『家出少女をスムーズにお家に返す方法』

宮本 賢治

第1話『家出少女をスムーズにお家に返す方法』

「明けましておめでとうございます」

新年のご挨拶。

ニコ、ネイビーのスウェット上下、ダボダボ。ベッド上。

ぼく、グレーのスウェット、床に敷いた布団の上。

ニコの横で、ユキが真似して頭を下げてるのがかわいい。

賢明な読者のみなさんはすでにお気づきかもしれない。

そう、大晦日から、ぼくの部屋に家出少女のニコが住みついてる。

大晦日に柴犬の子犬を拾い、潔癖症のママと大喧嘩の末、ずぶ濡れで我が家にたどり着き、年越しそばを食べて就寝。

現在、寝起きで新年のご挨拶をした次第である。

「ニコ、お家に帰らないの?」

「何言ってるの? お兄ちゃん、ニコは木村家の長女。そして、ユキは次女だよ」

ニコがユキを抱き上げ、顔を並べ仲良し姉妹をアピールしている。

ニコが拾ってきた子犬はかわい過ぎるため、家で飼うことにした。

雪が降る夜にやって来た真っ白な柴犬。名前は『ユキ』

父さんと母さんに事情を話すと、そのかわいさから二つ返事でOKとなった。

階段下から母さんの声が聞こえた。

「ニコちゃん、お餅いくつ〜?」

「2つで〜す!」

そう叫んで、ユキを抱いて、ニコは部屋を出て行った。

ニコが両親に新年の挨拶をしているのが聞こえる。

そういうとこはホント律儀だ。


お雑煮を食べて、部屋を上がる。

ニコはもちろんユキを抱いている。

ニコのスウェットのお尻のポッケからはドラえもんが顔を出してる。

また、ベッドの上を占拠した姉妹2人。チョコンとお行儀良くお座りするユキに寝そべったニコが、ドラえもんの形をしたポチ袋を見せつけている。

「いいでしょ〜♪ お姉ちゃん、お年玉もらっちゃった!」

ニコは毎年、家の両親からお年玉をもらっている。

ぼくもニコのご両親からいただいている。

「ね〜、ニコ。 そろそろ帰ったら」

「やだ、帰んない!」

駄々っ子ニコちゃんは年越しでも健在だった。

「トム、1人になりたいの?

オナニーしたいなら、手伝ってあげよっか?」

「バカッ!!」

ぼくは顔が熱くなった。

手伝ってもらったら、それはオナニーでは無い。

第一、ユキの教育に良くない!

「あ!!!」

急にニコが大声を上げた。

ニコがスウェットを脱ぎ出す。

薄いブルーのブラ丸出し。

ダイナマイトボディ。

わ!っと思ったら、投げられたスウェットで前が見えない。そのスウェットを払い除けたら、今度は次に飛んできたズボンがスッポリと頭にハマった。

あ〜、前が見えない!

ズボンも払い除けたら、ニコはデニムを履き終え、パーカーの裾を下ろした。形の良いおへその白い肌が見えなくなった、残念。

「大事な用事思い出したから帰るね」

言って、ニコはユキを抱き上げて、ユキのおデコにキス。

そして、ユキをぼくに手渡して、ぼくのほっぺたにキスした。

「じゃあね♪」

ダウンジャケットを羽織るニコ、今日はボーイッシュなスタイル。タンタンと階段を降りて行った。

階下で両親に挨拶している。

母さんの、も〜帰っちゃうのと残念な声が聞こえる。

音かしなくなったことで、ニコがいなくなったことがわかった。

疾風怒濤だった。

急にニコがいなくなって、ユキが不安そうな顔をしている。

「大丈夫だよ、ユキ。お姉ちゃんは明日、きっとユキに会いにきてくれるよ。

お姉ちゃんはユキのこと、大好きだからね」

ゆっくりと優しく伝えると、ユキは安心して、笑ってるみたい。

賢い良い子だ。

お正月に家出少女を家に帰したい時、お年玉の話題を振れば、状況は簡単に好転する。

間違い無い。

ニコはお年玉をもらうためにお家に帰った。

「ユキ、きみのお姉ちゃんは打算的だね」

そう言うと、ユキは首を傾げた。

そんなユキがかわいくて、ぼくはユキを優しく抱きしめた。

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