第8話



 校長室を出た後、渋々教室に戻った。


 教室に戻ると、憮然とした表情のまま1限目の授業を受けてるアイツがいた。


 何何食わぬ顔して授業受けてんの…?



 っていうか、凛!?


 なんでそんなヤツと会話してんのよ!


 それと、誰!?


 私の席勝手に移動したの!



 「あ、おかえり〜」


 「おかえり〜じゃないよ。あんた正気??」


 「なにが?」


 「なにがじゃなくて、よくそんな得体の知れないヤツと会話できるね」


 「いやさ、今盛り上がってたのよ」


 「…なんで?」


 「アメリカ帰りなだけあって、英語がペラペラでさ」



 そういえば1限目は英語だったな。


 …私だって多少は喋れるし。


 アメリカにいたんだったら、そりゃ少しくらい喋れもするでしょうよ。



 「誰よ。勝手に移動したのは…」


 「いいじゃん、席ぐらい。後ろに座るだけで、危害は加えないって言ってるし」


 「加えられる可能性があることに驚きだよ。逆に」


 「あはは。確かに」



 なんでこんなヤツが後ろに…


 真後ろにいる必要なんてないと思うんだが?


 ボディーガードだかなんだか知らないが、私は頼んだ覚えもないし、護られる筋合いもない。



 「ちょっとあんた!」


 「どうした?」


 「どうしたじゃない!誰に頼まれたの?!」


 「誰、とは?」


 「護衛よ護衛!さっき校長から聞いてきたんだけど!」


 「…ふむ。では話が早い」


 「じゃなくて、今すぐその「仕事」を降りてくれない??」


 「なぜだ?」


 「迷惑だからよ!自分の身くらい自分で守れる!」


 「それはいささか疑問が残るな」


 「はあ?バカにしてんの?!」


 「第一キミは女の子だろう?武術の基礎も磨いていないと見える。もし襲われたらどうするつもりだ?」


 「返り討ちにしてやるわよ!」


 「どうやって?」


 「…どうもこうも、正面からぶん殴って懲らしめてやるだけよ!」


 「ほう。では、試しに俺の頬を“ぶん殴ってみる”といい。それで本当に解決できるのなら、俺も喜んでこの仕事を降りよう」



 …ほう



 …面白い



 彼は立ち上がり、これ見よがしに頰を近づけてきた。



 殴っていいの?


 殴っていいんだったら殴るけど、どうなっても知らないよ?



 「ちょっと、アズサ!?」


 「何?コイツが言ってきたんだよ?殴っていいって」



 袖を捲り、肩を回す。


 悪いけど、加減はしないよ?


 こう見えても空手を齧ってたんだ。


 そこらへんのか弱い女子だとは思わない方がいい。

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