魔法少女は女幹部との百合フラグに気づかない!
ぎゅうどん
魔法少女は女幹部との百合フラグに気づかない!
「キャー!助けてー!」
「悪の組織が現れたぞ、逃げろ!」
「アハハハッ、子分達、もっと暴れなさい!
そしたら魔法少女が現れるはずよ!」
「イエスッ!マムッ!」
町で暴れて人々を恐怖のどん底に突き落としている悪い奴らは世界を支配しようと企む悪の組織、ダークアニマル団の下っ端達、そしてそれを指揮する虎柄のセクシーな衣装を身に纏いさらに虎の耳と尻尾がある美しい彼女こそ、悪の組織の中で五本の指に入る実力を持つといわれているタイガー・ビューティである。そんな彼女には最大の宿敵がいる。
「あなた達、そこまでよ!町で暴れるのはやめなさい!」
「現れたわね。魔法少女マジカル・リュウカ。」
「可愛い私が悪を懲らしめる♡マジカル・リュウカ。ここに登場♡きゃはっ♡」
魔法少女は恒例の名乗りをすると可愛いポーズを決めた。
「魔法少女マジカル・リュウカ!」
「正義の味方が来てくれた!」
「待たせちゃってごめんね。後は私に任せて。町のみんなは早く安全な場所に逃げて。」
「だってよ!みんなマジカル・リュウカの指示に従うんだ!」
「そうね!マジカル・リュウカならなんとかしてくれるわ!」
「私達は戦いの邪魔になるだけだものね!」
「がんばってね!まじかる、りゅうか!」
「ありがとうね。」
その場にいた町の人々は誰も居なくなった。
「さぁ、これで思う存分に戦える!タイガー・ビューティ!覚悟!」
「ちょっと待ったぁぁ!」
「えっ!何よ!」
「戦う前にこれを受け取ってちょうだい!」
タイガー・ビューティはマジカル・リュウカに一輪の赤いバラを投げた。
「赤いバラ…?一体、どういうつもり…?」
「あなた、今日が誕生日でしょう…」
「なっなぜそれを知ってるの!人の個人情報を!」
「いや、あなた、自分のSNSのアカウントの自己紹介の所に誕生日を普通に載せてるじゃない…?」
「あっそうだったや…まぁいいわ、私の誕生日がなんだっていうのよ!この赤いバラの意味は!」
「誕生日だから…特別な日にしてあげたかっただけよ…」
「誕生日だから特別な日に…?はっ!もしかして!」
「その顔はわかってくれた?」
「私に引導を渡して、きさまの誕生日を命日にしてやる!とかそんな感じのつもりね!」
「違ぁぁぁう!?」
「許せない!どこまでも悪ね!私こそあんたに引導を渡して、宿敵タイガー・ビューティを倒した記念の日にしてやるわ!」
「何でそうなるのよぉ!?」
泣きっ面のタイガー・ビューティと怒った顔のマジカル・リュウカはそれぞれの武器でぶつかり合った!
「相変わらずやるわね!タイガー・ビューティ!」
「私、今日はあなたと戦いたくないの!あなたの誕生日を祝いたいだけなのよ!」
「嘘おっしゃい!そうやって油断させて倒すつもりなんでしょう!正義のヒロインを舐めないでちょうだい!悪の罠には引っかからないわよ!」
「ひぐぅ、もうどうやったら伝わるのー!?」
「くらいなさい!マジカル・ブラスター!」
「ちょちょっと!まだ話終わってない!必殺技を出すの早すぎ!ぎゃぁぁっー!」
マジカル・リュウカが魔法のステッキから放った光の光線がタイガー・ビューティに直撃!大爆発を起こしてタイガー・ビューティはボロボロになりながら星になるぐらい空高く吹っ飛んでいった!
「ふぅ、終わった。」
「やったぁぁ!悪は去ったぞ!」
「今日もマジカル・リュウカが勝ったのね!」
地上で町の人々がマジカル・リュウカの勝利に湧いていた!
「このバラどうしよう?バラに罪はないからな?いちようもらって飾っておくか。」
「ありがとうー!マジカル・リュウカ!」
「ありがとうー!町を救ってくれてー!」
「みんなこそ応援してくれてありがとうね!バイバイ!」
マジカル・リュウカは人々に笑顔で手を振り返したら、空を飛んでその場を後にした。一方、その頃、問題のタイガー・ビューティはというと…
「マジカル・リュウカってば…いつになったら私の想いに気づいてくれるのよ…」
ボロボロになった姿でなんとか空中を飛びながら、アジトに向かって帰っていた。
「でもそんな超鈍感なあなただけど、嫌いにはなれない…」
タイガー・ビューティは胸のペンダントを開いて写真を見た。その写真に写る人物とは凛々しい表情のマジカル・リュウカだった。もちろん本人に直接お願いして撮った写真ではない。その写真は子分と戦わせてる時にコッソリ撮ったものである。この状況からも見てわかるようにタイガー・ビューティはマジカル・リュウカにガチ恋しているのである。
「ボスや組織の同僚達にこの想いを知られたら絶対に裏切り者だってなるだろうから言えないし…マジカル・リュウカ本人にもストレートにこの好きな気持ちを伝えるのは出来そうもない…こう見えて私、シャイだから…」
悪の組織のアジトであるビルの屋上に到着すると変身を解いた。そうタイガー・ビューティは変身した姿で、本来の彼女は地味な格好をしたあまり目立たない眼鏡JKなのだ。本名は暗伊虎乃、歳は17歳。趣味はペンネームで活動しているSNSで描いた絵を投稿すること。(美少女キャラ限定)たまに飼い猫の写真もアップする。ここ最近は恋してるからか、マジカル・リュウカの絵ばかり投稿している。
「とりあえず、ボスに今日の戦いの報告をしなくちゃ。早く家に帰って絵を描きたいし。」
エレベーターを使い、ボスのいる司令室の部屋に入った。
「お帰りなさい。タイガー・ビューティ。今日の成果を聞かせてもらおうかしら?」
椅子に座るこの仮面をつけたライオン耳と尻尾のある美女こそ、タイガー・ビューティが所属する悪の組織、ダークアニマル団のボス、ライオン・レディ、その人である。
「私の担当地区を攻めている最中、今回も魔法少女マジカル・リュウカが現れて交戦、敗れました…」
「あらま、またなの?ここ最近、負けてばかりじゃない?」
「申し訳ありません…」
「前までは互角の戦いをしてたのにね?どうしてかしら?」
「ギクッ。」
「まさかきさま!手を抜いてるわけじゃあるまいな!」
背中に蝙蝠の羽を持つ仮面をつけた秘書の女が疑いの目を向けた。
「そっそんなことありません!魔法少女がただ強くなってきただけです!」
「そうよね?それはワタクシへの反逆行為と判断されてもおかしくない行為だもの、ワタクシに忠実なあなたがそんなことするはずないわよね。バット・クール、考えすぎよ。」
「はい、申し訳ありません。」
「タイガー・ビューティ。あなたもわかってるとは思うんだけど、ワタクシ達、ダークアニマル団が世界征服を果たすためにも魔法少女は邪魔な存在なの、大変だろうけど頑張って倒してね?」
「わかってます、誠心誠意頑張ります…」
「よろしい。帰っていいわよ。」
「失礼します…」
彼女が部屋を出ると、ボスであるライオン・レディの表情が笑顔から鋭い眼差しに変わった。
【あの子、怪しいわね。】
「やはりレディ様もそう感じておられましたか。」
【タイガー・ビューティはワタクシを裏切るような悪い子じゃないとは信じてるけど、いちようアリスタ、彼女の動向をスパイ係に探らせなさい。】
「かしこまりました。」
(悪い子じゃないってレディ様は言うけど、私達は悪の組織なんだけどな…)
秘書のバット・クールは心の中で呟いた。そして一方のタイガー・ビューティこと暗伊虎乃は疑惑を持たれていることなどつゆも考えずに家に戻り、自分の部屋に戻ると、飼い猫を膝に乗せながら、マジカル・リュウカの絵を描いていた。
「ふぅ、描いた下描きにペンは入れたと。後は…」
するとピョコンとスマホが鳴った。
「誰かがいいねでもしてくれたのかな?えっ!!」
彼女が驚くのは当然だ。なんとこないだ投稿したマジカル・リュウカが必殺技を決める姿を描いた絵に本人がいいねをつけてきたのだ!
「私、そんなに上手いわけでもないし!有名でもない!それなのにこの絵を見つけ出してくれて、しかもいいねまでくれたなんてぇ!うっ嬉しい!」
さらにはコメントまでしてきた!
《ネコのミミさん、初めまして♡驚くと思うけど私、マジカル・リュウカ本人だよ♡素敵なファンアートどうもありがとうね♡すごく感動したよ♡》
「うぐぅ〜〜。私こそよぉ〜〜。」
そのコメントを見た彼女は嬉しさのあまり滝のように涙を流した。
「ひぐぅ、ひぐぅ。マジカル・リュウカはいいねまではしてもコメントは滅多にしない子なのにぃ…今日はマジカル・リュウカ本人の誕生日なのに、これじゃ逆サプライズじゃない。このまま昇天出来そう。はっ!喜んでる場合じゃないコメントに返事しなくちゃ!」
コメントに返事をした。
《大好きなマジカル・リュウカさんが喜んでくれて、描いた私もすごく嬉しいです!広いSNSの中からこの絵を見つけ出してくれてありがとうございます!幸せすぎます!》
《こっちこそだよ♡誕生日の日にこんな素敵な絵に出会えて私も嬉しいな♡》
《きゃああ♡》
「神対応中の神対応!!マジカル・リュウカ…あんたええ子や…本当に大好き〜〜。」
「ニャッー。」
ネコにスリスリした。するとまたスマホが鳴った。
「マジカル・リュウカかな?」
《それはそうとさ!質問なんだけど!この必殺技を出してる私、正面から描いてるじゃん?どうして正面から必殺技を出してる私をこれほど正確に描けるのかな!》
「なっ!!しまった!!正面から必殺技を描くんじゃなかった!!こんなの描けるの必殺技をくらっている私以外に描けるわけない!!やばい、完全に疑われてる!!このままだとタイガー・ビューティがやってるアカウントだってバレちゃう!!そうなったら、ボスや組織の同僚達にも確実に知れ渡るはず!!やばい、やばい!!どうすれば!!」
さらにコメントが追加された。
《もしかしてあなたって…》
「ゴクッ。あなたって…?」
《もしかしてあなたって、私の追っかけさんかな?》
「ズコッ!!そっちかい!!でもこのアカウントをタイガー・ビューティがやってるとは思ってないようね…?よかった…」
胸をなでおろすと、少し頭を捻ってコメントを返した。
《すみません…その通りです…マジカル・リュウカさんの追っかけです…嫌いになられたでしょうか…?》
《嫌いになるわけないよ!こんな素敵な絵を描いてくれる子だもん!あなたは絶対に悪い子じゃない!全然、許してあげるよ!》
「まっマジカル・リュウカ…」
《ありがとうございます!!マジカル・リュウカさんは本当に優しい方です!!大好きです!!》
《そんなに大好き、大好きって言われちゃうと照れちゃうなぁ。アカウントの自己紹介に17歳の女子って書いてあるけど?本当なのかな?》
《はい!本当です!》
《同い年なんだね♡嬉しいな♡》
「きゃうう。だっ駄目だ!もう抑えきれない!」
勇気を出して伝えた。
《もっもしよかったら!今度、会ってくれませんか!》
「多分、会ってくれないとは思うけど!」
《いいよ♡女の子同士だし♡私もあなたと会ってみたいと思ったから♡変身状態じゃない姿なら会っても♡》
《本当ですか!!》
《本当だよ♡スケジュールを確認して会える日と待ち合わせ場所が決まり次第、こっちからDMで伝えるね♡》
《はい!!お待ちしてます!!》
《それじゃ♡町の平和と人々の笑顔を守るマジカル・リュウカでした♡》
「まさか変身姿じゃないマジカル・リュウカと会えるなんて…夢じゃないわよね…痛たたた!!夢じゃなかった!!やっふ〜〜!!神様、ありがとう〜〜!!ララもありがとう〜〜!!」
「ニャーッ。」
そして当のマジカル・リュウカはというと。
「同い年の女の子とはいえ、ついテンションが上がってファンと会うことにしちゃったぁぁ…」
この頭を抱えている眼鏡JKこそ、あの美少女で最強の魔法少女マジカル・リュウカである。本名は町田龍華、17歳、趣味は自分の変身した魔法少女姿を愛でること。軽いナルシストである。だから褒められたりするとすぐにテンションがおかしくなるぐらい上がる、さっきのコメントをしていた時みたいに。
「変身する前の私がこんな地味なJKだって知ったら、あまりのショックでファンをやめられちゃうかも…せっかく同い年で仲良くなれそうな子に出会えたと思ったのにどうしよう、どうしよう…」
『龍華は本当に何も考えずに行動するよね?』
この動くうさぎのマスコットは名をウサミといい、魔法少女に力を与えた張本人で悪の組織ダークアニマル団から世界を守るために天界からやってきた正義の妖精達の一人である。
「まるで私がバカだって言ってるみたいだね…?」
『バカだね、迷うごとなきバカ。』
「うぐっ、うぐっ、ひどい…そこまで言わなくても…」
『じょ冗談だよ!泣かないでってば!』
「本当…?」
『龍華ってナルシスト部分があるくせに精神は超弱いんだから。打たれ弱すぎだよ。魔法少女に変身してる時の君はどこに行ったの…?』
「そんなこと言われても、魔法少女の時はこんな地味な姿じゃなく美少女になれるから自信が持てるけど…これが本来の私だもん…」
『じゃあ、魔法少女になった時の姿を褒められる時になるあのやばいテンションは何なのさ…?あれも紛れもない君だよね…?』
「うっうん…そうだね…」
『まぁいいや、それより本当に会うの?ファンアートを描いてくれたネコのミミさんだったっけ?龍華と同い年だっていうそのアカウントの女の子と?』
「会う…一度約束したんだもん…魔法少女は正義のヒロイン、約束を破っちゃ駄目だもん…」
『変な所で魔法少女にプライドというかこだわりを持ってるよね…?ほかの区域の町にもボクみたいな妖精から力をもらって魔法少女として活躍してる女の子はいるけど、君みたいなタイプは…まぁ居るといえば居るのかな…?』
「私はこんな内気な性格だから、魔法少女としての活動を維持するにはキャラ設定しないと持たないんだ…駄目かな…?」
『まぁ、いいんじゃない?君はそんな弱気な性格だけど、ボクが感じられるだけでもすごい力を持った魔法少女だからね。ボクは正義の妖精としてそんな君を支えるだけだよ。』
「ありがとう…ララ…こうなったら、ネコのミミさんと会う日だけ普段の私でマジカル・リュウカの時みたいに明るいキャラになりきるしかない!」
「あはは…そうかい、好きにしなよ…?」
(それにしても龍華の必殺技をここまでリアルに描けるなんて…まさかこのネコのミミの正体は…)
場面は戻り、タイガー・ビューティこと暗伊虎乃も同じ悩みに頭を抱えていた。
「さっきはテンションが上がりすぎて、考えてなかったけど!よくよく考えてみたらマジカル・リュウカは明るいTHE陽キャラ、私みたいな地味な奴に応援されてるって知ったら、追っかけじゃなくてストーカーしてたんじゃないかって勘違いされるかも…仕方ない、マジカル・リュウカと会う日だけ、タイガー・ビューティに変身してる時みたいに自信たっぷりのキャラになりきるしかない!」
それからそれぞれ会う日のために努力を開始して、3日後、会う日が決まった。
「ついに会う日が決まった。今週の土曜日、朝10時、駅前の銅像前か。くぅぅ!!楽しみ〜!!と同時に不安…ちゃんとまともにお話出来るかな…」
それは日時を伝えたマジカル・リュウカこと町田龍華も同じであった。
「会う日伝えちゃった。すごく不安、私、マジカル・リュウカのキャラを守りきれるかな…」
『キャラを守りきるって…』
「いや、決めたんだ。ファンをガッカリさせるなんて、マジカル・リュウカにはあってはならないことだもん。」
『カッコイイこと言ってる割には足がガクガクしてるね?』
「あっうん…」
その会う日の前日、金曜日、タイガー・ビューティはボスにアジトに来るように呼ばれていた。
「レディ様…?今日はどのような御用でしょうか…?タイガー・ビューティとしての活動は学生生活を考慮して週一って決まってるはずじゃ…?」
「ごめんなさいね。でもあなた、今は夏休みで学校には行ってないはずよね?」
「えっええ…?そうですが…?」
「そこで何だけど、夏休みの間だけでも、週二回、タイガー・ビューティとして活動してもらえるかしら?」
「えっ!週二回ですか!」
「今日お願い出来る?」
「しかも今日ですか!」
「何だ!レディ様の直々のお願いだぞ、不満でもあるのか!」
「あっいや!不満とかじゃなくて…」
「あら、もしかして何か用事でもあった?友達と遊ぶとかご家族で出掛けるとか?」
「いっいえ!今日はありません…」
(明日はあるけど…)
「ならお願い出来ないかしら?バイト代は弾むから?」
「わかりました…?」
「ありがとう!成果を期待してるわね!」
「はっはい…」
彼女が部屋を出ると、またボスであるライオン・レディの表情が笑顔から鋭い眼差しに変わった。
【バット・クール、彼女の動向を探らせていたスパイ係からは何て?】
「スパイ係によると日常生活的に特に怪しい動きはないようです、魔法少女との接点もないようで?」
【そう、今の所は白のようね。今日一日、彼女の戦う所を監視させて何も怪しい動きがなければ、スパイ係に彼女の探りを終了させなさい。】
「かしこまりました。」
「ワタクシの考えすぎだったのかしら。」
疑惑が晴れようとしていることも、そもそも疑惑をかけられていることにも微塵も気づいていなかった暗伊虎乃はビルの屋上に上がりタイガー・ビューティに変身した。
「ハァ…明日のマジカル・リュウカとのオフ会のために今日はお化粧の仕方の再確認と服のコーデをどうするかを決めるとかに時間を使いたかったな…それに今、マジカル・リュウカに会っちゃうと興奮が抑えきれなくて変な感じになりそうな気がするし…でもレディ様には逆らえない…頑張るしかないか…本当に大変なバイトを選んじゃったな…」
地味JKの彼女がセクシー女幹部、タイガー・ビューティとして悪の組織、ダークアニマル団に所属した理由はまだ雪が積もる今年の冬に遡る。
「ハァ、ハァ、そろそろ雪解けの季節だけどまだ寒いや…早く帰って絵の仕上げしたいな…」
当時の彼女は人付き合いが今よりさらに苦手で、放課後になるとすぐに帰っていた。
「来月には高校に入って丸1年間か、本当は高校に入ったら同じ趣味の友達を作るとか考えてたけど、近くの席の子にすらまともに話しかけるの出来なかった。このまま高2になっても変わらないんだろうな、私の性格…まぁ一人でも構わないけどね、私は趣味の絵が描ければいいもの!でも最近、タブレットの調子が悪いんだよな?良いのは高いし、親からは成績が上がらないと買ってあげないって言われてるし、趣味のためにバイトでも始めようかな…でも人付き合いが超苦手で地味な私に出来るバイトなんてあるのかな…」
「あるよ?」
「えっ!」
すれ違ったサングラスの金髪美女が呼び止めた。
「あんたにぴったりなバイトがある。」
顔をめっちゃ近づけてきた。
「なっなっ何ですか!?いきなり!?」
「今、あんた、自分でバイトを探していると言っただろう?」
「確かに言いましたけど…?」
「だったら、付いて来い、いいバイトを紹介してやるよ。」
「ちょちょっと!?」
金髪美女に腕を掴まれて、連れてこられたのは今やお馴染みのあの組織のビルだ。
「ここだ。」
「立派なビルですけど…ここでやるバイトって…?」
「中に入ってから聞かせてやるよ。」
「ちょっとまたですか!」
ビルの中に入った、するとロビーがあって受け付け嬢が二人いた。
「お帰りなさいませ。明日香様。」
「お帰りなさいませ。」
「おう、今、帰ったぞ。」
「明日香様、そちらのお嬢さんは?」
「新しい新人候補だ。」
「なるほど、新人候補ですか。」
「名前は、あっまだ聞かせてもらってなかったな?何て言うんだ?」
「暗伊…虎乃です…?」
「虎乃ちゃんか。アタシは犬山明日香っていうんだ、よろしく。」
「はっはい…」
(やばいバイトに連れてこられたかなって思ったけど、そうじゃないのかな…?)
そしてエレベーターを使い、これまたお馴染みの例の司令室の部屋に入った。
「部屋に誰かいる…?」
「その子が今回スカウトしてきた新人候補さんかしら?」
「はい!そうです!レディ様!」
金髪美女は敬礼した。
「なんかさっきと雰囲気が違う…?」
「あなたお名前は?」
「あっはい…暗伊…虎乃です…?」
「暗伊虎乃、虎乃ちゃんね。」
「こんな臆病そうな奴が新人候補だと?凄腕のスカウトマンと言われたきさまも腕が落ちたんじゃないか?」
「おいおい、人を見た目で判断しちゃ駄目だろ。」
「そうよ。アリスタ、ワタクシにも感じるわ。この子には才能があるって。」
「そっそうですか…?レディ様が仰るなら…?」
「あっあの…本人である私を置いてけぼりにして話が進んでますが…?そろそろどんなバイトなのか教えてもらえませんか…?」
「何だ?まだ仕事内容を教えてもらってかったのか?」
「はっはい…」
「わるぃ!わるぃ!久々に才能がありそうなことに出会ったからテンション上がって忘れてた。今、教えるよ。悪の組織、ダークアニマル団って知ってるか?」
「えっええ…?知ってるに決まってるじゃないですか…?世界征服を企む悪い人達ですよね…?魔法少女がいつも戦って倒してくれてるけど…?」
「ハッハッハッ、知ってるならいいんだ。単刀直入に言うぞ、その悪い人達のお仲間にならないか?」
「・・・・・・えっ?えっーー!?それってつまりここって悪の組織、ダークアニマル団のアジトってことですか!?」
「ウフフッ。正解。そしてそのダークアニマル団のボスがこの私、ライオン・レディよ。」
「あなたが悪の組織のボス!?」
「無礼だぞ!レディ様と呼べ!」
「ひぃ!すっすみません!」
「バット・クール、いいじゃない、初めて会ったんだし、初々しくて。」
「そうですか…?」
「つまりこれは悪の組織のバイトのスカウトだった…?」
「何だそれすら聞かされていなかったのか?」
「全然…聞いてません…?」
「ごめん、ごめん、どうだ?時給はそこら辺のバイトよりすごい高いぞ?」
「でっでも…悪の組織に入れだなんて…?」
「そんな小さなこと気にするなよ。」
「小さくありませんって…?」
「幹部になったらな、さらに倍に時給が上がるし、約得手当までつくようになるぞ?シフトだって融通がバリバリきくぞ?」
「そっそうなんですか…?」
「まぁ。裏切りとかがあったら容赦なく粛清するけどね。」
「今の一言で台無しですよ!?」
「ハッハッハ、裏切らなきゃいいんだって!」
「そうよ。裏切らなきゃいいの。」
「でっでも…」
「それに何より虎乃ちゃんが一番、バイトに求めてたものが叶えられる。」
「私が求めてたもの…?」
「人付き合いが苦手で地味な自分にも出来る仕事がないかって言ってたろ?」
「あらま。可愛い悩み。」
「そっそこまで聞いてたんですか…はっ恥ずかしい…」
「恥ずかしがることないぞ?つまりは地味な自分に自信が持てないから、人付き合いが苦手ってことだろう?」
「まっまぁ…そうなりますね…」
「だったら安心だ。悪の組織の活動は変身アイテムをもらって、別人レベルに姿を変えてするからな。」
「アイテムで変身ですか…?」
「ウフフッ。そうよ。実際に変身する所を見せてあげなさい。ドッグ・キュート。」
「はい!」
「ドッグ・キュート…?」
「アタシの活動名さ。まぁ見てなって。」
金髪美女はサングラスを外して、カバンから黒いステッキを取ってボタンを押すと、ゴスロリ衣装を身に纏った同い年ぐらいの犬耳と尻尾がある美少女になった。
「お姉さんが犬耳をした女の子になった!?」
「どうだ、可愛いか?」
「ゴクッ…可愛いです…」
(まるで二次元の美少女人外キャラみたい…)
「ありがとう〜。うちも好きなんだ自分の変身姿〜。」
「ワタクシも好きよ。」
「ありがとうございます。アタシがこんなに若返られるんだ、変身って素晴らしいだろ?」
「そっそうですね…でもこんなにって…?あなた、歳いくつ何ですか…?」
「40後半だよ。」
「お母さんより年上だ!?」
「そんなに驚く?変身前のアタシを何歳だと思ったわけ?」
「てっきり20代前半かと…?」
「おいおい、嬉しいこと言ってくれんじゃん!気に入った!やっぱりあんたは絶対に組織に入れる!」
「わっ!?」
ドッグ・キュートは抱きついて喜んだ。
「ちなみにワタクシはいくつに見えるかしら?」
「20代前半…?」
「きゃぁぁ♡虎乃ちゃん、あなた素直で良い子ね♡ワタクシも気に入ったわ♡絶対に組織に入りなさい♡即採用よ♡」
「さっ採用!?」
「よかったじゃん!」
「見え透いたお世辞でレディ様の機嫌を取りよって…」
「今、契約書を渡すから。」
「まっ待ってください!まだ入るとまでは!」
「そんな入らないの!?」
「嘘だよな虎乃ちゃん!?」
「ぐっ…入らないとは言ってません…私みたいなのがここまで必要とされる事なんて滅多にないだろうし…でも中々、即決断とは…」
「迷ってるんだな?」
「はっはい…」
「やめるなら今のうちだ、私からすればきさまのようなナヨナヨした人員など必要ないからな?」
「そっそうですか…」
「よけな事言うなよ!まだ迷ってるって言ってんじゃんか!」
「迷う時点で意思が弱い証拠だ。」
「何だと〜?」
「こらこら。仲間内で喧嘩しない。虎乃ちゃん?だったら自分が変身した姿を見てみるのはどうかしら?」
「レディ様!?」
「へっ…?私も変身を…?」
「即決断ってなるんじゃない?」
「それはグッドアイデアですね!」
「レディ様!まだ組織に入るとも決めていない人間に変身道具を渡すのは如何なものかと!」
「いいから。いいから。これが変身道具よ。」
黒いステッキを渡された。
「本当に渡すなんて…?」
「明日香さんが持ってたのと同じやつだ…?」
「真ん中のボタンを押してみて?」
「やってみてくれ!」
「ゴクッ…わかりましたよ、やってみればいいでしょう…えいっ!わぁぁ!」
暗伊虎乃はあのセクシーな美女、タイガー・ビューティの姿になった。
「わっわっ!?何でこんなセクシーな服装に!?」
「それはあなたの力を引き出すのにもっとも合った衣装よ。」
「それに私ってこんなに胸が大きくなかったはず!足も長いし、声だってなんだか色っぽいし!」
「当たり前さ!体も変わってるんだから、ほら!」
手鏡を渡されて、今の姿を見た。
「本当だ!別人になってる!というか耳と尻尾がある!」
「だろ?」
「綺麗…こんなセクシーな美女に私がなれるなんて…?」
「ウフフッ。どうやら変身した姿は気に入ってもらえたようね?どうかしら?組織で働いてみる気になった?」
「どうだ?」
「いくら何でもそんなすぐに気持ちが変わるはずが…?」
「はい…入ります…」
「ガクッ!心変わり早いな!」
「嬉しいわ♡これからよろしくね♡」
「よろしくな!」
「はっはい!誠心誠意頑張ります!」
「トホホ…私は知りません…」
「あなたの活動名は、そうね。タイガー・ビューティよ。」
「私の活動名は…タイガー・ビューティ…」
それから2日後には担当地区の町が決まり出陣、そこで魔法少女マジカル・リュウカとの初戦があり、互角の戦いを繰り広げ、すぐにトントン拍子で大出世してわずか一ヶ月で幹部になり、そして組織の中で五本の指に入るほどの実力者と呼ばれる人物にまでになった。なったのだが…現在は…
「きゃっ!」
「しまった!勢い余って服を!」
戦いの最中にマジカル・リュウカの服が破れて、下着が少し見えている状態になった。
「これぐらいどうってことない!さぁ!かかってきなさい!」
「あわわぁぁ。」
しかし、タイガー・ビューティは顔を赤くして両手で顔を隠した。
「なっ何をやってるのよ!真面目に戦う気あるの!」
「だっだって…肌が…下着が…見えて…」
「私なんて見えないでも倒してみせるって挑発のつもりね!」
「ちっ違う!!そうじゃなくて!!」
「いいわ!だったら遠慮なんかしない!くらいなさい!マジカル・ボルト!」
「どうしていつも!ぎゃぁぁっ!!」
マジカル・リュウカの放った電撃を浴びたタイガー・ビューティは爆発して空高く吹っ飛んだ!
「ふぅ、終わった。早く変身解こう、この状態はやっぱり恥ずかしい…」
その頃、負けたタイガー・ビューティはというと…
「明日、会うっていうのに〜!!マジカル・リュウカのあんなあられもない姿見ちゃったら、もっと意識しちゃうじゃない〜!!」
さらにその頃、ダークアニマル団のボスのもとに二人の戦いを監視していたスパイから報告があった。
「なるほど、特に怪しい所はなかったのね。」
「そのようです。」
「でも今回で10連敗か、流石に負けすぎね。本当にタイガー・ビューティちゃんどうしたのかしら。」
「レディ様。タイガー・ビューティが負け続けるせいでこのままだとダークアニマル団が弱い悪の組織だと思われます。」
「そうね。誰にでもスランプ時期はあるものだけど、組織が弱いと思われるのは駄目ね。仕方ない、あの子を呼びましょう。」
「あの子とは誰です?」
「ホーク・ナイトメアよ。」
「本気でございますか!?」
「あの子ならタイガー・ビューティが倒せない魔法少女も楽勝で倒してくれるはずよ。」
「確かにホーク・ナイトメアは幹部の中でも最強で魔法少女キラーと呼ばれた実力者ですが!性格はとても凶暴で我々の指示もあまり従わない厄介者!下手をしたら町ごと消し去る可能性までございますよ!だから普段は仕事を与えないのではありませんか!」
「従わない時はまた力づくで静めればいいじゃない?ワタクシかナンバー2のバット・クール、あなたなら出来るでしょう?」
「そうですが…?」
「不満かしら?」
「いえ、わかりました…その代わり従わない場合は仲間とは思わず、容赦なく黙らせますから、そのおつもりで?」
「ウフフッ。それで結構よ。すぐ連絡してちょうだい。」
「かしこまりました。」
そんなことになってるとも知らずにアジトに戻ったタイガー・ビューティこと暗伊虎乃は怒られるだろうと思いながらボスのライオン・レディ達にマジカル・リュウカにまた再び負けたと報告したが、怒られるどころか、普段、厳しいボスの秘書のバット・クールすら許してくれて、すごく戸惑いつつも明日のためにと急いで家に帰った。
「化粧の練習はしたし、服のコーデもなんとか決まった。これでなんとか大丈夫かな?いよいよ明日、会えるんだ…変身前のマジカル・リュウカと…敵としてじゃなくて…」
「ニャー。」
続けてマジカル・リュウカこと町田龍華も同様に明日のことを考えてソワソワしていた。
「いよいよ明日、初めてファンの子と会うんだ…キャラ作りの練習はいっぱいしたけど…まだ不安だ…ウサミ?カメラとサインペンとサイン色紙とか持って行った方がいいかな…?」
『それはファンがすることだと思うよ…?』
そして運命の次の日、待ち合わせの駅前の銅像前に普段の地味な姿からは想像出来ないくらい、化粧も完璧でオシャレな服を着た暗伊虎乃が約束より1時間も早く着いていた。
「早く来すぎたな…後、1時間もある…」
「すっすみません!」
「ひゃ!?」
振り向くと声をかけてきたのはこれまた化粧も完璧でオシャレな服を着こなした美少女の町田龍華だった。
(かっ可愛い…誰…この人…同じ人間とは思えないくらい美少女…)
「驚かせてごめんなさい!間違ってたらあれなんですが!もしかしてあなたがネコのミミさんですか?」
「じゃじゃあ、私のアカウントを知ってるってことはあなたが…?」
「そっそうだよ。私はマジカル・リュウカ。きゃはっ。」
町田龍華は人前なので恥ずかしい気持ちと正体を隠すために小声で決めポーズをした。
「そのポーズのキレ、間違いなく本人です!変身してない時もこれほど美少女なんですね!」
「美少女だなんて…照れるな…」
「羨ましいな。私なんて変身解いたら、普通の女の子になるだけですから。」
「変身前…?普通の女の子…?」
「あっいや!化粧してもマジカル・リュウカさんみたいな美少女にはなれないなって!」
「そんなことないよ!ネコのミミさんも可愛い女の子だよ!」
「私が可愛い女の子ですか…?」
「可愛い!可愛い!」
「うっ嬉しい…」
「なっ泣くほど?」
好きな人に可愛いと言われたのが余程、嬉しかったのか。暗伊虎乃は目から涙をポロポロ流してハンカチで拭いた。
「驚かせてすみません…嬉しさのあまり泣いちゃいました…」
「あなた、素直で良い子みたいだね。安心した。ここで話すのもあれだから、近くに美味しいスイーツが食べられる喫茶店があるんだ。そこで話さない?」
「マジカル・リュウカと一緒に食事!行きます!」
「決まりだね。じゃあ、行こうか。」
「はっはい!」
(本当は私もお店をいちよう調べてはいたんだけど、私には勇気がなくてリードまでは出来なかった…)
着いた喫茶店に入り、二人は期間限定のスイーツを頼んだ。
「あっ美味しい。」
「よかった。」
「近くのこんな美味しいお店を知ってるなんて、流石はマジカル・リュウカさんです。」
「そっそんな…」
(ごめんね、ネコのミミさん。本当はこのお店、調べてたんだって言えなくて…マジカル・リュウカのキャラを守りきるためとはいえ、出来る人アピールして自分が恥ずかしい…)
「さっきも思いましたが。マジカル・リュウカさんも顔を真っ赤にして照れたりするんですね。」
「そっそりゃするよ。」
「戦ってる時の凛々しい姿とのギャップが素敵です。」
「そっそう…?」
「はい。」
「あっありがとう…ネコのミミさんは私のファン…なんだよね…?」
「そっその通りです!大ファンです!」
(本当は私があなたの宿敵のタイガー・ビューティで、敵であるはずの魔法少女のあなたに恋してるとは言えない。)
「あの誕生日の絵以外にもアカウントで私のファンアートを何枚も描いて投稿してくれてるよね…?」
「ほかのも見てくれたんですか!」
「うっうん。」
「どれも下手ですよね…お恥ずかしいです…」
「下手じゃなかったよ!どれも私への思いが伝わるいい絵だった…」
「私の思いですか…」
「ネコのミミさんは私のどこが好きなのかな…?」
「言ってもいいんですか…?」
「聞きたい…ファンの子から直接聞くことないから…」
「わかりました…私がマジカル・リュウカさんで、好きな所は…」
「好きな所は…?」
「目がくっきりしてて顔立ちもよくスタイルも抜群でまるで二次元に出てくる美少女みたいなあの容姿!声も声優みたいに可愛くて!なのに戦ってる時は凛々しくてかっこいいってギャップがある!さらに!」
「ストップ!ストップ!大体、伝わったよ!」
「すっすみません!つい感情が高ぶっちゃって…キモかったですよね…?」
「そんなことないよ!私を好きな理由がいっぱいあるんだってことがよくわかった…聞けて嬉しかったもん…」
「マジカル・リュウカさん…」
「今のが聞けただけでも今日は会って正解だったって思えたよ。」
「まっマジカル・リュウカさん、今度は私から聞いてもいいですか!」
「何かな?」
「あなたの宿敵、タイガー・ビューティのことはどう思ってますか…?」
「タイガー・ビューティを…?どうして…?」
「あっいや、ただ気になっただけで!」
(やばい、つい興奮しすぎてストレートな質問をしちゃった!流石に私がタイガー・ビューティだとバレて!)
「そっか、私のファンなら気になって当然よね?」
「はっはい…?」
(あれっ…?バレてない…?)
彼女が超鈍感で助かった。
「私はタイガー・ビューティをね。」
「ゴクッ。タイガー・ビューティを…?」
「街の平和を脅かす悪い奴で正義を守る魔法少女の私にとって絶対に倒すべき相手だと思ってるわ!」
「コケッ、でっですよね…?」
(やっぱり私の思いは伝わってないか…)
「でも…」
「えっ…?」
「なぜか彼女と戦ってると楽しいのよね。」
「楽しいですか…?」
「ほかの悪の組織の敵と戦う時はこんな気持ちにならないんだけど、不思議とね。」
「タイガー・ビューティと戦ってるときだけ…楽しい…それって…」
《きゃぁー!!悪の組織が現れたわー!!》
「えっ!?」
「何ですって!」
二人は慌てて喫茶店から出た。すると人々が逃げ惑っていて、空中に目がイってる青髪ツインテールの少女が背中の大きな羽を広げて浮かんでいて、狙いを定めず片手から魔法弾を放って、建物や乗り物、道路を破壊して高笑いしていた。
「みんな!逃げろ!」
「あいつはやばいぞ!」
「ここに居たら殺されちゃうわ!」
「ダハハハッ!!愚民どもが逃げ惑う様はいつ見ても滑稽だな!」
「だっ誰!?あの子は!?」
(組織の子だと思うけど、初めて見るよ!?)
「きっと悪の組織が送り込んできた新たな刺客だよ!狂ってて危ない奴だ!タイガー・ビューティの方がまだまともに見える!」
「タイガー・ビューティの方がまともか…」
「さぁ!この町を守ってる魔法少女マジカル・リュウカとか言う奴、とっとオレの前に姿を現せ!さもないとこの町が消えちまうぞ!いいのか!」
«きゃぁぁ!!»
「ネコのミミさん、あなたはどこか安全な場所に避難して!」
「まさか!戦うつもりですか!」
「当たり前よ!マジカル・リュウカはこの町を守る、正義の魔法少女!私には悪いあいつを倒す義務がある!」
町田龍華は魔法のステッキを出してボタンを押すとマジカル・リュウカに変身した!
「戦いが終わったら、オフ会デートの続きしましょう。」
「でっでっデート!」
「てへっ。行ってくるわね!」
ウインクすると、飛び立ち敵に向かって行った!
「マジカル・リュウカ…」
(私は何もしてあげられない…私はあなたの宿敵の悪の組織の女幹部、タイガー・ビューティだもの…ただ、あなたの無事を祈るしか出来ない…)
彼女は悪の組織の女幹部なのに自分の手助けに来た組織の刺客じゃなく、宿敵のマジカル・リュウカの方を応援していた。
「そろそろ、一発、大きいの放ってやるか。」
「悪事もそこまでよ!」
「やっと現れたみたいだな?てめえがマジカル・リュウカってやつか?」
「可愛い私が悪を懲らしめる!マジカル・リュウカ。ここに登場!」
「自分で可愛いとかナルシストだな?てめえ?」
「うっうるさい!私の勝手でしょう!あんたは一体、何者なの!」
「オレか?オレは悪の組織、ダークアニマル団の幹部の一人で魔法少女キラーと呼ばれてる、ホーク・ナイトメアだ!」
「ホーク・ナイトメア!あんたはこの町の担当じゃないでしょう!この町を攻めるのはタイガー・ビューティが任されてるんじゃないの!」
「そうらしいな?だが、ここ最近、負け続けで不甲斐ないらしくて、ボスから変わりにオレがてめえをぶっ倒して町を手に入れてくれって頼まれたんだよ。」
「なるほどね、そういう理由か…」
「ダハハハッ!けどそんなのオレにとっちゃどうでもいいことだ!久々に仕事を与えられて暴れられるからな、町を手に入れることなんかよりも戦いたくてウズウズしてんだよ!こっちは!」
「なっ何のつもり!」
ホーク・ナイトメアは指を鳴らした!するとマジカル・リュウカも巻き込んで巨体な黒い球体の中に入った!
「マジカル・リュウカー!!」
その状況を暗伊虎乃も見ていた!
「このっ!このっ!そっそうか、これは結界ね!」
「ダハハハッ、そうさ?これで逃げたくなっても逃げられないぜ?出られるとすればオレを倒して結界を解くしかない。」
「だっ誰が逃げるもんですか、私は正義の魔法少女として絶対にあんたを倒して町の平和を守ってみせるわ!」
「威勢だけはいいな?だが、オレはタイガー・ビューティみたいに生優しくなんかないぜ、覚悟しなぁ!ヒャッハ!」
「はっ速い!?」
「オラッ!」
「ぐはっ!!」
「ソラッ!」
「あがっ!!」
大きな羽を巧みに使い素早い動きをするホーク・ナイトメアを目で捉えることも出来ず、マジカル・リュウカはまるでサウンドバックのように攻撃を受け続けて、立ってるのがやっとな状況まで追い込まれた!
「ハァハァ…ぐっ…」
「おいおい?反撃もしないでおねんねするつもりか?つまらないぞ?」
「決めつけないでくれる…あんたの攻撃なんか大した事なんかないわ…これから、ガハッ、ガハッ、反撃するんだから…」
「まぁでも、並の魔法少女ならとっくにグロッキー状態になってるはずだ、タイガー・ビューティが手抜きしてるから負けてんだと思ってたけど、あんた少しは強いみたいだな?」
「当たり前でしょう…私は魔法少女マジカル・リュウカよ…」
「だったら気絶する前に反撃ぐらいしてみせろよな!魔法少女さんよ!ソラッ!ソラッ!」
「ぐわぁ!!ぐはっ!!」
その二人の戦いの状況をスパイ係を通じて、悪の組織のボス達も見守っていた。
「あらら。ホーク・ナイトメアったら結界を張っちゃったみたいね?これじゃ近くに行かなかったら中が見えないわ。」
「我々に邪魔をさせないためですね、考えたな、あいつめ…」
「まぁでもいいんじゃない。あれを使うってことは魔法少女を絶対に倒す自信があるってことでしょう。倒してくれれば文句はないわ。」
「ですがそれは、まだホーク・ナイトメアの奴がキレてないからです。」
「まぁね。あの子はキレたらさらに凶暴になるから。」
そして地上で見守る暗伊虎乃はというと。
「中で何が起きてるの!」
『マジカル・リュウカ!!』
「あれは!マジカル・リュウカの相棒の妖精ウサミ!」
『えいっ!えいっ!駄目だ!ボクの力でもこの空間には入れない!なんて強い結界なんだ!いや、このままじゃマジカル・リュウカが危ない!諦めてたまるか!』
ウサギのマスコットの妖精は必死に空間に体当たりしていた。
「普段、マジカル・リュウカを信じ切って、一人で戦わせてるあの妖精が必死に助けようとしてる!きっとマジカル・リュウカが危機的状況な証拠だ!何とかしてあの黒い球体の中が見られたら、そうだ!変身すればもしかしたら!」
暗伊虎乃はカバンから黒いステッキを取って、タイガー・ビューティに変身した!
「この姿なら魔力で覆われた結界の中も透視出来るはず!」
するとさっきは見えなかった黒い球体の中が次第に見えてきた。しかし、完全に見えた瞬間、タイガー・ビューティは驚愕した…
「うそ…?マジカル・リュウカがボコボコにされてる…?」
‐場面は戻って、黒い球体の中‐
「あがが…」
「ケッ、本当に反撃しないで終わりかよ、少しでも期待したオレが馬鹿だったな?」
攻撃を受けすぎて意識がほとんどなく半目しか開いていないマジカル・リュウカの胸ぐらを掴んで、ホーク・ナイトメアは呆れた顔をしていた。
「ハァ、つまんね、もういいや、トドメと行くか。」
「油断したわね…」
「何、まだ意識があったのか!」
「この至近距離から絶対に当たる!私の今の魔力を全部を込めた必殺技を!」
「やっやめろ!!」
「くらいなさい!!マジカル・ブラスター!!」
「グガァァッ!!」
至近距離から放ったマジカル・リュウカの光の光線はホーク・ナイトメアの体を突き抜けた!
「ガハァッ…」
そして口から煙を出してホーク・ナイトメアは倒れた!
「やったぁ!!マジカル・リュウカが倒した!!」
それをしっかりタイガー・ビューティも見ていた!
「ハァハァ…あんな芝居に騙されてるようじゃ、あんたもまだまだね、もっと洞察力を鍛えてから戦いに来なさい…って気絶してるから聞こえてるはずないか…」
「誰が…気絶してるって…」
「えっ…?」
ホーク・ナイトメアは起き上がった。
「そんな!?マジカル・リュウカの必殺技を受けて立ち上がるなんて!?」
地上のタイガー・ビューティも見ていた!
【ダハハハッ!!ダハハハッ!!】
「私の必殺技をまともに受けて…平気だって言うの…?」
【アハッ、平気ではねぇさ?】
「えっ…?」
【オレを怒らせたんだからなぁ?】
「ぎゃっ!!」
目は笑ってないのにニヤケ顔のホーク・ナイトメアは爪を鋭く伸ばすとマジカル・リュウカの肩を引き裂いた!
「マジカル・リュウカー!!」
タイガー・ビューティはいてもたってもいられず、黒い球体に向かった!
「体が言う事を聞かない…」
【ダハハハッ!!オレがキレたんだ、おまえを処刑した後、この町は消し飛ばしてやる!】
「そんなことさせない…」
【終わりだ、魔法少女。】
ホーク・ナイトメアは片手から魔法弾放つために魔力を溜め始めた。
「起きなくちゃ…」
【バイビー。】
「はぐっ!」
《させないわ!!》
マジカル・リュウカに向かって行った魔法弾を颯爽と現れたタイガー・ビューティが片手で弾き飛ばした。
「タイガー・ビューティが私を守った…?」
「理由は後で話すわ、今は休んで。」
「わかった…」
マジカル・リュウカは気を失った。
【意味わかんない、意味わかんない、意味わかんない!!てめえ、悪の組織の幹部だろ!?なんで魔法少女を助けてんだ!?】
「大好きだからよ…」
【声が小さなくて聞き取れなかったぞ…?】
「大好きだからよ!!マジカル・リュウカが!!」
【理由がわからねぇよ!?】
「わからなくて結構だーー!!」
【おっおい!!待て!!】
「私の恋愛の邪魔をするんじゃねぇーー!!」
【グヘェェッーー!!】
怒ったタイガー・ビューティは我を忘れて悪の組織の同僚であるホーク・ナイトメアの頬を思いっきり殴って、結界を突き抜けて豆粒になるくらい空高く吹っ飛ばした!
「ホーク・ナイトメアが吹っ飛ばされた…?」
「吹っ飛ばされたみたいですね…?」
もちろんその状況をスパイ係を通じて悪の組織のボス達も聞いていて二人とも目が点になるぐらい唖然としていた。
「大変だ!結界が崩れ始めた!ここから早くマジカル・リュウカを助け出さないと!」
まだ起きないマジカル・リュウカをお姫様抱っこして、崩れゆく結界から脱出して、地上に降りた。
「今の状況を一般人に見られたら騒ぎになるよね、いちよう、変身は解いておこう。」
マジカル・リュウカを近くの長椅子に寝かせたら、変身を解いて、タイガー・ビューティから元の暗伊虎乃の姿に戻った。
『マジカル・リュウカ!!』
「あっ、ウサミだ。」
『君は誰だい…?』
「私はマジカル・リュウカさんとさっきまでオフ会していた者です!」
『ああ、君がリュウカが言ってたネコのミミさんか。』
「んっ…?ここは…?」
「よかった!気がつきましたか!」
「ネコのミミさん…?それにウサミ…?あれっ、ってことはここは地上…?」
『そうだよ!心配したんだから!』
「わっ私もです!体は痛くありませんか!」
「うん…魔法少女の体はどんなに傷つけられても時間が経てば自然と回復するから…」
「そっか。そうですよね。」
『でもそんなにボロボロになってよく無事に帰って来れたね?黒い球体の中で一体、何があったのさ?』
「初めて会った強い悪の組織の女幹部と戦ったんだけど、負けちゃって殺されかけた所を…タイガー・ビューティが助けてくれたみたい…」
『へぇ…?宿敵のタイガー・ビューティがね…?』
「なっ何で私を見るんですか…?」
『ううん、別に。それにしても最終的にはその女幹部を倒せたみたいでほっとしたよ。』
「倒したのは私じゃないの。タイガー・ビューティが倒しちゃったみたい…」
『奴らは味方同士で戦ったってことかい!?』
「そう…」
『一体、どうして…?』
「だからどうして私を見るんですか…?」
『あっいや、別に。』
「きっとだけど…」
『きっとだけど…?』
「ゴクリッ。」
(今度こそ、私が彼女を好きだって伝わった…?)
「縄張り争いしてたんじゃないかな?」
「ガクッ!何でそう思うんですか!」
「それ以外、理由が思いつかないから…?」
「でっでもタイガー・ビューティは助けてもくれたんですよね?もっとほかに理由があったのでは?」
「助けてくれたのは宿敵がこんな形で消えるのが嫌だっただけじゃないかな?おまえを倒していいのは私だけだ!みたいな?」
「そんなスポ根みたいな話じゃ…」
『君、やけにタイガー・ビューティの心情にこだわるね?何かあるのかな?』
「あっありませんよ!ただ大好きなマジカル・リュウカさんの宿敵だし、いちよう気になっただけで…」
「そうだよ?ウサミってば考えすぎだってば?」
『そうだよね、ごめん、ごめん?』
「あっいえ…?」
そしてその頃、吹っ飛ばしたホーク・ナイトメアはというと木に引っかかりながら、空を見上げていた。
「大好きだから…魔法少女を助けたか…あんな子…初めてだ…」
彼女は頬を赤らめていた。
「マジカル・リュウカだ!」
「本当だ!」
逃げていた人々が戻ってきて、マジカル・リュウカがいるからと集まり歓声を上げた!
「また町を救ってくれてありがとう!」
「あなたは本当に最強の魔法少女だわ!」
「魔法少女のお姉ちゃんかっこいい!」
「マジカル・リュウカ!最高!」
「あっいや、倒したのは私じゃなくて…」
「しっ。マジカル・リュウカさんが倒したことにした方がいいですよ?みんなが混乱しちゃいますから。」
「わかった…?」
『やっぱりこの子…』
さらに人々が集まりすぎて、結局、オフ会は再開出来ず終わった。でもそれを払拭出来るぐらい嬉しいこともあった。なんと帰りにマジカル・リュウカさんと連絡先を交換したのだ。もちろんお互いの本名を言い合って。だから彼女の本名が町田龍華って名前だってことも知れた。きっとマジカル・リュウカの本名を知ってるのは妖精のウサミを除くと私だけなんだろうな。特別な関係になれて嬉しい。まぁ本来は宿敵であるはずの魔法少女に悪の組織の女幹部タイガー・ビューティの本名が漏洩したことになるんだけど、別にいいや、だって正体はバレてないもん。それをマジカル・リュウカに話すつもりもない。この思いに気づいてくれるその日まで私は宿敵でいよう。だけど一つドでかい不安要素もあるな…?あのホーク・ナイトメアの事だ…あの子が私が魔法少女を助けて自分を倒したと組織に話したら、ボスのライオン・レディ様達は間違いなく怒る、そして私は裏切り者として粛清されるに決まってる…
「どうかホーク・ナイトメアが話してませんように…なんて都合よすぎるよね…」
所が願いが通じたのか、色々あったオフ会から2日後、私は恐る恐るアジトに行くと、誰も私がホーク・ナイトメアを倒したことを知らなかった…?それこそボスもあの怖い秘書も…?
「あなたに許可もなく助っ人を呼んだりしてごめんなさいね?決してあなたじゃ魔法少女を倒せないと思ったわけじゃないのよ?本当よ?」
「だっ大丈夫です、気にしてませんから…?」
「よかった。でも助っ人のホーク・ナイトメアも魔法少女に倒されちゃったから、引き続きあの町の担当はあなたにお願いできるかしら?」
「どうした?返事をしろ?」
「あっはい!誠心誠意頑張ります!」
「ありがとう!やはりあなたはワタクシの忠実な部下だわ!」
「それほどでも…?」
(どうなってるんだろう…?まさかホーク・ナイトメアが私に倒されたことを秘密にした…?でもそんなことしても彼女に利点はないはず…わっわからない!)
そのあと夏休みが終わり、二学期の始業式の日になった、久しぶりの学校か…まぁ特に変わったことはないだろうけど…
「皆さん、聞いてください。このクラスに新しい転校生が来ました。」
「みんな、よろしく。私は高宮陽子。仲良くしてね。」
「可愛い子だ。」
「本当だね。」
「モデルさんみたい。」
「確かに可愛い子…でもなんだろう…どこかで会ったような…?」
「高宮さん、空いてる席に座ってね。」
「はーい。」
するとほかにも席がある中で迷わずに暗伊虎乃の隣の空いた席に座った。
「隣、失礼するね。」
「はっはい…」
(どうして私の隣を選んだんだろう…?まっまさかカツアゲしやすそうだからとか…?)
「じゃあ、1時間目の授業に入ります。教科の…」
「これからよろしくね?」
「こっこちらこそ…」
「他人行事だなぁ?私達、仲間じゃない?」
「仲間…?」
「知ってるよ、あなた暗伊虎乃ちゃんだよね?」
「どうして私の名前を…?まだ名前教えてませんよね…?」
「もっと知ってるよ?あなたが悪の組織の女幹部タイガー・ビューティだってことも?」
「えっ!?」
「暗伊さん?静かにしてください?授業中ですよ?」
「すっすみません…」
「ダハハハッ、怒られちゃったね?」
「私がタイガー・ビューティだって知ってるなんて、あなたは一体…?」
「わからないのも無理ないか。いいよ、教えてあげる。私、高宮陽子はあなたと同じ悪の組織に所属する女幹部のホーク・ナイトメアでーす。」
「えっ…?えっーー!!?」
「暗伊さん!」
「何だ?何だ?」
「何事なの?」
「仲良くしてね。」
「なっなっなっ…」
これからの私の学生生活はどうなるの!?というか魔法少女との恋愛の行方は!?
魔法少女は女幹部との百合フラグに気づかない! ぎゅうどん @yurilove277
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます