君と会えた夏、そして春
雪見心理
prologue
気づいた時にはもう引き返せなかった。
頭のどこかで、逃げればいい、と声がする。
逃げ出せたらどれだけ楽か。逃げ出して、死んでしまったとしても、その方がきっと楽に違いない。
いっそ逃げ出してしまおうか。
でも、これは
女は近づいてくる。
女は近づいてくる。
女は近づいてくる。
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〇〇新聞・1992(平成4)年08月02日(日)東京朝刊
《21面》「行方不明の人の所在捜し 警視庁が相談を受け付け 月末まで」
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警視庁はお盆を迎える今月を所在不明者の捜査強化月間として、水難事故や自殺者の身元割り出しを進めている。
身元がわからない死体は、データの保管期間である過去十五年間だけでも千五百二十九体。昨年一年間では、事件や事故に遭った二百八十体のうち百十四体の身元がわからないままになっている。これまでの例では、不明者の顔や体の特徴のほか、自宅などに残っていた指紋との照合や着物についていた洗濯ネーム、手術の跡などから身元が判明するケースが多いという。
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✕✕新聞・1998(平成10)年4月14日(火)東京朝刊
《35面》「行方不明者の二割 未発覚の事件に巻き込まれている可能性」
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大学の調査結果も出ている。同大法学部で刑事系専門の松井隆助教授(四二)によれば、「痴呆症の高齢者は別論、若者は単なる家族関係の乱れ、コミュニケーションの齟齬が原因となっているケースが多い。それ以外の行方不明者では仕事の関係上自殺を企図していることもある。しかし、警察により発見されない一割程度は犯罪に巻き込まれているおそれが高く、人身売買や殺人事件の被害者となっていると推測される」という。
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◇◇新聞・1998(平成10)年11月28日(土)東京朝刊
《3面》「迷惑メールや掲示板中傷 発信特定へ第三者機関 郵政省方針」
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庁の菅沼広志警部(三四)によれば、「近年、電子掲示板で中傷や犯罪の予告するなど、犯罪を助長する側面が着目されている一方で、こうした掲示板に行方不明者と関連のありうる人物を目撃した情報などが書きこまれることがある」という。
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◇◇新聞・1997(平成9)年6月20日(金)東京朝刊
《31面》「女性会社員行方不明に 会社から退勤途中か」
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埼玉県浦和市在住で東都日酸社(東京)社員飯村幸子さん(三三)が十三日夜退勤途中から行方がわからなくなっている。埼玉県警が捜査したところ、飯村さんの所有していた自転車が、自宅のある浦和から一五キロ離れた与野市内の荒川沿いで十七日に見つかっていたと十九日にわかった。同県警では何らかの事件に巻き込まれた可能性もあるとみて調べている。
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