第2話

「――…ふう、間一髪」




空中で、私の落下はぴたりと止まった。私の身体は宙に浮いている。




「俺が手ぇ離したらグチャって死んじゃうね」




私の手を掴んだその人は意地悪く笑って、わざとらしく握る手を緩めた。手のひらにじわり、汗が滲む。




「た、助け――」


「自分から落ちたのに?」


「っちが、足が滑って……!」




確かに、死んでもいいかなとは思ってた。何度も何度もこの廃ビルに訪れては死ぬことを――自分が消えた時のことをシミュレーションしていた。



でも、いざこんな形で助けられてしまうと、――なにか一つ与えられてしまうと、欲張りな私はもう一つ、更にもう一つと欲しがってしまう。


図らずも命が救われてしまったというのなら、ならば生きたいと願ってしまった。

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