第3話:僧侶
皆様は壁尻というものを知っているだろうか?
まあ、早い話が壁の穴にはまって、お尻だけが見えている状態のことを指す。
そして、この壁尻意外と奥が深い。
女性にエッチなことをするためだけでなく、男性がはまることもある。
そして、エロ方面だけでなくギャグ方面で活かされたりもする万能のシチュエーションと言えよう。
それに壁尻と一言で言っても、どれだけ下半身が露出しているかで違いがある。
まず初めに、腰から下。要するに足腰と尻が出ているスタイル。
恐らくはこれが最もオーソドックスなスタイルと言えるだろう。
僕もこれが一番好きなスタイルだ。
これはエロ以外にもギャグ描写などで使われることが多い。
というのも、狭い所に入るという行為をすれば、壁でなくとも完成するので応用が利きやすいのだ。
そして、反対側の様子も分かりやすいので、絵面としても非常に助かる。
次に壁尻の名の通り、壁から尻だけ出ているスタイル。
恐らくは、このスタイルはR18でしかお目になることはないだろう。
僕の愚息も幾度となくお世話になっている。
このスタイルの特徴はズバリ非日常だろうか。
何故なら、壁から尻だけ出すなど意図的にやらねば絶対に出来ない。
おまけに、どう考えても苦しい体制になる。
そして、その非日常こそが嗜虐心をくすぐり、より壁尻の素晴らしさを引き出す。
他にも手を後ろに回して壁から出しているスタイル。
逆に、顔と手だけを壁の外に出しているスタイルなどがある。
まだまだ、壁尻について語りたいことはそれこそ、論文数百枚分はあるが、一旦自重しよう。
そもそも、なぜ僕が急に壁尻について熱く語り始めたのかと言うとだ。
「あ、あら? お尻がつっかえて、抜けないわねぇー」
目の前に壁尻があるからだ。
因みに、オーソドックスなスタイル。
僕の股間が最もエレクチオンする姿だ。
「あの……大丈夫ですか?」
僕はお尻をガン見しながら、大丈夫かと聞く。
どうにかして抜け出そうと藻掻く下半身は、修道服に包まれている。
恐らくは、シスター…僧侶だろう。
だが、その姿は神に仕える者とは思えぬほど扇情的だ。
パツパツにはった黒のロングスカートの下に蠢く、大きく丸い尻が彼女が動く度に波打つ。
服を着ているというのに何という躍動感だろうか。
思わず崇め奉りたくなるそれに、僕は目が離せない。
正直、前世の世界の男性なら、ここで鷲掴みにしなかった僕を褒めてくれると思う。
それ程までに魅力的なデカケツだ。
「あら? 誰か居るのかしら? ごめんなさいけど、後ろから押してもらえないかしら、お嬢ちゃん」
「…………多分、通るのは無理だと思うので一旦戻ったらどうでしょうか」
お尻の主が声をかけて来る。おさわりの許可だ。
だが、僕はそれを血が出る程に唇を噛みしめることで、耐え抜く。
相手が押してと言っているのだから、別にいいじゃないか?
馬鹿を言ってはいけない。この世界は男女比1:9999。
この女性はおそらく僕のことを高い声から判断して、子供の女性だと思っている。
そのため、こうも簡単におさわりの許可が出ているのだ。
貞操逆転の世界でも、デリケートな所を触るのは同性でも普通は抵抗があるのだ。
僕は紳士なので、そういった所はキッチリとしている。
これでも勇者パーティーの一員なのだ。
Yesデカ尻、ノータッチ(血涙)である。
「んー……そうね、回って追いかけるしかないわねぇ」
声の主は、僕の意見をもっともだと思ったのか、素直に後ろに下がろうとする。
だが。
「あら? あら? 今度は胸が引っかかって戻れないわ」
この女性、デカ尻巨乳確定である。
「ん…! ん…ッ。うん…っ」
一生懸命に戻ろうと前後に動く女性。
そのピストン運動に従い、ブルンブルンと揺れる修道服に包まれたデカ尻。
きっと、壁の向こうでは大きな胸も同じように暴れていることだろう。
(観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五……)
危ない、危ない。般若心経がなければ理性を失う所だった。
僕が目の前の神々しいまでに美しいデカ尻にルパンダイブをしなかったのは、奇跡という他ない。
ありがとう、般若心経。
「あの、少し壁を壊して抜け出れるようにするので、動かないでください」
「あら、本当?」
僕は女性の動きを一度止め、最後にもう一度素晴らしい壁尻を記憶に焼き付けてから、魔法で壁を壊す。
ふぅ……今日のおかずは決まったな。
「ありがとうね、お嬢ちゃん。おかげで壁から抜け出れたわ」
僕の姿を見ても、相変わらず女だと思っている女性。
まあ、この世界だと男を見る機会がほとんどないので、ローブと帽子で体を覆って顔がショタの僕は女の子だと判断されることが多い。まあ、下手に男だとバレると、人攫いにあったりするとはヒルダさんからも言われているので、都合が良いのだが。
「いえいえ、こちらこそ(素晴らしい壁尻ありがとうございました)」
「?」
今晩のおかずの提供に感謝を述べると、女性は首を傾げる。
彼女は修道服を着た30代後半ぐらいの僧侶。
セミロングの金髪に、薄く閉じられた瞳。見た目は完全にあらあら系お姉さんである。
だが、そのポワポワとした雰囲気に惑わされてはいけない。
彼女の肢体は非常に暴力的だ。歩く度にムチッ、ムチッと効果音が付きそうである。
修道服を今にも引きちぎらんとばかりにアピールする巨乳。
お尻から太ももにかけてのラインをしっかりと映し出す、ロングスカート。
一体この体のどこに禁欲的なものがあるのだろうか?
むしろ、聖職者を堕とす淫魔だと言われた方が、余程納得する。
「それで、どうして壁なんかに」
「それはねぇ、怪我をしている猫ちゃんを見かけて、治してあげようと思ったんだけど……逃げられてね?」
「ああ、そのまま追って行ったらあの穴に逃げ込んで、自分も体をツッコんだら出られなくなったと」
「そうよぉ。でも、どうしましょう。あのままだと猫ちゃんが可哀想だわぁ」
自分が壁にはまったことよりも、怪我した猫の方が気になるらしく、心配そうな顔をする女性。
どうやら、見た目通りの優しい性格らしい。
僕の股間には全く優しくないが。
「見失っちゃったし、どうしましょう……」
豊かな胸の上に手を置いて頬杖をつく女性。
くそう、尻派の僕に巨乳アピールなんて効かないんだからな! ……ちょっとしか。
「あ、おーい! ちょうどいい所にいたな、フリット」
「あれ? アイリスさん。それに手に持ってる猫は……」
僕が尻派としての矜持を守っていると、何故か前足を怪我した猫をひっつかんだアイリスさんが現れる。因みに、猫の方は最初は何とか逃げようと藻掻いていたが、戦士であるアイリスさん相手では何の成果も得られずに、途中から諦めモードに移行していた。
「あら! その子よ。私が探していた怪我してる猫ちゃんは」
「なんだ? あんたのとこの飼い猫か? まあ、どっちでもいい。怪我してたからとっ捕まえたんだ。フリット、あんた簡単な回復魔法なら使えるだろ」
「はい、ちょっと待ってください」
治せと、猫を突き付けられたので、僕は頭の中で治療魔法の詠唱を思い出す。
実は、本格的な回復魔法ではないが簡単なものなら、僕でも使える。
まあ、かすり傷とかを直せる程度なんだが。
それにしても、この世界は魔法の発動に詠唱がいるので、普段使わないと思い出すのに時間がかかる。
えーと。
「大丈夫ですよぉ、すぐに終わりますので」
すると、僕が動く前に僧侶の女性が猫の前足を軽く撫でた。
「はい、これで痛いの痛いの無くなりましたよぉ」
そして、手が離れた時。
すでに猫の前足からは傷が消えていた。
「無詠唱…?」
その余りの速さに僕は驚く。
この世界の魔法は詠唱が必要だ。
だが、使い慣れた魔法や、相当な熟練度のある魔法使いならば詠唱を省略したり、無くしたり出来る。
無言の何が難しいのかと思われるかもしれないが、この世界の魔法は自分と魔法との対話のようなものらしい。大気中のマナがどうだの、精霊の加護がどうだのと僕でも良く分かっていないが、要するに会話のようなものらしい。
つまり、会話が成功すれば魔法が発生する。
それを言葉を省略して、あるいは無言で行うことが出来れば無詠唱で出来る。
しかし、無言で全てを伝えるというのが、どれだけ難しいかなどそれこそ言わなくても分かるだろう。
「へぇー、やるじゃないか。あんた、名前は?」
「私ですかぁ? パイラです」
「パイラ……うーん、冒険者連中から聞いたことないねぇ」
無詠唱の凄さに気づいたのは僕だけではない。
アイリスさんも、僧侶、パイラさんの名前を聞いて、有名どころにいないかを思い出そうとしている。
「あんた、今まで冒険に出たことはあるかい?」
「いいえー。私はずっとこの町で姉と暮らしていますもの」
パイラさんは怪我の治った猫の顎を撫でながら、ほんわかと答える。
「なんだい、もったいない。どうだい? あたし達と冒険に出てみないかい?」
だが、一緒に行かないかと言われた瞬間。
今まで細めていた目を見開き、エメラルドのような瞳をみせる。
まるで、ずっと待ち望んでいた言葉が訪れたように
「………申し訳ございません。私が居ないと姉の治療をする者がいませんので」
しかしながら、彼女の口が紡ぎ出したのは断りだった。
姉の治療をする人間がいない。
中々に重い言葉だ。
「じゃあ、しょうがないね。とにかく、猫の治療ありがとうな」
故にアイリスさんも下手に食い下がろうとはしない。
僕も何か事情があるのだろうと察して、大人の対応をしようと思う。思った。
だが――
「お姉さんって、パイラさんでも治せない怪我をしてるの?」
―――この神々しいまでのデカ尻を、ここで見納めにすることは出来ない!(これだけの優秀な僧侶を逃す手はない!)
神々しいまでのデカ尻、略して神尻のためなら、僕は見た目年齢通りの子供として振舞う。
この神尻をもっと見ていたいし、あわよくばラッキースケベで揉みしだきたい。
顔を埋めてみたいし、頬ずりをしたい。深呼吸をしたい。
そんなどこまでも純粋な願いの前には、大人らしい行動など邪魔でしかなかった。
いや、ある意味で僕の愚息は早く大人になって、一皮むけたいと言っているが。
なので、ムラムラが止まらない僕は子供特有の遠慮なさを演じながら、情報を聞き出そうとする。
もちろん、本当にダメな理由なら土下座をして謝って諦めるつもりだ。
「コラ! フリット、失礼だろ!」
だが、アイリスさんに首根っこを掴まれて抱き寄せられる形で、それは中断される。
くそう、背中に当たるおっぱいの感触が気持ちよくて、抵抗することが出来ない。
「あら、別にいいのよ。姉は怪我ではないわ……ただ」
そう言って、何かを後悔するように瞳を閉じて、小さく告げる。
「―――3年前にヒュドラの毒を浴びてしまったの」
「ヒュドラの毒を解毒するには、ドロップアイテムのヒュドラの牙が要るわ」
「……そのドロップアイテムって」
「もちろん、ヒュドラが落とすものよ」
ギルドで受付嬢から情報を貰って来たヒルダさんに告げられた情報に、思わず天を仰ぐ。
ヒュドラの毒を解除するにはヒュドラを倒さないとダメですとか、苛めである。
「ヒュドラは自分の生息地である沼から出ることはないわ。ただ、踏み入れた外敵には容赦しない。その毒を浴びた者は、もって1日の命と言われているわ。適切な治療をしても1週間が限度でしょうね」
ヒュドラとはギリシャ神話に出る9つの頭を持った蛇のことである。
恐らくは、この世界のヒュドラも同じモチーフと考えて間違いがないだろう。
「それで、そのパイラって人は3年間もお姉さんの治療をしているのよね?」
「ああ、そう言ってたぜ」
「とんでもない僧侶ね……普通はそこまで持たせられないわ。確かに、フリットがスカウトしたくなるのも分かるわ」
「はい、とんでもなかったです(尻が)」
「だからってな、人には聞くかれたくないことの1つや2つはあるんだぞ。反省しろ」
「アイリスも昔はそう言う所があったじゃない……全く誰に似たのか」
因みにだが、僕の頭には大きなたんこぶが出来ている。
アイリスさんに人の傷を抉るような真似は良くないと、躾けられたのだ。
まあ、実際の所は下半身の欲望に忠実に従って動いただけなので、殴られて当然ではある。
でも、あの尻を捨てるのは余りにも惜し過ぎる。
禁欲の象徴である修道服が、余計に尻を際立たせるのには困ったものだ。
今日のおかずはシスターものなのは揺らがない。
「あのー……よろしいでしょうかぁ?」
「パイラさん!?」
そして、おかず提供者であるパイラさんの登場である。
どこか申し訳なさそうに内またになっているので、鼠径部から太ももからのラインが際立ち、パンティラインがくっきりと見える。
今晩のおかずはフルコースかな?
愚息もそうだそうだと元気よく、背伸びをしている。
「あのー、ヒュドラについて、調べているとお聞きしたのですが。もしかしなくとも……ヒュドラの討伐に向かうのでしょうか?」
「ええ、そうよ」
事もなげに告げるヒルダさんに、パイラさんは息を呑む。
そして、大きく首を横に振る。つられてバルンボルンと尻と胸が動く。
「危険です。ヒュドラの毒は触れただけで、死に至りますわ」
「さっき聞いたわ」
「だったら、どうしてです!? 私をスカウトするためだと言うなら、私についていく気はありませんわ!」
ヒルダさんを止めようと、パイラさんが机の上に身を乗り出す。
そのせいで、ピンと張り詰めた服に潰された尻が僕の位置からは良く見える。
尻は二つに割れているものだというのが、よく分かる良いラインだ。
おそらく、赤道よりも世界に必要なラインだろう。
ダメだ。一刻も早くトイレに籠りたい。
「違うわよ。あなたをスカウトするためじゃない。あなたを助けるため」
「私はそんなことをされるような、人間ではありません」
「あなたのためじゃないわ。理由は簡単。だって私は――」
ヒルダさんが胸を揺らしながら、首を振って否定する。
そして、真っすぐな瞳で告げるのだった。
「―――勇者だから」
ヒルダさんの言葉に息を呑み、思わず後ろに下がるパイラさん。
それと同時に、服で引っ張られていた尻がだるんと揺れ落ちる。
万有引力に生まれて初めて感謝をした。
「そう……ですか。なら……」
胸を上下に揺らしながら大きく深呼吸し、何事かを決心したかのように目を見開く、パイラさん。
そして、ギュッと服を裾を握って、デカケツのラインを際立たせながら告げる。
「その討伐に……私も同行してよろしいでしょうか?」
明日のおかずもシスターもので決定した瞬間だった。
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