第19話



 少しでもデクのことを知ろうと思い、色々聞いた。


 どうやら、思っていたよりも“ヤバいやつ”だっていうことがわかってきた。


 親父が高い金出して雇ったんだから、その時点で“普通じゃない”ことはわかってる。


 でも、疑問だったんだ。


 ボディーガードを付けるにしても、なんでこんな若いやつなんだろうって。


 どうせだったら、渋くてイカしたおじさんが良かった。


 この道10年みたいな、ハードボイルドなおじさんがさ?

 


 「エージェント…なんて言ったっけ?」


 「エージェント・フィクサーだ」


 「その職業だけど、あんたみたいな若い奴もたくさんいるの?」


 「…割合としては多くはない。同い年に1人いるがな。同じ孤児院で育った子が」


 「ふーん」



 エージェント・フィクサー。


 詳しくは教えてくれなかったけど、高い金で仕事を請け負ってくれる国際的な企業団体があるらしい。


 彼はそこの一員で、戦争に行っていたのも、あくまで“派遣契約で“だそうだった。



 「いくら貰ったの?」


 「契約の話か?それについては俺は知らない。あくまで、俺が所属している会社との取引によるものだ。俺自身の給与は、基本的に固定だ」


 「戦争にまで派遣されておいて?」


 「当然、“賞与”というものはつく。だが、それ以前に俺には利用できるカードがある」


 「カード??」


 「クレジットカードだ」



 そう言うと、彼はポケットからカードホルダーを取り出した。


 金属製のシンプルな作りで、柄も何もない。 


 その中から、黒光りするクレジットカードが。



 「ブラックカード!?」


 「基本的に、食料の調達やホテルの予約などもこれで行っている。任務遂行中に関しては、全て経費で落とせるんだ」



 はあああ!?


 まじで??


 どんだけ羽振りのいい会社なのよ…


 なんでも買えるじゃん。


 親父も確か持ってた。


 現金なんて、基本持ち合わせてなくて。



 「好きなもん買えんじゃん」


 「そうだが、必要最低限なものしか買わない。必要であれば車や家も買うが、そうでない場合の方がほとんどだ」


 「毎日美味しいもん食べてんでしょ。私だったら毎日焼肉か寿司に行くわ」


 「好きなもの…か。そうしたいところだが、基本的にサプリメントと完全食を嗜んでいる。規則正しい食生活こそ、仕事を遂行する上で重要なことだからな」


 「完全食とな??」


 「俺の会社から支給されているパウダーだ。水と混ぜるだけで、すぐに必要な栄養素を摂取することができる」



 そんなもん毎日食ってんの?!


 パウダーって、完全にプロテインじゃん。


 常に一週間分はストックしているらしい。


 サプリメントについては、例えばビタミンとか鉄分とか、1日に消費したカロリーと栄養素の分析を専用の電子機器で行ったあと、不足しがちな物質を取り入れるために常備しているそうだ。


 どこぞのアスリート並みのストイックさだな…


 絶対真似できないわ。

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