ラトの真相

柧夜side




千秋の気配は感じれど、姿は無い。


そのせいか、凄く胸騒ぎがする。


翡翠の地の奴らは古代生物の


集まりでもあるから嫌いじゃ。


古代生物といっても有名な彼奴らでは無い。


三葉虫とかアンモナイトとかの


名前だっただろうか?


そういうんじゃなくて翡翠の地の奴らは


簡単に言うと『呪生物』とでも


表す方が相応しい。


「失う前に見つけないと...」


そんな声は1人でに木霊せず残るだけ。


翡翠の地の奴らは呪生物の名前通りの奴らで、


人間を呪い、殺して魂を奪う。


そう。


彼奴らの生きるために必要とする糧は


『人間の魂』


妾らが身代わりになりたいところじゃが、


口には合わないらしい。




ふと森の奥から千秋の気配がした。


だが、翡翠の地の奴らの気配も共にしていた。






千秋side




暑いなと思い、


目が覚めると俺とラトを囲むようにして


沢山の動物たちが居た。


変な夢を見たような気がするが


なんだったんだろうか。


そんなことを思っていると


「千秋、起きたかニャ?」


と声をかけられる。


「そろそろ赤と青の地の奴らの仲が悪くなった原因でも話すとするかニャ」


寝ぼけ眼を擦りながらも


「うん...」


と返事する。








「昔、季節は9つあったニャ」


「9つも!?」


今は春夏秋冬で4つ。


他の5つはなんだ?


「春夏秋冬の他にその間の季節、それと全てに値する季節で9つニャ」


全てに値する季節?


「そして全ての季節に " 守りの龍 " というものもいたニャ」


「それと仲が悪くなった原因のことと何か関わりがあるのか?」


そう俺が問いたのにも関わらず、


ラトは無視して話を続けた。


「そしてもう1つ、季節があったニャ」


「それは『黒の季節』と呼ばれていたニャ」


「邪悪な瘴気が辺りを囲み、やがて朽ちていく、そんな季節ニャ」


季節じゃなくて悪の地じゃん。


そう思いながらも話を聞く。


「紅の地の女帝は全てに値する神竜『透の龍』を慕い、藍の地の帝王は紅の地と藍の地を結ぶ役割をする藤の地の龍『藤の龍』を慕っていたニャ」


紫?


あの時、金魚が紫色に見えたのと


何か関わりがありそうだな。


「そんなある日、紅と藍以外の龍は死に至ったニャ」


「え?死んだ...?」


「黒の瘴気によってやられたのニャ」


「黒に勝てるのは透だけニャ」


じゃあなんで...


「だが透はニンゲンに捕らえられ、殺されたニャ」


ラトはそう言いながら俺に獣のような


目を向けた。


あの時の猛獣のように。


人間...


確かに龍なんて伝説上の生き物を見つけたら


解剖でもしたくなるだろう。


「だから紅の地と藍の地は互いのせいだと喧嘩してる馬鹿な奴らだニャ...」


「それに藤の地が無い今、ずっと季節は秋のままニャ」


だからか?


最近秋が長いと思ってたんだよな。


「さて、次は海洋生物でも見に行くかニャ?」


そうラトが言ったのとほぼ同時に


「千秋!!見つけたぞ!!」


という柧夜の声が森に響いた。


遠くには姿も見える。


「柧夜?どうしてここに...」


「遅いから何かあったんじゃないかと──」


急に柧夜の口の動きが止まった。


止まった原因は俺がラトに


寄りかかっていたからだろうか。

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