「魚」であることは確かで

「さて、本題に入るとしよう」


口元で開いていた扇子をパチンと閉じながら


そう言う。


「本題ですか?」


「この先に青の帝王が居る」


「そいつを殺せ」


殺..?


そんな物騒なこと出来るわけ──


「と、言いたいところじゃが」


「それは取止めだ」


「御主は『魚』の絵を描いてくれ」


魚?


なんで魚?


というかもっと具体的に言って欲しかったな。


鯉とか鯛とかさ...


まぁいいや。


適当に金魚でも描いとくか。


そう思いながら俺はスケッチブックに


金魚を描く。


すると俺が描いた金魚の絵がスケッチブック


から飛び出し、空を泳いだ。


「は、?」


「何これ..」


俺が驚いている傍で


「金魚か..」


「気に入った」


と誇らしげにしている女帝。


というかこの魚、金魚じゃない気が...


まるで金魚のような。


鯉のような。


でも魚であることは明らかで。


「あとこれも気に入った」


そう言って女帝がその魚の周りに


沢山の鏡を出現させた。


「こっちは妾視点」


「こっちは青の奴ら視点じゃ」


そう言いながら淡々と説明する。




女帝が言うこっち側の鏡から


見た魚の色は " 紅色 "




青の帝王側から見た魚の色は " 藍色 "




だけど俺には " 藤色 "に見えた。




「紅色..?藤色じゃなくて、?」


呟くようにそう言う。


きっと気づかれてないだろう。


そう思っていたのに


「藤色?」


「御主、藤色に見えるのか?!」


声を荒らげ、そう尋ねられる。


「あー...」


「気のせいだったぽいです」


今ここで本当のことを言ったら


何されるか分からないし隠しておいた方がいい。


そう思った俺は咄嗟に『気のせいだった』


という嘘をついた。


「ふむ...」


そう言いながら女帝は狐のような目で


俺をじっと見つめた。


なんだか気づかれていそうだが、


きっと大丈夫だろうと心の中で自分に


言い聞かせた。

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