つま先立ちの恋には無理がある!

山野小雪

第1話  理想のタイプは大人の男性


 



 ――彼氏がほしい!

 

 私、橋本梨乃は彼氏がほしい。理想のタイプは頭が良くてしっかりとしている大人。身長は私よりも高くて、なにより私を大切にしてくれる人だ。

 

 

 大学生になってもまだ理想の男性に出会うこともなく、私は常に出会いを探していた。何人かの男性と付き合ったけれどみんな私の理想とは違った。最近は外見上好みのタイプと出会ってもときめくことすらなくなってきた。

 

 しかし、ある日私は理想の男性と思える人に出会った。

 

 テニスサークルの女子メンバーでご飯を食べに行った夜のことだ。


「はじめまして。佐藤隆久です」

「こちら、隆久先輩だよ。うちのサークルのOBの人」

「梨乃ちゃんはまだ会ったことなかったよね」



 後から聞いたところ、OBとして時々、サークルのメンバーに会いに来るという。

 サークルの友人が紹介してくれた隆久さんはまさに私の理想のタイプだった。


 きちんとセットされた髪にジャストサイズのスーツを着ていて、清潔感を漂わせる彼の外見は非常にタイプだった。だけど話をしてみないことには性格はわからない。ここは慎重にいかないと――。

 


「橋本梨乃です。文学部の3年です」

「卒業しても大学のサークルには顔を出せって言われててさ。今日は仕事が早く終わったから遊びにきたんだ」

  


 佐藤隆久さんは話し方も穏やかで優しい笑みを浮かべながら私の話を熱心に聞いてくれた。お店の店員さんに対する態度も丁寧でスマートだった。歴代の彼氏の中には、従業員に対しては横暴な態度をとる人もいたが、隆久さんは違った。

 そして私の失敗談やくだらない話にも共感してくれる。

 

――すごく恰好いい! 理想かも!! 

 

 隆久さんは元々証券会社で働いていたが退職して、現在は個人で投資コンサルタントの仕事をやってるという。就職活動をまだ始めていない私にはそんな彼の経歴が努力の証のように思えた。

  

「なんかすごいですね」

「いや、全然そんなことないよ」


 留学経験もあるらしく英語も流ちょうに話せると聞いて、英語が苦手な私は少し恥ずかしくなった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る