第6話 心から心へ

「新横浜、何時発の新幹線?」

「18時だから、あと二時間くらいね」

「そろそろ、行く?」

「そうね。新横浜まで30分くらいかかるから、行こうかな」

「ここは、払わせて」

「ごちそうさま」


カフェのテラスから見る景色は、絶景です。私が写真を撮っていると

「このテラス、深呼吸したくなるね」

「気持ちいいよね」

「展覧会、来てくれて、うれしかった。ありがとう」

「こちらこそ、展覧会も横浜も二日間、楽しかった」


夢のような二日間が、もうすぐ終わろうとしています。


文通相手の手が、偶然私の手にふれます。

その時、30年間ずっと伝えたかった思いは伝わったと思います。

手から手へ、心から心へ。


30年の月日が流れても、変わらないものがあります。人と人とのつながり、縁はずっと続いています。


そして、これからもそれは変わることなく続いていきます。命果てるまでずっと。


「新横浜駅まで送るよ」

「ありがとう」


あと少しだけ、一緒にいたいと思います。あと少しだけ、夢のつづきを。


異人館から急な坂道を下っているとき、ころびそうになります。受けとめてくれた文通相手。

「ありがとう」

「大丈夫?」

「少し疲れているのかな」

「どこかで休もう。少し待って」

文通相手がスマホで探してくれた喫茶店に行くことにします。気がつくと、手をつないで歩いてくれています。

「もうすぐ着くよ」

私がうなずくと、微笑み返してくれます。


「ここかな」

おしゃれなパティスリーです。かわいらしいケーキがたくさん並んでいます。ケーキがおいしそうだと思っていると

「ケーキ、おいしそうだね。良かった」

カフェスペースは、奥にあります。

予約してあったそうで、案内されます。

「ここで、ひと休みしてから新横浜に行こう」

「そうするわ。すてきなカフェね」

私たちは、紅茶といちごのショートケーキを注文します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る