異世界で、凡夫と決別して最強を目指す!
六畳仙人
第1話 プロローグ
地球がある宇宙とは異なる宇宙。
その宇宙には、魔力と呼ばれる不思議なエネルギーに満ちた星があった。
そして、星には、魔力を用いて法則や概念でさえも歪ませる魔法という特別な力が存在していた。
この魔法を駆使し、星では長きにわたって、人間、エルフやドワーフといった
そんな星で、人間たちは魔人族や亜人族から凡人族と蔑まれながらも、長きにわたる戦いの末に勝ち取った「人類圏」と呼ばれる、神々が作った結界で囲まれた安住の地で平和に暮らしていた。
これは、そんな星に転生した、一人の男の新たな人生の物語である。
ただし、その男は少し……いやかなり強く「凡夫」という言葉にコンプレックスを持っていた。
◼️◼️◼️
転生者である少年には夢があった。
それは、生まれ直したこの異世界で強くなること。
少年は、憧れていた前世の記憶にあるアニメや漫画の最強キャラたち、本で読んだ神話の大英雄たちのように特別で最強の存在と同じように、あるいは彼ら以上に強い存在になることを目指していた。
唯一無二、頂点、選ばれし者、無双の英雄、力の象徴、究極の一、最強の存在……そんな言葉が似あう存在に少年はなりたかった。
同時に、少年は何故か生まれながらにして、「凡夫」という言葉と、その言葉で表現されるような存在全てを酷く嫌悪し忌避していた。
最初、少年は何故己が凡夫な存在を忌避するのか考えた。そして、およそ察した。
おそらく、それは前世の自分がどうしようもない凡夫な存在だったからだろう、と。
少年が覚えている限り、前世の少年は漫画やアニメが好きな日本で暮らすごく普通の高校生——地球という星に70億人ほどいた人間の内の名もない一人にすぎなかった。
運動神経、テストの点数、容姿、振る舞い……そのどれをとっても特に何の取柄のない平均程度の普通な存在だった。
当然、クラスでイジメが起きた時も巻き込まれないように愛想笑いを浮かべて見て見ぬふりをしていた。
帰り道で名も知らぬ誰かが不良に囲まれているのを目にしても、関わらないように無視をしていた。
そんな人一人助けられない、いや、そもそも助けに動かない、そして特に何も成せない存在——まさに凡夫という言葉を体現するような存在だった。
少年の前世の記憶は曖昧だ。前世の自分の名前も、どうやって死んだのか、師の間際——最期の時に何を思ったのか、それさえも未だ思い出せていない。
ただ、前世の特別な力もなく、特別な運命も定められていなかった少年なら、若くして不運であっさり死んでしまう可能性は十分に考えられた。
しかし、少年は奇跡的に新たな生命としてこの異世界に転生を果たすという有り得ない幸運を手にすることができた。
転生したのは魔法という特別な力があり、
そして、人間、亜人族、魔人族が争い続ける戦乱の時代に生まれることができた。
魔力と魔法のことを知った時、少年はとても興奮した。
その特別な力を極めたら、今度こそ凡夫ではない特別な存在になれると思ったからだ。
人類の敵がいて、争いが続いているということは、特別な英雄が生まれる下地が整っていることを意味する。
乱世でこそ、強大な力は意味を持ち、英雄や救世主と呼ばれる象徴的な存在が必要とされ、生まれるのだ。
ゆえに、頑張って強くなり、魔人族相手に無双すれば、自分も憧れの存在に——力ある特別な存在になれると確信したからだ。
その野望を果たすためにも強くなる必要がある。なにせ、少年はこの世界では簡単に死ぬつもりはない。絶対に前世のような凡夫として死にたくもない。せめて死ぬなら凡夫と完全に決別できてからだと決めていたからだ。
目指すは、漫画やアニメの最強キャラたち、あるいは神話に登場する大英雄たちのような唯一無二の特別な存在。怪物に襲われても、天災に遭っても、どんな理不尽に巻き込まれても乗り越えられる最強の存在になることだ。
そうした思いから、少年は大体一才半頃——最低限この世界の言葉を覚えてコミュニケーションをとれるようになった頃から魔力操作と魔法の習得に力を注いだ。
強くなりたかった少年は、まず母から魔力を増やす方法を聞いていた。
魔力はこの星——異世界中に満ちていて、この世界の人間は呼吸をする時に空気と一緒に体内に魔力を取り込み、あるいは体内で魔力を生成して循環させることで自身の肉体の強化をしたり、魔法の行使に利用することができる。
そして、この世界では扱える魔力量が強さの大きな指標となる。
また、魔力は使えば使うほど扱える量が増えていく。手っ取り早く増やす方法は、ひたすら魔法を使い続けること。また、魔法の発動に必要なのは魔法で発動させたい現象の確固たるイメージを持つことだと。
話を聞いた少年は早速魔力を使って魔法を試した。
少年は魔法のイメージに自信があった。前世で何度も目にしたアニメや漫画の超常現象や必殺技が脳裏に鮮明に焼きついていたからだ。
そして、実際に試してみると魔力操作の習得も順調だった。
魔力を感じ取るのには少し苦労したものの、前世のアニメや漫画で見た特殊なエネルギーを扱う修行を片っ端から試したおかげで上手くコツを掴めたからだ。
それからは、ひたすらに魔法を使い鍛え続けた。
魔法も使えば使うほどすぐに上達していった。
ちょっと血反吐を吐くぐらい幾度も使い続ければ、魔法のイメージはより鮮明に脳に刻まれ、同時に魔力の扱いも自然と身体に染み付く。
そうして、炎を、水を、風を、雷を、大地を操る基礎的な魔法を習得し、さらには母から教えてもらった重力を操作して空を飛ぶ魔法といった難易度の高い魔法もいくつか使えるようになった。
少年は実感していた。
転生者である自分はこの異世界でなら今度こそ特別な存在になれると。
この調子で頑張っていけば、偉業を成し遂げる英雄に、人々を助けられる救世主に、そしてこの素晴らしい世界の頂に立つ「最強」の存在になるのだって夢ではないのだと。
そんな時だった。
少年——アメジアはその後の人生を大きく変えることになる特別な運命に出会った。
————————————————————
感想や☆を貰えると嬉しいです!
応援よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます