第8話

「ふ〜!さっすがだね〜!ホント死ぬかと思ったけど、やっぱり颯太大先生がいてくれて良かったー!」大地が、心から安堵の声を漏らした。


「いえいえ、まだまだですよ」いつもの控えめな声に戻った颯太が照れ笑いを浮かべた。


「いや本当に助かりました!ありがとうございます!指示を出す颯太先生、凄いカッコよかったです!」kirara⭐︎も尊敬の目で感謝を伝えた。


「あ、えっと…まだ遼さんの問題も残ってますし、早く何とか日本の警察に連絡しないといけないですね。本当に緊急を要しますので。」

そう言って、照れながらも素にもどった颯太がもう一度kirara⭐︎にスマホを借りた。


「あ、ネットが繋がらないですね。」と顔色が青ざめた颯太に、「電話は?電話はどうなんだ?」と翔一が真剣な眼差しで詰め寄った。


「電話はかかるかもしれません」そう言うと颯太は、kirara⭐︎にスマホを返し、「お母様でも誰でもいいから日本の信用おける人に今の状況を話して警察とか大使館とかに、連絡してもらってください」と伝えた。


すると国際電話に慣れている翔一が、「日本の国番号は81でその後、日本国内の電話番号の1番最初の0を省いてダイヤルすれば繋がるはずだ」とkirara⭐︎にアドバイスした。


kirara⭐︎は、言われた通りに国際電話をかける。


kirara⭐︎「もしもしお母さん!ちょっと大変なことになったの!」


kirara⭐︎母「莉奈!今どこ!?大丈夫なの?今、日本で凄い大ニュースになってるよ!」


母親の声は心配のあまり震えていて、緊急連絡のように早口で話し続ける。


kirara⭐︎母:「莉奈の出るあのお正月番組の大スター達始め、スタッフ全員と連絡が取れなくなったって!あなた達がいるのはシャルハム王国なんでしょ?その国で今クーデターが発生していてそれとの関連が考えられるって言ってるわ!」


kirara⭐︎「そうなの?クーデター?シャルハム王国?本当なの!?私達、謎の国で宝探しとしか聞いてなかったんだけど!」


kirara⭐︎母「テレビ局の社長が、さっき緊急会見で言ってたわ。無事なのは確認されてないけど、どうにかして助け出す方法を考えるって。みんなは無事なの?」


kirara⭐︎「制作スタッフは…みんないなくなっちゃったの…、それと、出演者では、サッカーの神谷遼さんがさっき居なくなっちゃって…」


kirara⭐︎は母の声を聞き、張り詰めた緊張が解けたのと同時に今の状況をどうしていいか分からず、話しながら涙が止まらなくなっていた。


kirara⭐︎母「え、スタッフ全員とあの神谷さんが!?これ誰に伝えればいいかしら?えっと…わかったわ、テレビ局と、警察に伝えるね。それと、大使館にも連絡して政府にも動いてもらえるように頼むわね!今どこにいるの?」


kirara⭐︎「言葉も地名も全然わかんないよ、ただとりあえず何か大きなお城のそばの林の中に隠れてる。あ!クーデターってことは凄い沢山の人が関わる内部戦争みたいなものってこと!?てことはここ早く逃げないとヤバいかも!さっきテロリストみたいな武装した人達やっつけちゃって。」


kirara⭐︎母「え、何それ?どこに逃げるの?日本から自衛隊や救助隊が向かえるよう、できるだけ具体的な場所を教えてちょうだい!」


kirara⭐︎「だから通訳もいないし、ネットも通じないし、地名も何も分かんないんだってば。えっと…どうしよう…、あ、番組からもらった地図に城の右上の方に馬が描かれてたの。そこどこか分からないけど、そこに行こうと思うから何かわかったら教えて!ここ危ないから切るね!


kirara⭐︎母「分かったわ!番組の人に聞いてみる。気をつけるのよ莉奈!絶対、生きて帰ってね…」


kirara⭐︎親娘は涙が止まらなかった。

しかし、こうしてはいられない。もう一度幸せな日々を取り戻すため、全力を尽くさなければと心に誓った。


kirara⭐︎は他のみんなに母親から得た情報を話し、急いで林を離れ、地図の馬がいるところに行こうと提案した。


「シャルハム王国のクーデターって…、敵はみんな武装してるだろうし、目をつけられた以上もう助かる気が…」宇宙が現実的に嘆いた。


「お前さんさぁ、くだらねー事ばっか口に出してないで、M1王者ならこんな時こそ笑えることの一つでも言うってのが男ってもんだろう?べらんめえ!」固い表情のままの大地がいい事をいった。


「そうだな、まあとにかく逃げよう!」翔一が言うと宇宙もゆっくり首を縦に振った。


「地図上で城の右上ってことはとりあえず北東に向かいましょう」颯太がそう言うとkirara⭐︎がスマホのコンパスで方向を示し、軍団はその方向に向かい歩きだした。


「こっちであってんのか?」と宇宙が不安そうに呟く。虚ろな目で周囲を見渡し、頼りなさそうに歩を進めていた。


「てか、マジで疲れたー。腹も減ったしな…こんなに歩いたの、何年ぶりかよ」と大地がぼやく。肩をすくめて、少しでも楽な歩き方を探すように足を動かしていた。


その前を、kirara⭐︎を背に乗せたフレイムスターが悠々と歩いている。「ありがとう、フレイムちゃん」とkirara⭐︎が優しく言いながら、フレイムスターの首を撫でる。フレイムスターは嬉しそうに小さく嘶いた。


「いいなー、俺も乗りてぇ」「俺もー」と宇宙と大地が駄々をこねるように声を上げる。


「疲れてる時こそ、強くなるチャンスだよ!」翔一が元気づけるが、颯太は苦笑いを浮かべ、「かなり痩せそうですがね」と返す。


「船からもらってきたビスケットならありますよ」とkirara⭐︎が、フレイムスターの背から大地にビスケットを手渡す。みんなで歩きながらビスケットを分け合って食べた。


夜が深まるにつれ、周囲の景色はますます見えなくなり、静寂が広がる中、ただ歩き続けるのみだった。しばらくして、ふいにkirara⭐︎のスマホが鳴った。


「もしもし、お母さん?何か分かった?」とkirara⭐︎が電話を取る。


「もしもし、莉奈、大丈夫?さっき言ってた地図の馬の件なんだけどね、テレビ局に聞いたら、シャルコフ城の近くにあるガラルーガ洞窟のことだって。古代の洞窟で、馬の壁画が有名なんだって。」


「洞窟?そうなんだ!すごいね。そこで待ってれば、日本から誰か助けに来てくれるよね?」


「もちろんよ、急いで向かっているはずよ。とにかく、そっちで安全に隠れててね」と母親が言う。


会話が早口で終わると、kirara⭐︎はスマホのバッテリーを気にして、急いで通話を切った。


母親によると、ガラルーガ洞窟は昼間に訪れたシャルコフ城の北西、約3kmの距離にあるらしい。


一行は方向が間違っていないことに安堵し、そろそろ目的地に近づいていることを感じ取った。周囲を見渡しながら、少しの希望を抱いて歩き続けるのだった。

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