ぜんまい仕掛けの傀儡王は復讐の時を待つ~転生魔王の魔王国再建記~
加賀谷 依胡
プロローグ
小さな幸せだった。
大事な家族だと思っていた。
ある日、ある者がこう言った。
“あなたは王のために動いているのですよ”
王というのはなんのことだろう?
動いてる? 生きてるということ?
昔から不思議なことがあった。僕の背中には小さな穴がある。
この穴はなに? と訊くと、ある者はこう教えてくれた。
“必要なときに回すためのものです”
回すって、何を?
他の人の背中にも穴があるの? と訊くと、母様はこう仰った。
『お前は特別だからね』
そう、僕は特別なんだ。
なんの変哲もない、平穏な毎日。
ただ、それだけで幸せだった。
[雨の星・プルヴィア暦 三五八年]
[ミセル大陸において、世界に確変を生じさせる小さな事件が起こった]
僕は信じていた。ただ、信じていたかった。
だから、信じなかった。
『ようやくお前が役に立つときが来た』
《 動けない……? 》
『ちょうどよく止まってくれたわ』
《 父様……母様……どうしてそんな、冷たい目で僕を見るの……? 》
――許さない。
【雨の星・プルヴィア暦 三五八年 秋雨の月】
【ソル・フォルマ王国 国王暗殺事件 発生】
『もうこの鍵は必要ないわね』
《 ……僕は……家族じゃ、なかったの…… 》
――許さない。
【ソル・フォルマ王国 聖騎士星団 壊滅】
【同国 宮廷魔法隊 壊滅】
『さあ、私のために死んでくれ』
《 ……僕は……王のために…… 》
許さない。
[ソル・フォルマ王国には切り札があった]
『最後に私の役に立てることを光栄に思うがいい』
僕は……。
――ユルサナイ。
――すべて壊してやる。
「お前のその願い、この私が聞き入れよう」
だれ……? 誰でもいいか……。
僕はもう、動けないみたい。
「いいだろう。ぜんまい仕掛けの傀儡王よ。すべて壊してやろうぞ」
上手くいくかな……。
「この厄災の魔王に任せておれ。お前はゆっくり眠るといい」
――ありがとう……おやすみ、王様……。
[雨の星・プルヴィア暦 三五八年]
ソル・フォルマ王国はミセル大陸の東方の支配を企んでいた。小国の連なる東方を侵略し、すべての国の掌握を目論んだのだ。もとより大国であったソル・フォルマ王国にとって、その進軍は大した労力ではなかった。
小国は次々に白旗を挙げ、ソル・フォルマ王国は領地の拡大を着実に進めていく。この抗争が各地で悲哀と怨恨、貧困と飢餓を生じさせていた。
そうして募った負の精根は世界の概念に干渉し、雨の星・プルヴィア暦の根幹を揺るがそうとしていた。
同時期、ソル・フォルマ王国にて国王暗殺事件が巻き起こる。それは、ミセル大陸において小さな事件であった。だが、雨の星・プルヴィア暦においては、ソル・フォルマ王国国王ダフニスの生存は予定外であった。
予定調和を崩したのは、一体の小さな傀儡だった。
その小さな事件が、世界に確変をもたらした。
その
変異した世界の僅かな歪みは、世界樹の庭にとって無視できない事象である。
それが、ぜんまい仕掛けの傀儡王に厄災魔王の魂を呼び込んだ。
【ぜんまい仕掛けの傀儡 スクリプトール】
【世界の確変を経て 王の器 に進化】
【進化を経て 厄災魔王 の魂を獲得】
【魂の獲得により 傀儡王 への進化が確定】
[雨の星・プルヴィア暦 三五八年 秋雨の月]
[その小さな変異が、世界にとって大きな確変となる]
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