パーティーメンバーがデカケツ熟女しかいない

トマトルテ

第1話:貞操逆転世界


 目の前で尻が揺れている。

 大きくて柔らかく、温もりを感じる熟女の尻が揺れている。

 バルンバルンとまるでバレーボールのような尻が飛び跳ねている。

 餅つきのように、上下に動きその存在を世界に知らしめている。


 ビキニアーマーで、肌面積が90%は超えている褐色の尻が、零れ落ちそうに跳ねている。

 ピッチリとした白のズボンに強調された尻が窮屈そうに揺れている。


 30後半という年齢からか、少し垂れて来ている尻だがその魅力は計り知れない。

 いや、むしろ年がいっているからこそ出る包容力は、若い尻よりも魅力的だ。

 もしもこの場が寝室であれば、僕は迷うことなくその尻に抱き着き顔を埋めていただろう。

 叶う事なら、抱きしめたまま眠りにつきたい。


 しかしながら、それは出来ないだろう。

 魔法使いのローブの下で、愚息も張り切っているが残念ながら出番はない。

 何故なら――


「アイリス! レッドドラゴンの尻尾が揺れているわ。尻尾の薙ぎ払いが来る!」

「分かってるよ、ヒルダ! アタシが防いでやるから、あんたは翼でももいでやりな!」

「分かったわ。フリット、止めの魔法はあなたに任せるわ!」

「分かったよ、ヒルダさん」


 僕は、僕達は今まさにドラゴンと交戦中だからだ。


 ヒルダ35歳、ケツでか高身長銀髪勇者。

 アイリス35歳、ケツでか筋肉褐色戦士。

 この2人と僕はパーティーを組んでいる。


 因みに、僕は15歳。

 前世ならある程度男らしくなる年齢だが、この世界では僕の見た目は完全にショタだ。


「よし! ドラゴンの動きは止めた、やっちまいな、フリット!」

「冥府を焦がす炎よ、地獄の門を開き、我が刃となれ―――ギガ・フランメ!」


 だが、単なるショタと侮るなかれ。

 転生特典により、莫大なMPを持つ僕はこの世界屈指の魔法使いだ。

 最大火力で打ち出せば、火を吐くドラゴンですら丸焼けに出来る!


「―――ッ!?」


 己よりも大きな炎の渦に飲まれ、断末魔の悲鳴を上げるドラゴンだったが、それもすぐに終わる。

 HPを一気に削り取られて、その姿を魔力の塵に変えて消えていく。

 そして、残されたのは赤く光る鱗だった。


「よっし、これでクエストのレッドドラゴンの鱗は手に入ったな。さっさと、街に帰ってパーッと酒でも飲もうぜ」

「アイリス、これは魔王討伐の旅に必要な路銀を稼ぐために受けたクエストよ?」

「ん? ああ、そうだったか。まあ、でも少しぐらいなら使ったっていいだろ! うちには育ち盛りも居るしな」


 ヒルダさんに忠告されるアイリスさんだったが、慣れているのかカラカラと笑うだけだ。

 そして、僕に近づきわしゃわしゃと頭を撫でて来る。


「フリットも良い活躍だったぜ? 何せ、火を吐くドラゴンを丸焼きにしちまうんだからな。ドラゴンもビックリだったろうよ」

「それは、アイリスさんとヒルダさんが魔法を撃つ時間を稼いでくれたからです。それと……あんまり、頭を撫でないでください」


 アイリスの身長は高い。そのため、僕の目線が彼女の腰あたりにしかいかない。

 なので、戦士であるが故に鍛え抜かれた腹筋が俺の目の前にあって、思わず性的興奮を覚えてしまう。

 もちろん、それを表に出すことは出来ない。


「ハッハッハ! 悪い、悪い。撫でやすい位置に頭があったからな。嫌なら、もっと飯食ってデカくなるんだな」

「アイリス、男に対して失礼よ。


 まるで、親戚のおっさんのような態度で飯を食えと言うアイリスを、ヒルダがたしなめる。

 そう、この世界では男と女の立場が逆転している。

 いわゆる、貞操逆転世界というやつだろう。


「そうだったか? まあ、男なんてめったに見ないから忘れちまってたよ、そんな知識」


 そして、この世界に男性の数は少ない。

 男女比は驚異の1:9999だ。

 最初の頃は、どこぞのエロゲ世界の御都合設定だと思っていたが、意外にも理由がある。


「2000年前に魔王が人類にかけたとされる、男性が生まれづらくなる呪い。それを打ち破るために魔王討伐へ行くのが、私達の目的でしょ? 男に対する最低限の知識は身につけておいて」

「へいへい、気が向いた時にな」


 どうやら、この世界で男が少ないのは魔王が人類に、男が生まれづらくなる呪いをかけたせいらしい。そのせいで、人類は滅亡の危機に追い込まれているし、男が貴重になったせいで、戦場に出るのは女の役目になった。


 その結果が、貞操逆転である。

 そして、役目が変化したことで戦場に出る女性の方が、背が高く筋肉質がつきやすくなった。

 逆に男は、家で守られていることの方が多くなり、身体機能が落ちて背が低く、ショタ化してしまったのである。


「そういう訳にはいかないわ。だって、私達はこの子の親代わりなんだから」


 今度はヒルダさんに頭に撫でられる。

 アイリスさんとは違い、しっかりと膝を曲げて目線を僕に会わせるヒルダさん。

 そのせいで、豊満な胸が目の前に来てまたもや、下半身がうずくことがそれを何とか隠す。


「フリット、さっきの魔法は見事だったわ。また、腕を上げたわね」

「ありがとうございます、ヒルダさん」

「でも、怪我とかはしてない? どこかが痛かったらすぐに言うのよ」

「おいおい、アタシがフリットまで攻撃を通すわけないだろ」

「念のためよ、念のため」


 姉御肌のアイリスさんとは違い、銀髪青眼のクールビューティーの見た目に反してヒルダさんは女性らしい。いや、女性らしいというか母性があると言うべきだろうか。この世界に転生してきて1人途方に暮れていた僕を拾ってくれたせいか、自分の子供のように愛情を注いでくれる。


 故に、僕も彼女には不埒な目を向けるのは良くないと思っているのだ。

 まあ、僕の愚息はそう簡単に言うことを聞いてはくれないのだが。


「大丈夫ですよ、アイリスさん、ヒルダさんが守ってくれていますし。それに、僕だって勇者パーティーの一員です。傷つくぐらいは耐えてみせますよ」


 そう言って、ニコリと笑ってみせるとヒルダさんは何故か考え込む仕草をする。


「……街に戻ったら、回復要員の僧侶を探しましょう。フリットが傷ついた時のために」

「僧侶が必要なのは分かるけどよ、あんたちょっと過保護過ぎないか?」

「し、しょうがないでしょ! 心配なものは心配なのよ!」


 そして、ヒルダさんは僕のことを恐らくだが溺愛している。

 この男女比1:9999の世界だと結婚できない女性も珍しくはない。

 なおかつ、ヒルダさんは30歳越え。子供ももう無理だろうと思っていた所に僕が来たのだ。

 子どもの居ない家庭でペットが猫可愛がりされるようなものだろう。


「はいはい、とにかく町に帰ろうぜ。そんで飯だ。考えるのはそれからで十分だろ」

「あ、じゃあ、帰るまでは僕が先頭に居ますね。索敵魔法で魔物を避けますので」


 いい加減面倒になったのか、さっさと街へと続く道の方に行く、アイリスさん。

 それを見て、僕は慌ててアイリスさんの前に行く。


「フリット、あなたは魔法使いなんだから後ろに居なさい」

「大丈夫ですよ。敵を避けるのが索敵魔法なんですから。それにいち早く気づくには、やっぱり前に居た方がいいですし」


 ヒルダさんが前に行く僕を止めようとするが、それを断る。

 もっともな理由を上げているが、実際は違う。


「おいおい、ヒルダ。子供が張り切ってるんだ。ここは任せてやろうぜ」

「………分かったわ」


 アイリスさんは子供が故に、張り切っているだけだろうと思っているようだがそれも違う。

 事実は、俺の下半身を抑えることが目的だ。


(後ろに居たら、索敵に全く集中できない!)


 ハッキリと言っておこう。

 僕は女性のお尻が好きだ。大好きだ。前世の頃から、愛していると言っても過言ではない。


 女性の身体でどこが一番好きかと言われたら、迷わずケツだと答える。

 そして、胸など所詮は尻の下位互換に過ぎないとハッキリと告げるだろう。

 胸派と殴り合いになっても構わない。いや、前世では実際に友人と殴り合いをしたほどだ。


 まあ、今は胸のことは良い。尻だ。

 好みの尻は、大きいものだ。デカケツだ。成熟した大人の女性の尻。さらに言えば外人が良い。

 前世で洋物のAVで抜いた数は数えきれない。


 さらに言えば、全裸よりも着衣状態の尻こそが至高だと思う。

 これも前世の友人と血で血を洗う闘争になったのは覚えているが、僕はこの世界でも譲る気はない。


 服の下にある、隠された神秘。それが着衣での尻だ。

 そして出来れば、それはピッチリとした服装の方が好ましい。

 お尻のラインが浮き出る、至高の形。人類が生み出した叡智。

 ズボンもいい、スパッツもいい、ビキニもいい、タイトスカートもいい。

 デカ尻でパツパツになったジーンズなんて、もう見ただけで勃起する。


 しかも、それを着ているのが年上の女性となれば、今夜のおかずは確定である。


 さて、長々と語ってしまったが、僕が何を言いたいかというとだ。



(2人の尻がエロ過ぎて、見ていたらケツのこと以外何も考えられなくなる!)



 勃起してしまって、他のことに全く集中出来なくなるということだ。


(ただでさえ魅力的な尻なのに、今は戦闘後の汗でテカっていたり、尻に服が食いこんだりしている。おまけに汗で透けて薄っすらとパンツが見えている、至高の状態!)


 正直に言うと、今すぐにでも愚息を沈めて賢者へと転職を果たしたいのだが、当然そんなことが出来る空間はない。町に戻るまで、1人になれる空間はないのだ。2人の尻を見ないようにしようと思っても、ショタの俺の目線では前を見るだけで尻に行く。逃げ場はない。


「おい、フリット。疲れたらいつでも言えよ、おぶってやる」

「大丈夫ですよ、アイリスさん」


 そして、更に都合の悪いことに、この世界は貞操逆転世界だ。

 男と女が逆になった状態。そして、男の見た目はショタ。

 故に、今みたいに平然と女性の方から肌を密着させる提案が来る。

 おんぶされたら当然、愚息が当たってしまうので下手をすると、暴発しかねない。


「無理はしたらダメよ、フリット」

「無理なんてしてませんよ」


 そして何より、彼女達に自分が見られているという認識がない。

 例えば、女性は男性が胸を見る目には気づくと言うが、男性は女性に見られていることにはあまり気づかない。


 つまり、この世界では女性は肌を露出したり、体のラインが出る服をよく来たりする。

 男で例えると、マッチョが鍛えた筋肉を見せたがるのと同じ原理である。

 実際、前世の自分も筋トレをしていた時は、良く二の腕を露出していたので間違いない。


 仮に僕が後ろに行くことになっても、彼女達は自分の尻が見られているとは思わない。

 何故なら、彼女達の認識をこちらに直すと、35歳のおっさんの後ろに15歳の小柄な少女が付いて行っているという状況になるのだ。


 僕と同じ男性に聞きたいが、これで少女が自分達の尻を舐めるように見ていると思うだろうか?

 いや、思わない。

 僕は前世も今世も男なので、女性の心理は分からないが、少なくとも男の認識では自分が性的な目を向けられているとは思わないだろう。


 故に無防備。


「あら、アイリス。パンツが脱げかけているわよ」

「ん? おお、サンキュ」


 ビキニアーマーのパンツ部分がずり落ちそうになっても、大して気にしない。

 男で言うと社会の窓が開いてるぐらいの認識である。

 だが、それをやっているのは、ちょっと年が行っているがムッチムッチの美女である。


(こ、心を落ち着かせろ。お経だ、お経を唱えるんだ)


 股間に血流が集まっていくのを感じながら、僕は般若心経を唱える。

 こうして、心を無にしていなければ妄想だけでも、イケていただろう。


(貞操逆転世界……前から思っていたけど、なんて過酷なんだ)


 心を無にするために、ひたすら思考を働かせる。

 この下半身に悪い世界に、僕はどうして転生して来てしまったのだろうか。

 ひょっとして、前世の胸派の友人の呪いだろうか?


 いや、今すぐにでもトイレに駆け込めれば天国に変わるのだが、それが出来ない今は地獄でしかない。いっそのこと、2人の目の前で愚息を鎮めてしまおうかと思うが、2人に見捨てられたら、この世界で行く当てなどないので詰んでしまう。


 というか、幾ら何でも拾ってくれた恩人に失礼だ。


(ああ……あの日、ヒルダさんに拾われた日。それが全ての始まりだった)


 なので、俺は尻のことを少しでも考えないようにするために、あの日に思考を飛ばすのだった。

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