシチュエーションといえる場所でそう宣うのは、2年連続同じクラスで陽キャである中月なかつき陽菜乃ひなの

 見た目は言わずもがな良く、コミュ力がバケモノ級で、偶にポンコツになる以外特段性格が悪いとも聞いたことない。

 そして何より目に付くのは、学校でもトップクラスに目立っているであろうホワイトブロンドの髪。

 手入れが面倒とか教室で言っていたから、おそらく染めているのだと思う。



 ———ってのはどうでも良くて。



「…………は? 付き合う? 誰が、誰と?」


 俺は混乱し過ぎて余計なことを考える思考を一時中断して口を開く。

 だが、口を衝いて出るのは、動揺に支配された途切れ途切れの言葉だった。


 いや、どうしたんだよコイツ急に。

 マジで意味分からないんですけど。


 何て呆気に取られた俺に、中月が何言ってんのコイツ、的な冷めた目で見つめてくる。


「誰がって……そんなのあたしと中野に決まってんじゃん」

「そんな仲良かったっけ、俺ら?」

「……まぁ?」

「そこはお世辞でも『うん』って言えよ、虚しくなるじゃんか」


 てかそんなに仲良いとは自分でも思ってないくせに、あたしと付き合おうなどと宣っているのか、目の前の女は。

 陽キャはフッ軽とは思っていたが、恋愛についてもフッ軽らしい。


 そして俺———中野なかの悠生ゆうせいは、陽キャ陰キャという言葉を使ってる時点で、陰キャだと分かるだろう。本物の陽キャはこんな言葉を使わないし気にしないって聞いたことある。

 だが、流石にアニメやラノベのような友達ゼロのボッチというわけでもない。


 最近の陰キャは普通に友達もいるし、こうして陽キャともそれなりに話せるのだ。

 ただ少しインドアで、周りの自分を見る目が気になるだけ。

 ついでに言うと、大人数とか陽キャ特有のノリがちょっと苦手かもしれない。


「……んで、何で急に付き合おうなんて言ったんだよ。まさか……俺が好きなん?」

「え、全然」

「コイツぶん殴ってやりたい」


 清々しいほどの綺麗な笑顔で否定してくる中月の姿に思わず手が出そうになる。

 すると、中月が有り得ないと言わんばかりに俺をジトーっとした目で見てきた。


「うわー……女を殴る男はモテないよ? まぁちょっとクズっぽい方があたしは好きだけど」

「矛盾が凄いな……いや違う、話が逸れてんだよ。そもそも何で付き合うって話になるんだ? 俺からしたら、どうして好きでもない相手と付き合おうとするのかさっぱりなんだけど」

「めんどっ、細かっ。そんなだからモテないんじゃない?」

「やかましい。モテてないのは言われなくても知ってんの」


 何て、自分で言っていて悲しくなり、俺が何とも複雑な表情を浮かべていると。



「———あたし、オタクの趣味が気になってんの、最近」



 そんな中々陽キャから聞けないような言葉が飛んできた。

 思わず俺が中月の顔を見るも……別に茶化している様子は見受けられない。


「……マジで?」

「マジ。アニメとか、ゲームとかやってみたい。音ゲーとか」

「……マジか……」


 青天の霹靂とでも言うべきか。

 まさかこんな陽キャ女子からオタクの趣味が気になるなんて言葉を聞くとは、夢にも思わなかった。


 何てあまりの衝撃に、俺がなんと言えば良いのか分からなくなっていると。



「———中野、最近ファッションに興味あるらしいじゃん。あたしなら教えてあげるよ?」

「!?」



 ど、どうしてそのことを……!?

 友達にちょっと言ったことがある程度なんですけど……!?


「え、何でびっくりしてんの? マジウケる」

「うけねーよ! 何で俺が色気付き出したって知ってんだよ!?」

「席前後じゃん、ふつーに聞こえるって。あんたらが偶に話してる下ネタも聞こえてるかんね?」

「ヤバい、ちょっと死にたくなってきた」


 色々と死にたい。

 今年1年分が収まりきらないくらいの羞恥が一気に襲い掛かってきたんですけど。


 俺はあまりの恥ずかしさに中月から顔を背けて今直ぐ帰って引き籠りになりたい欲に駆られるが。


「? 何恥ずかしがってんの? 別に色気付くくらい良くない? あたしは寧ろ自分を変えようとしてるって分かって好感持ったんだけど」

「ならいいや」

「でも下ネタは誰も居ない所で言って。普通にキモいから」

「…………はい」


 俺は上げた後に放たれる、陽キャ女子からの冷たい視線に大ダメージを受けながら消え入るような声で返事をする。普通に消えたい。


「それで、付き合うん? どうせ彼女いないっしょ?」

「……まぁ居ないけど」

「じゃあ良いじゃん。別に好き同士で付き合わないといけないなんてルールないんだしさ」


 ……それは、確かに。

 てか別に俺にデメリットがあるわけでもないし……。


「あたしもしょーみ、友達より恋人の方が何かと都合がいいし。彼氏の趣味に合わせてる的な?」

「それは言わなくて良くない? いきなり現実見せられたんですけど」

「ぶはっ、マジウケる」

「ウケねぇよ」


 俺は呑気にゲラる彼女を一睨みしたのち……小さく息を吐いた。



「……じゃあ、お願いします」

「ん、よろ〜」


 

 こうして、俺はクラスの陽キャ女子と付き合うことになった。







「あ、イ◯スタ上げていい? ついでにB◯Realの通知来たらそれも」

「あ、うん」


 俺が無知すぎて写真撮るのに5分以上掛かった。

 B◯Realはなんか知らんけど良いらしい。


————————————————————————

 近況ノートで多かった組み合わせの2つ目です。

 モチベ維持に繋がるので、☆☆☆とフォローお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る