第5話 たとえパズっても私の日常は変わらな……割と変わり始めた

 あれから数日が過ぎた。

『深淵』でかえでさんを助けてからのスマホに未だにミュート済みとはいえ、通知が鳴り止まない。

(どうしてこうなった……)

 本当にどうして……。

そう思いながら教室の机でうつ伏せに寝ていると1人の少女が話しかけてきた。

「やぁやぁ、一躍時の人になったじゃないか。渚」

「そんな他人事みたいに言うなよ。アリス」

「そりゃあ、他人事だからな〜」

 ふてくされてる私を他所に、アリスは煽るようにドヤ顔してくる。

 【アリス=テスタロット】。

透き通るような綺麗なブロンドのショートヘアに青い瞳の少女。

イギリス生まれの日本育ち。

私とは家族単位での幼なじみ。

 まあまあ、私とアリスの両親付き合いは掘り下げればいろいろあるのだけれど……、今はまだ気軽に話せる私のプロデューサー兼マネージャーの関係だと覚えてくれると嬉しい。

「それで、アリスから見てこれは一過性のブームで終わりそう?」

「うーん……、それは今後次第ってところ」

「まあ、そうだよね……」

「今はとりあえず、いつも通り『深淵』でソロ配信してればいいよ」

「アリスがそういうなら信じるよ」

「信じてくれるのはありがたいけど……、あまり私を過信しないでほしいな……」

「えっ?。アリスだから過信してるのだけど」

「あぁーもー。(いつもそう言って……)」

「ん?。なんか言った?」

「なんでもない!」

 そう言って顔を赤くして教室を出ていった。

ん〜、何がいけなかったのだろうか……。

小一時間ほど悩んだが分からなかった。


 【アスティア迷宮学園】。

第三次世界大戦以降の新宿郊外に新設された迷宮学校の一つ。

迷宮配信の黎明期に創設し、今も入学倍率の高い。

 学科は2つ。

迷宮攻略と配信、それに伴う訓練とノウハウの共有を中心とした迷宮科。

その迷宮科の生徒たちをプロデュースしたり、マネジメントしたり、武具の整備・調整したり、ありとあらゆるサポートをする技巧科。


 私は迷宮科で、アリスは技巧科である。

だから過信してるってところもあるのだけど、アリスの言う通り過信が禁物だって言うのもその通りであるのは間違いない……。

間違いないのだが……。

「はぁ……、どうしたものか……」

「あら、なにか悩み事かしら。岩波渚いわなみなぎさ

「(うわでた……)」

 思わず小声で言ってしまった。

双葉咲希ふたばさき】。

 綺麗な桜色のロングヘアに青い瞳の少女。

アスティア迷宮学園の生徒会長にしてS級探索者で知らない人はいない程の迷宮配信者でもある。

 そして、度々配信でも現実リアルでも私と遭遇するファン兼ストーカー。

 まだ『深淵』攻略配信には本格的に参戦してないものの、実力は『深淵』級と言われている。

今は『深淵』攻略配信のためのパーティメンバーの育成してるとかなんとか……。(アリス情報)

 それと【美海みう】という妹がいて、一緒に攻略配信してるとか……。(アリス情報)


 あれ……、私の情報ソースって結構アリス依存してる!?。

まあ、そういう凄い人なので、なんで底辺で零細な私が彼女に声をかけれるのか分からない。

本当に。

「んっん"っ。それでどうかしら、岩波渚。今度私たち・・・と一緒に『深淵』の迷宮攻略しないかしら?」

「お断りします……」

 思わず食い気味に即答してしまった……。

私が双葉姉妹の共演コラボとか、パーティに参加とか、探索者組合ボーダーギルドに入るとかは流石にハードが高い。

「やはり駄目ですか」

「ごめんなさい……」

「まあ、いいですわ。ダメ元でお願いしましたもの」

「は、はぁ……」

「ですが、諦めませんわ。岩波渚。いつかあなたを私たちのギルドに入れて見せますわ」

 そう言って双葉会長は去っていった。

いつもこれなので特に感情はないです……。



☆@☆@☆



 放課後、私はいつものように新宿の【シンジュク・ダンジョン】の管理棟に来ていた。

「はい。迷宮の探索配信ですね」

「お願いします」

「手続きしますね」

 管理棟の受付で迷宮探索許可証のデータを探索者免許証に入れたカードを受け取って、迷宮の出入口に向かっていたところ……。

「あっ、渚ちゃん」

「えっ、楓さん」

 なんと、だいぶイメチェンした楓さんと再開した。

…………。いや、なんで!?。

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