Z氏の苦悩ー完全ー
風馬
第1話
これから、お話しする内容は、現在よりも遠い未来のお話です。
Z氏は、刑事である。
敏腕とまではいかないまでも、かなりのきれ者である。
部署での評判も現在うなぎ登り。
さぞかし、懐も暖かいことだろう。
閑話休題、そんなZ氏にいよいよ、事件の依頼が。
「Zさん、大変っす。今回のはちとやっかいです。」
「ん~、何が。」
「いや~、密室なんですよ。しかも、死体解剖も出来ないんですよ。取りあえず現場に来てもらえますか?」
「ああ。」
(補足)
死体解剖・・・人権が尊重される遠い未来では、殺人がされても死体解剖はある期間を置いてからでないと出来ない。
現場に着いた、Z氏とその部下。
「発見されたのは、何時だ?」
「ええ、今朝、会社の者が管理人に鍵を開けてもらったらこうなってたそうで・・・。」
「ふむ・・・。」
Z氏は、室内を見回した。
室内は、荒らされた様子もなく整然と物がならんである。
住人は、かなり綺麗好きだったようである。
鍵は、全て閉まってある。部下の言うとおり、完全密室だ。
そして、部屋の中央にその死体が横たわっている。
Z氏は、死体をしげしげと眺める。
「死体解剖が出来ないのは、辛いな。で、遺書とかは見つかったのか?」
「いいえ、それがまだ、それが見つかってないんです。」
「そうか、じゃぁ殺人の線も考えんといかんな。」
「え?殺人っすか。」
「あ~、良くある話だ。一見、完全密室のように見えるが、近親者が犯人であるというのも考慮に入れんとな。」
「あ、でも鍵持ってるのは、本人と管理人さんだけみたいですよ。」
「ん~、何が。」これは、Z氏の口癖である。
「いや、だから、鍵は2つしか存在しないんです。で、管理人さんには、アリバイがあるんですよ~。」
「じゃぁ、聞き込みでもするか・・・。」
Z氏は、トボトボと現場から引き上げた。
会社組織の人間が1人亡くなっただけの小さな事件である。
聞き込みでも、そう大した情報を入手することは出来なかった。
事件2日目。
「Zさん、大変っす。今回のはやっぱりちとやっかいです。」
・・・
「ん~、何が。」
相変わらず鈍い反応で、聞き返す。
「死体が消えちゃったんです。」
「ん~、何が。」
「いや、だから、昨日の死体無くなちゃったんですよ。」
「あ~、そうか。誰が移動させろと言ったんだ?あぁん?」
「自分じゃないっすよ~。あれから、誰も入ってないはずですから・・・。」
「取りあえず、現場にいかんとわからんな。」
2人は、管理人に鍵を開けてもらい、現場へはいった。
現場には、不審な状況はない。
変化があったと言えば、部下の言ったとおり死体が無くなっただけだ・・・。
Z氏は考える・・・。
犯人は・・・?
その時・・・。
「きゃぁぁぁぁぁああああ!」
叫び声が部屋中をこだまする。
「あなた達、誰よ、出ていかないと警察呼ぶわよ。」
Z氏と部下はは振り向いた。
そこには、驚きの顔が3つ並ぶ。
そして、長い沈黙の後Z氏は口を開いた。
「私は、警察の者だ。殺人事件の担当をしているZだ。」
「え?警察・・・。警察の方が、何故私の部屋に・・・。」
「あなたは、昨日、死体だったんだよ」と部下が口を開く。
「あぁ、すみません。わたし、充電するの忘れてて・・・、しかも、サブバッテリーが動くのを間違ってて・・・。」
「ん~、何が。」
「いや~、だから、サブバッテリー動作するのがが48分後じゃ無くって、48時間後になってたの。ごめんなさい」
「君は、じゃ~、あの・・・」
「そうよ。わたし、アンドロイドなの。今朝、目が覚めてビックリよ~。だから、今、コンビニで充電してきたの。」
「私は、私は・・・、私は、報告書に何と書けば良いのだ。」
Z氏の苦悩は続く・・・。
Z氏の苦悩ー完全ー 風馬 @pervect0731
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