勇者候補No.002024の冒険記録

磁石もどき

勇者候補は金欠

第1話 お使い系クエストクリア

「ありがとうね、助かったよ」

「いえ!これも勇者候補の務めですから」


クエストを終えた俺は、お婆さんのお礼の言葉は胸を暖かくした。でも、腹の虫はそれでは気がすまないようだ。


ぐぅぅぅ───


大音量で腹の音がなり、俺は固まった。いや、もしかしたら聞こえていなかったかも、そんなに淡い願いはお婆さんの優しそうな微笑みによりさっと消えていった。


「おや、お腹が空いているのかい?」

「あぁ、えっと。お掃除に夢中になって食べるの忘れちゃって」


照れ隠しに頭をわしゃわしゃとかく。依頼人のお婆さんはにっこりと微笑みながら、ふっくらとしたパンを俺の手に持たせた。


「いえ、いただくわけには」

「いいんだよ、食べないと力も湧いてこないだろう?少しでも食べて元気だして、頑張ってね勇者様」

「……!ありがとうございます!」


自分のお財布の中身を覗いた。先程の報酬の小銅貨が3枚、元から入っていた小銅貨に混ざった。非常に金欠である。パンを小さくちぎり、ゆっくりと噛み締める。久々のふっくらとしたパンは涙が出るくらいに美味しかった。

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