『笑っていれば福が来る』それデマだと言ったら笑いますか

音無 雪

笑っていれば福が来る 本当でしょうか

『笑う門には福来たる』


年末年始に良く聞かれる言の葉で御座います。


この意味を問われますと「笑っていれば良いことが舞い込んでくる」と言った解釈が多くお笑い番組の冒頭などにも使われる場面をよく見かけます。


笑っていれば福が来る 良い心がけかと思いますが



デマです。



目くじらを立てるほどでは無いと言われる方も多いかと思いますが、あえてエッセイとして書かせていただきます。




古来より新しい年を迎えるに当たりしめ縄を飾る方も多いかと存じます。


しめ縄の形も様々で御座いますが、三重県伊勢地方を中心として、しめ縄の中央に木の札を付けてある物がございます。この木札の付いたしめ縄を伊勢地方では一年中玄関先に飾る風習が御座います。



この風習についてこのような言い伝えが御座います。


――――


昔、伊勢の地を旅していた須佐之男命(スサノオノミコト)が泊まる所が無く困っていたところ、貧しいものの心豊かな蘇民将来(そみんしょうらい)という男が家に泊め、手厚いもてなしをしたそうで御座います。

須佐之男命はこれに恩を感じ


『後の世に疫病あらば、汝、蘇民将来の子孫と云いて茅の輪を持以ちて腰に付けたる人は免れなむ』


との言の葉を残し旅立ったと言い伝えられております。


現代風に言い換えれば『ここは蘇民将来の子孫の家ですよ。と書いた茅の輪を門口にかけておけば子孫代々病から神の力で守ってあげますからね』と言うことで御座います。

この言の葉を信じ茅の輪をかけた蘇民家は疫病を免れ代々栄えたという故事が御座います。


――――


伊勢地方のしめ縄には木札に「蘇民将来子孫家門」と書いてある理由で御座います。

後年になり「将門」と簡略化されましたが、平将門の乱があったことより混同されないようにと当て字にて「笑門」と変化しました。



『笑門』と書いた木札と茅の輪がかかっている家には幸福が来るのですよ。


これが本来の笑う門には福来たるで御座います。


§


私がここで知識を披露してドヤ顔をしたいわけでは御座いません。


お伝えしたいのはデマの怖さで御座います。


「笑う門には福来たる」と聞いて、意味を知らない人が勝手に「笑っていれば福が来る」と解釈しそれを広めてしまったことです。


このデマが広がっても表立って不利益を被る人はいません。しかも縁起の良さそうな良いしきたりに聞こえます。だから疑われもせずに今も当たり前のように広がっているのでしょう。

間違っていても繰り返していれば真実となるデマ


明確な損害が無いから誰も声を上げないデマ情報 これが怖いのです。



このデマが広がることで、本来の伝承された意味合いが失われました。

文化をねじ曲げたのです。

本来の意味を知る一部地域の方々が守っている伝統文化が勝手な解釈で消されようとしていること


私はこれを大罪だと感じております。


他にも同じようなことが多く起こっているように感じます。

無責任に発する言の葉が何かを傷つけ壊していること


誰かひとりでもこの怖さに気が付き、デマが広がることをご自身のところで止めていただければ嬉しく存じます。



年末にしめ縄を見て思うこと


言の葉を綴り多くに読者へ感動を伝える作者様へ


どうかこの想い届きますように


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