うちの学園の氷姫は、僕の許嫁?!
天風 繋
第1話
僕の名前は、
『陽太』と書いて、『ようた』ではなく『はるた』だ。
と言っても、昔から『ようた』と呼ばれることが多い。
もう訂正もめんどくさいので、『はるた』と呼ばれるのを諦めている。
高校も2年になると変わり映えのしない毎日にうんざりする。
2年目となれば、この満員電車にも…慣れたくない。
なんだよ、このすし詰め状態は。
押し寿司にしたって、具がはみ出るんじゃないかくらいにぎゅうぎゅう詰めなんだが?
今朝はどうしてこんなに乗っているんだ?
僕は、嘆息してから乗り込む。
都心とかなら満員電車など珍しくはないだろうが、此処は片田舎。
私鉄であり、2両編成の電車だ。
朝夕は、15分置きくらいで運行しているが日中は30分置き…つまり1時間に1本程度しか運行していない。
その為、通勤・通学ラッシュが起こるのだが正直うんざりだ。
うちの学校…いや学園は、沿線に居を構えている。
その為、駅名にも『学園駅』と言う如何にもな駅があるのだ。
現在乗り込んでいる学生のほとんどがそこで降りることになるだろう。
うちの学園は、小中高の一貫校で片田舎の子供を全部受け入れているんじゃないかと思える規模である。
大体1クラスが30人程度で、各学年に2クラスずつだとしても24クラス以上…高等部に関しては7クラスと規模が大きくなる。
学科が大きく4つに分かれているからだ。
また、高等部からは外部入学がある為人数も増える。
なので、大体1500人規模の学園である。
ちなみに学科は…。
1つは、普通科。
1つは、商業と情報処理を主にしたビジネス科。
1つは、芸術科。
そして、特進科の4つの学科が存在している。
特に、特進科は成績優秀者が多い。
僕?僕は、ビジネス科だよ。
実家が商店街の一角で飲食店を開いている為、将来はそれを生かせるようにと思っている。
だから、放課後は部活をしていないので帰って店の手伝いである。
僕は、満員電車にウンザリしながら手すりに摑まる。
この満員具合は、学園駅に着くまで続くかもしれない。
僕はぼんやりと人混みを眺める。
何も面白くはない。
こんな日に、イヤホンを忘れるとかホント終わっている。
ふむ、サラリーマンが多いな。
僕の周りには、どうも中年のサラリーマンが多い気がする。
それに、そのサラリーマン達の奥にちらちらと何かが見える。
人と人との重なりの向こうにいる人が何と無く見えた。
綺麗な銀髪の少女。
サラリーマンたちの陰で見えなくなっていたが電車の揺れで何とか見えるようになった。
でも、彼女の顔がとても強張っていて…そして恐怖に満ちていた。
僕は居ても立ってもいられず、サラリーマンの人混みを掻き分ける。
そして、少女の元に向かう。
「なにしてるんですか?」
僕は、静寂仕切っていた車内で声を上げる。
そう、彼女は複数のサラリーマンに囲まれて痴漢行為をされていたのだった。
僕は、1人の男性の手首を…握り潰した。
生まれつき指の力だけは強かったようで、僕は握力だけは強い。
まあ、他は弱いんだけど。
見た目だって、虐められっ子って感じで弱弱しいし。
「大丈夫?もう大丈夫だからね、僕がいるからね」
僕は、彼女にそう声をかける。
少女は、声を出せないほど怯えていたようで首を縦に振って頷いた。
彼女は、僕の背中に出来付いてきた。
そして、そのまま静寂が再び訪れる。
サラリーマンたちは、苦虫を嚙み締めたように苦い顔をしている。
僕の制服は、彼女の涙でぐっしょりになっている。
余程怖かったのだろう。
その後は、次の駅で彼女を取り囲んでいたサラリーマン6人と共にプラットフォームに降り、駆け付けた駅員によって彼らは連行されていった。
僕らも事情を話す為、駅長室へと向かった。
恐怖で肩を震わせている彼女の代わりに僕は事情を説明した。
どうやら、彼らは集団痴漢グループだったらしい。
ネット上で知り合い、待ち合わせをして1人の女性を囲って痴漢をする。
そんなグループだとか。
中々尻尾を掴めなかったらしい。
僕らが、解放されたのはそれから30分後。
丁度、目の前で電車は行ってしまった。
次の電車は、15分後だ。
急いでも、1限には間に合わないだろう1限
「大丈夫?えっと…」
「有難うございました。私、四条
彼女、四条 朱姫さんはビクビクしながら僕にそう答えた。
でも、お辞儀がとても綺麗でちょっと見惚れてしまった。
「僕は、杜若 陽太」
「かきつばた…はるた…さん」
四条さんは、首を傾げながら僕の事を見て来る。
「えっと、どうかした?四条さん」
「あ、いえ……あの、かきつばぁ!」
四条さんは、見事に舌を噛みまたウルウルと瞳を潤ませる。
「えっと、言い辛いよね。名前でもいいよ」
「あ、はい。陽太さんは学園の生徒さんですよね」
「うん、高等部2年だよ」
「そうなんですね、えへへ」
四条さんは、嬉しそうに微笑みながら祈る様に両手を胸の前で握る。
その屈託のない笑顔に、僕の胸は一瞬で射抜かれた。
可愛い…西洋の人形のような可愛さがある。
銀髪に、中学生くらいの小さな体躯。
愛玩動物の様にさえ思えてしまう。
痴漢してた奴らは、ロリコンだったんじゃないだろうか。
いや、この場合は僕もロリコン認定される?
え、僕は健全なはずなんだけど。
そうしていると、次の電車がプラットフォームへとやってくる。
車内は、もう閑散としていて通勤・通学ラッシュが終わったことを意味していた。
僕らは、座席に腰を下ろす。
「実は、今日から学園に通うことになっていたんです」
「え、そうなの?こんな時期に転校かぁ。初日から災難だったね」
「はい…でも、陽太さんに助けてもらって嬉しかったです…(王子様みたい)」
四条さんが、小声で何かを言っていた気がしたがよく聞こえなかった。
次の更新予定
毎週 水曜日 00:00 予定は変更される可能性があります
うちの学園の氷姫は、僕の許嫁?! 天風 繋 @amkze
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。うちの学園の氷姫は、僕の許嫁?!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます