テークアウト
雪見心理
第1話
ぼやけた白色電燈の下でわたしは眼を
わたしも緋佳里も南日本の出身で東京それも
中学第二学年次に同じクラスとなった緋佳里の家へ出向くことはままあった。高校は別のところに進学したが大学の入学式で偶合してもうじき大学三年になるという時期になっても会っていたのである。緋佳里は誰かに面倒をかけてやるのが好きな性分だからわたしのことも中学生の時分より何かと気にかけており当のわたしからすればさして喜ばしいこととも言えぬのだけれど緋佳里には逆らえぬ事情があったからただ任せるにするほかなかった。黒々と光っている長髪を手で梳いて湿った唇を開ける。
「ピッツァ、今から焼くからちょっと待ってよね」
洗面台で手を洗いながら空返事をした。そうしてドア枠に
すなわち
地上に揚げられた深海魚の如く突出した眼球には血脈が張り巡らされており周囲の一挙手一投足を一太刀に一網打尽せんと常にこれを動かしている男。やや開いた口の先に黄色い歯を立ち並ばせて卒倒必至の奇臭を漏らしている男。金属のチェーンが絡まった安物の布切れを果たして服と呼ぶことが通念上ありうるのか見解が分れそうな身なりをしている男。生来の悪逆極まりない性質と口臭で大学ではもはや大気のような扱いとなり「あれは
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