私が死んだからって「彼のことは私に任せて!」とか勝手に言わないでよ!?

アニッキーブラッザー

第1話 任せたよ

 私の名前は高坂美奈こうさかみな

 何の変哲もない一般家庭に生まれ、今年十六歳になったばかりのJK。



 生きがいは娯楽。




 最推しVtuberの配信見たりグッズ買ったりイベント行ったりの推し活


 好きなWeb小説を追いかけて書籍化もコミカライズ化も応援


 友達になったゲーマーと徹夜でゲーム


 初めてコスプレやった時も楽しかった~




 そんな遊んでばっかの人生にも更なる幸せ青春イベントまであったのさ。



 なんと、マジ良き彼氏もデキちゃった。



 もう全てが満たされ過ぎて楽しすぎる人生に、私は毎日が充実していた。






 だけど、なんやかんやで死んじゃった……







 病気で……



「美奈……まだ……まだ僕は君と……ダメだ、逝くな……美奈、戻れ! 戻ってくれ、美奈!」


 

 まだ十代の女の子なんだから、やりたいことはいっぱいあった。


「姉さん! いや! 姉さん! お願い、やだ! いやぁ!」

「美奈! だめよ、まだ! まだ! しっかりするのよ! 美奈!」

「何をしているのです! ワタクシのライバルが、病などで……こんな……逝くなど、ひっぐ、許しませんわぁ!」

「あんた……何してんのよ、根性で生きなさいよ!」


 最後まで私の周りで泣いてくれている妹や友達。


「う、うう、美奈……どうしてお前が……」

「いやぁ……こんなのぉ、どうして……」


 お父さんとお母さん。そして……


「何故君が……誰よりも明るく、誰よりも……人生を楽しく……そんな君を僕は……ウソだ……こんなの……こんなことあっていいはずがない!」


 生まれて初めてできた彼氏。

 頭も良くて、かっこよくて、空手やってたから逞しくて、熱くて、優等生で学校でも生徒副会長。真面目で堅物だったりすることろもあるけど、それが空回ったり天然だったり意外とPONだったり、そして照れたりすると可愛くて、……だから当然女の子にも人気があった。


「ごめんねぇ……リューマ君……なんか、こんなんなっちゃって……」


 それが、私の彼氏のリューマ君。

 そんな彼が私みたいなフツーの女の子に告白してくれた時は、すっごく嬉しかった。

 美人な妹の方じゃなくって私が好きなの?! って聞き返したりしたりするぐらいね。


「謝るな! 君は何も悪くない! 何も悪いことをしていないんだ! 君に悪いことなどあるはずがない! だから……だからお願いだ……僕にできることなら何でもする……だから……」

 

 これからいっぱい思い出作りたかった。

 もっとイチャイチャラブラブしたかった。

 手を繋いで、三回目のデートぐらいでキスをして、それで……でも、神様はイジワルというか、今までの楽しすぎて満たされ過ぎた人生の帳尻を合わせようとしてきた。


「美奈……頼む、まだ……まだ……いくな……」


 愛しの彼氏でもあるリューマくんが泣いている。

 こんな素敵な彼氏を悲しませるなんて彼女失格だよね。

 こんな素敵な彼氏ができたという分不相応な幸せを得ちゃったから、こんなに早く死んじゃうのかな?

 でも、一方で私はこんなにリューマくん、それに皆にも愛されてたんだなって実感できて、ちょっぴり満たされた気持ちもある。


 そして、死んでこれからどうなるか分からないっていうのに、私は最後の最後までちょっと悩んだ。


 リューマくんが私の所為で不幸を抱えたまま生きて欲しくない。

 私なんかを本気で好きになってくれた男の子。幸せになって欲しいよ。


 でも、そんなリューマくんが私以外の女の子と結ばれて幸せになるっていうのも、ちょっと嫌かなって思っちゃう。

 だって、私の彼氏だもん。

 私を忘れて他の子とイチャイチャして、私ができなかったことを他の女の子とするのかな~? って考えると嫌な気持ちになっちゃった。


 でも、死んじゃう私には関係ない。だから私は最後に「いい子」をアピールするかのように、リューマくんに最後の言葉を伝えた。



「泣くのダメだよ……リューマくん……君の人生……あしひっぱりたくないもん……私のことさ……わすれちゃって、また素敵な彼女作っちゃってよ」


「できるわけないだろ! そんなこと言うな! 僕は君のことがずっと……これからもずっと……たとえ君に何があったとしても―――」


 

 あ~もう、好き……好き……大好き。


「大丈夫……いいから、ね? 君は幸せに……」

「美奈! 言うな、そんなこと! 美奈! 僕は、僕は君を―――」


 だから、心配だよ……こんなに私を想ってくれる君が……私が死んじゃったら……お願い……彼が立ち直るまで……みんな……


「みんなも……私の彼氏……『たのんだ』よ?」


 これから色々と落ち込んだりして、つらい気持ちになるリューマくんを『友達として』支えて欲しいってお願いをした。


「姉さん! 何言ってるの! 姉さんッ! 先輩には姉さんが――」

「美奈! そんな悲しいことを言わないでくれる! 彼にはあなたが―――」

「美奈さん、何を言っていますの!? リューマさんには皆さんが―――」

「バカ! ふざけたこと言うとぶっとばすわよ! こいつにはあんたが―――」


 そしてそこで私の人生が終わり、意識も途絶え――――










 ……なんか、意識だけは途絶えなかった。












『いんや~……ま~さか幽霊になっちゃうとは~……幽霊って本当に居たんだな~』












――あとがき――

過去短編で書いたものを改変して連載してみました。

よろしくお願いします

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