繋がる藍色

「え」


「なんじゃ?」


「いや...」


「あまり見るでない」


「恥ずかしいじゃろ...」


俺が何を見ているのか気づいたのだろうか。


頬を赤く染めた後、尻尾を浴衣の中に隠した。


「そういえば青の地はどんな景色なんだ?」


話を逸らすために、


何気なく気になってた " 青の地 " について


問う。


「知って何を得られる?」


雰囲気が変わった。


怒っているようでもあり、


不気味そうな空気を漂わせながら。


「単純に知りたかったんだけど...」


一応、嘘は言っていないはず。


「なら、いいんじゃが...」


疑うような眼差しで見ないで欲しい。






「青の地は全てが青いのじゃ」


「全て?」


「例えば?」


「草木も青いし、空も建物も全てが青い」


全て...?


「あと、赤の地より草木が死んでいるものが多いと思うぞ」


死んでる?


枯れてるってことか?


もしかして...冬?


こっちは紅葉とかが綺麗だけど、


あっちは雪の結晶とかなのか?


悪魔でこれは予想の範囲内に過ぎないが。


「急に黙り込んでなんじゃ?」


歪な顔をしながらそう問いかける。


「別に」


と素っ気なく答えると


「昔から変わらんな」


と小さく呟いた。


その時、スケッチブックに何かが映し出された。


「は..?」


俺がそう驚いていると


「お、金魚が青の地に着いたようじゃ」


と言う。


確かに映し出されているのは全ての色が


真っ青な場所だった。


真っ青というより少しキラキラしているようにも見えるが。


「なんじゃ?こいつは」


そう言いながら柧夜はスケッチブックに映る


女の子を指差した。


「人間...」


そう。


その女の子も俺と同じ人間だったのだ。


それと、もう1人映っていたが、


その人は人間には見えない。


その時、


《じゃあ報酬の件も無しだな》


という男性の声がスケッチブックから聞こえた。


報酬?


何の話だろうか。


「ふむ...」


「音声も聞こえるとは使い勝手がいい魚じゃな...」


不思議がってる俺の真横では柧夜が不気味な笑みを浮かべる。


ふと、女の子と目が合った。


と思った瞬間、


《これは...?》


《金魚だろ》


《どう見ても》


そんな声が聞こえる。


気づかれてしまったようだ。


「なぁ、これ本当にあっち側は藍色に見えてんのか?」


急に不安になり、柧夜にそう尋ねる。


「当たり前じゃ」


「さては...妾の力を舐めとるのか?」


「そういう訳じゃないけどさ...」


だって明らかに藤色だしな...




そんなことを考えていると、


またもやスケッチブック...


いや、青の地の奴らの声が聞こえる。


《ねぇ寒珋、》


《何?》


《これ何色に見える?》


《何って...》


《青だろ?》


そんな話し声。


まさかこの女の子も藤色に見えてるとか...


そんなわけないか...


《それより女帝のことだが───》


《ストーップ!!》


女帝?


まさかあっちもなんか企んでるとか?


横目で柧夜を見るも、


相変わらず不気味な笑顔を浮かべているだけだった。

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