今夜、この想いを溶かして。

春日たくみ

 今夜、彼から連絡があるとは思っていた。

 彼――智哉は、私の幼なじみだ。

 私の姉に、小学生の頃から片思いをしている、私の親友でもある。 

 私はずっと、そんな智哉に片思いをしている。大学四年生になった今も。

「もしもし……知佳。さっき、加恋に気持ちを伝えた」

「そっか……やっぱり、そうしたんだね」

 私は自室の窓越しに見える月を見ながら言った。

「今から少しでいいから会えないか? もちろん、俺が近くまで行くから」

「いいよ。じゃあ、いつもの公園でもいい?」

「ああ、今から向かう」

「わかった。私もすぐ出るから」

 智哉が電話を切った後、私はスタンドミラーの前に立ち、全身をくまなくチェックした。姉のように、長身ですらっとしているわけでもないし、顔の作りだって、姉のように華があるわけではない。

 でも、私には、姉よりも、智哉を近くで見てきた自負がある。

 まあ、それだけしかないのかもしれないけれど。

 私は、いつもより時間をかけてメイクした自分に向け、がんばれ、と心の中で声をかけて家を出た。

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