剣者瀉血媾
弓矢を掴み取った目の前の私の分身の腕は、太い血管が浮きだっており、力が入っているのが分かった。彼女は掴み取った弓矢にさらに力を加える。すると、弓矢はバキッと音を立てて、真っ二つに折れた。折れた弓矢は指から弾かれて、空中を舞った。
彼女は弓矢を左手で持ったまま、体をこっちに向け、私に鋭い眼光を浴びせる。彼女は肩を大きく動かしながら、呼吸していた。彼女の顔では汗がだらだらと流れており、顎から血の混じった汗がぽたぽたと落ちていた。彼女は左手に持った弓矢を後ろに投げ捨てると、こちらに近づいて来た。
彼女は左足を怪我しているようで、左足をかばいながら、歩いていた。私は彼女の気迫に押されて、後ろへ1歩後ずさり、コンビニの中に入った。しかし、彼女は怪我をした足でも距離を詰めてきた。
そして、彼女は私の右肩を掴んだ。私は肩の傷の痛みと彼女の強い握力を同時に感じた。彼女は息をしていた口を大きく開けた。彼女の口を大きく開けた顔が腹をすかせた肉食動物のように見えて、私は食べられると本気で思った。
私は抵抗のすべもないので、覚悟を決めて、目をつむる。
すると、目を閉じてからしばらくすると、弓矢の風切り音聞こえてくる。また、弓矢が飛んできたようだ。風切り音がこちらに近づいてくると、今度は金属と金属がぶつかり合うような音が聞こえた。
私が状況を確認するために、目を開くと、彼女が私の右肩を掴んだまま、体を斜め後ろに向けて、刀を後ろに振り抜いた後の彼女の姿があった。どうやら、刀で弓矢を弾いたらしい。
そして、息を切らした彼女は初めて口を開いた。
「ここじゃあ、邪魔が多いか。」
彼女が私の声でぼそりとその言葉を呟いた後、彼女は周りを見回した。コンビニの中を詳しく見回し、コンビニの入った所の奥にあるトイレの入り口で、目を止めた。そして、目線を私に移した。私は怯えながら、その目線を受け取っていると、彼女は刀を腰につけている鞘にしまった。
そして、彼女は右肩に置いた左手を外し、私の脇に両手を差し込んだ。私は驚く前に、彼女は私の脇に入れた両手で胴体を掴んで、上へ持ち上げた。そして、少し後ろに私の体を投げた。私は体中にふわりとした浮遊感を感じた。
そして、視界はぐるぐるとジェットコースターのように変わり、さいごにはコンビニの床が段々と近づいていた。私は目を閉じると、お腹の辺りで、彼女の肩にぶつかる。そして、私の頭が振られて、顔が何か柔らかいものにぶつかった。
目を開けると、それは紺色の制服のスカートを近くで見たような視界だった。しばらく考えて、これが彼女の後ろのスカートが逆さに映っていることに気が付く。そして、私は工事現場の資材を肩で運ぶように、彼女の肩の上に抱きかかえられていると分かった。
そして、私がずり下りないように、足の裏に彼女の手が回された感触が伝わってきた。あまり人に触られない所なので、少しこそばゆい。
彼女は右足で地面を蹴り出した。私は動き出した慣性に負けて、もう一度、顔に彼女の腰の感触が伝わる。彼女が地面を蹴り出すたびに、私の顔は彼女のスカートの上でバウンドした。彼女は使えない左足を使わずに、右足でけんけんをするように進んでいた。
そして、彼女のスカートで数回バウンドし、頭がぐらぐらと揺れていた頃、彼女の動きが止まった。そして、私は揺れる視界で場所を確認しようとする前に、彼女が私の足に回した手を使って、私の体を手繰り寄せた。
手繰り寄せられた私はゆっくりと彼女の背中を進んでいった。そして、顔が肩に達すると、足が地面についていた。シェイクされた頭のせいで、少しよろけてしまったが、何とか立つことができた。
そして、揺れる視界の中を何とか戻して、今の場所を確認すると、男女のトイレが分かれる出口だった。彼女は私が上手く立てたことが分かると、手を離して、私から離れた。
「ここなら、弓矢も通らないだろう。」
彼女はトイレの前のコンクリートの壁を触った。確かに、ここなら、割れる窓ガラスと違って、簡単には弓矢は通らないだろう。
彼女はコンクリートを撫でた後に、私の目をじっくりと見つめた。そして、私へ近づいて来る。私は後ずさる暇もなく、彼女に両肩を掴まれる。私は肩に手が置かれたことで、焦ってしまう。
さっきの続きだ。私はそう思った。
そして、体のバランスを崩して、後ろへよろめく。私の肩を掴んだ彼女もそれにつられて、こけてしまう。私はそのまま背中で地面を打ち付けた。背中の痛みを感じて、目をつむる。
私が痛みがじわじわと感じながら、目を開けると、私と同じ彼女の顔が目の前に来ていた。彼女の口から放たれる荒々しい吐息が顔に当たっていた。彼女は口からよだれを垂らして、もう我慢ならないと言わんばかりの顔だった。
おそらく、被捕食者が死を覚悟する感覚はこんな感じなのだろう。
彼女は喉を鳴らして、唾を飲み込むと、私の肩を地面に押し付け、私が抵抗できないようにする。
彼女はそのまま、口を大きく開けた。
私はまぶたを目を閉じる前に、歯を出してかぶり付こうとする彼女の顔が見えた。
すると、私の肩の辺りから彼女の吐息と歯形が感じる。私は肩の肉を食いちぎられると覚悟した。
しかし、噛まれるというよりは、吸われているような感触だ。
彼女は唇と舌を動かして、私の肩の傷から流れる血を舐めとっているようだった。肩の傷でぬめぬめと動く彼女の唇と舌は、未知の軟体動物のようで、気持ちの悪さを感じた。
しかし、不思議と拒絶反応はなかった。
肩の傷は舐めとられて、痛みを増し、熱くなってきた。この体の熱さは傷の痛みだけじゃないような気がする。彼女の手は私の肩をがっちりと抑え込んでいる。私の体は全く動きそうにない。
彼女は私などお構いなしに、ゴクゴクと喉を鳴らして、私の血を飲んでいく。
そして、しばらく私の血を飲んだ彼女は口を私の肩から離した。息も忘れて、夢中で血を舐めていたのか、血を舐める前よりも息を激しくしていた。
彼女は口の端から流れ出る血を手の甲で拭き取った。そして、私のお腹の上から立ち上がる。彼女は私を股にかけたまま、両足を使って飛び上がった。そして、何回か飛び跳ねる。
私は飛び跳ねる彼女の姿を見て、不思議なことに気が付く。
彼女の左足が治っているのだ。
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