辺境領主は不死の王!?~開拓も領地防衛もアンデッド軍団と共に無双します~

夢・風魔

第1話:辺境伯になりました

「何故です伯父上! 何故私ではなくレインシェルドなのですか! 年だって私の方が上だし、実力だって!」

「ビグス、止せっ」

「父上は黙っていろっ。伯父上! 辺境伯に相応しいのは、この私だ!」


 十七歳になった一昨日、父から北の辺境の地に赴くように言われた。

 つまり辺境の領主になれ――というものだ。

 それが従兄殿には不服だったらしく、こうしてファーレン家の屋敷に乗り込んで来て父に怒鳴っている。


 何故もなにも、ビグス従兄にいさんはファーレン公爵家の者じゃない。

 分家のディオリーズ伯爵家の人間だ。


「直系でもないお前が、何故私の領地を継げると思ったのだ」

「私の方が優秀だからに決まっている! 証明してやるさっ。レインシェルド、勝負しろ!」


 二言目にはいつもこうだ。

 何かにつけて勝負だなんだのと。


 はぁ。北の辺境まで馬車でも半月近くかかるのだから、早く出発したいのに。


「勝負だ! 勝った方が辺境伯の座に」

「――眠りにいざなうマナの霧」

「すぴゃーzzz」


 相変わらず、なんの抵抗もしないですぐ寝るんだよね。

 ファーレン公爵家は魔術師の家系だ。俺より優秀だと言うなら、俺の魔法に抵抗してみせないと。

 けど、これまで一度も抵抗に成功したことはない。


「では父上、俺は出発します」

「うむ。レインよ、北部の辺境はここより過酷な環境だ。体には気を付けるのだぞ」

「はい、では――」

「レインよっ。北部は冷える。寝冷えせぬように腹を出して寝るでないぞ。それから生水は口にするな。一度煮沸して――」

「い、行ってきますっ」

「おいレインっ。まだ父の話をっ」


 心配性の父の話を聞いていたら日が暮れてしまう。ビグス従兄さんよりある意味厄介だ。


「お待たせ、ウェルド。出発しよう」

「またディオリーズ家のご子息ですか? まったく、懲りないですね」


 屋敷の外で待機していた馬車に乗り込んで、俺専属の執事、ウェルドに出発の合図を送る。


「そもそも! レインシェルド様は七歳の時には賢者の称号を得たお方なんですよ。二十歳になっても未だ賢者の称号を得ていないディオリーズの子倅が、レインシェルド様に敵うわけがないんです!」

「まぁまぁ、そう目くじら立てないで。辺境まで行けば、もうビグス従兄さんに会うこともないさ」


 たぶん、ね。


 馬車に揺られること二十日目、ようやく北部の辺境へと到着した。

 緑の少ない荒れ地。

 作物もあまり育たないと言うこの土地が、今日から俺が治める辺境の領地シェバルだ。






 目を閉じると、時々今の俺ではない俺の記憶が蘇る。

 あまりいい記憶ではない。

 親に殴られ、捨てられ、周りからも距離を置かれ、ずっと孤独だった。


 でも、世界には優しい人たちだって確かにいる。

 そんな優しい人たちに、俺も救われたんだ。

 話を聞いてくれて、一緒に泣いてくれて……そんな人がいてくれた。

 だから俺も、生きられた。頑張れた。


 まぁ頑張り過ぎて過労で死んでりゃ、意味ないけどな。

 それで気がつけば、異世界転生ってやつだ。


 前世と違って優しい父。

 母は二年前に病で亡くなりはしたけれど、こちらもとても優しい人だった。

 屋敷に務める人たちもみんな、優しい人たちばかり。

 そのうえ父は大賢者、亡くなった母は聖女と称されるほど優秀な司祭と、血筋にも恵まれている。

 恵まれているだけじゃなく、実際に俺は幼い頃に賢者の称号を得られるほどの実力を持った。

 魔力量だけだと、大賢者の父を凌ぐほど――というのは、俺を溺愛している父の言葉だ。

 

 そうなるとアレだ。

 きっと神様は俺に、これまで人から親切にされた分を、この世界の人たちに返せって言ってるんだろう。

 そういう意味でも、辺境の領主は最適な仕事かもしれない。

 うぉっし。頑張るぞー!


 ただし、死なない程度に。




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改めてカクコン応募用!

本日20:04と21:04に1話ずつ更新します。

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